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遺伝

 子供の頃から汗っかきで、大人になっても汗っかきだった。仕事ではそれがいかにも労働者という雰囲気を醸し出し、汚いというよりも、好意的にとらえられた。
 クレームがあった時は、女は涙、男は汗、といわれていた。相手に汗を見せることで、少しは相手が許してくれるというものらしい。
 老境に近くなると、汗もあまりかかなくなった。新陳代謝が衰えてきたのだろうか。ただ単に体を動かさなくなったせいかもしれない。多分そうだ。
 そのせいで仕事を辞めて、ずいぶんと太った。元の体重に戻すのに苦労した。いまだ元の体重には戻っていないが、今くらいが丁度いい。仕事をしている時は痩せすぎていた。
 息子がそのDNAを忠実に継いでいる。汗っかきである。僕の子供の頃より汗っかきである。夜中に何度も着替えをしているようで、朝起きて洗濯しようとすると、昨夜の状態から洗濯物がだいぶ増えていることが多い。洗濯している最中にも、着替えに来たりする。よく観察すると、ずいぶんと水分を摂取している。
 その分、トイレに行く機会も多い。何かにつけてトイレに行く。これは僕もそうだし、僕の父親もそうだった。水道代も馬鹿にならない。
 遺伝といえば、酒が飲めないのもそうだ。父親も息子も下戸である。僕は酒は好きだが、体質には合わないようにできているようだ。
 痔の遺伝もある。僕も父親もそのまた父親、つまり僕の爺さんも痔持ちだった。息子は今のところ大丈夫だが、いつ痔持ちになるかわからない。
 近眼も遺伝だろう。僕も父親も息子も目が悪い。眼鏡一家である。背も一様に低い。これも遺伝だろう。 指が短いのも遺伝だ。かっこいいところ全然ないな。
 面白いものである。親子というは。
 

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