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システムとしての「闇」と文学 マイク・モラスキー編「闇市」
闇市、と聞いて、どんな映像が目に浮かぶだろうか?
闇市が現役だった頃、というのを私は知らないが、映像としてすぐに浮かんでくるのは、「仁義なき戦い」のオープニングシーンだ。同じ広島が舞台の「はだしのゲン」も闇市が重要な舞台になっている。
違法で、無法で、不潔で、猥雑で、煮えたぎるマグマのような場所。そんなイメージだろうか。
本書は、「闇市」に焦点をあてた戦後小説11編のアンソロジーだ。
冷蔵庫で死ぬ3人の男 米原万里「真夜中の太陽」
冷蔵庫間男 落語でよくある冷蔵庫に関する小咄で、冷蔵庫間男というのがある。
子細は、噺家さんによって異なるけど、だいたいこういう筋。
地獄の閻魔大王。亡者は自分がどうしてここに来たか(どういう死に方をしたか)を懺悔して、閻魔様に天国行きか地獄行きかを決めてもらう。今日も三人の男がやってきた。
一人目の男「私は、妻の浮気を疑っていまして、ある朝、会社へ出勤したフリをしてからマンションの自室へ
幻想は口をひろげて ブッツァーティ「コロンブレ」④
幻想の範疇 前回、コロンブレがようやく渡した《海の真珠》が、ステファノの死とともに、小さな丸い石に変わってしまった。
所有者であるステファノが白骨化したので、真珠もまた輝きを失ったのか。《海の真珠》だと思ったものは、ステファノの幻想だったのか。
後者ならば、どこからが幻想だったのか。死に際に海に出て、コロンブレと出会ったことが、幻想だったのか。あるいは、十二歳の頃からコロンブレに追いかけられて
理解できないこと、理解されないことが人生を喰い散らかす前に ブッツァーティ「コロンブレ」③
ブッツァーティ『神を見た犬』光文社古典新訳文庫
この鮫は中学校の男子女子か前回、コロンブレが使者として選ばれた2つの可能性を挙げた。
1.人喰い鮫であることの罪滅ぼしのために、海の王はあえてコロンブレを使者に指名した。
コロンブレは別の生物で、美女と野獣の王子のように、ある罪のせいで、人喰い鮫にかえられたという可能性もある。使者の役目を果たすことで、もとの姿に戻れる約束なのかもしれない。
納期を守らない鮫 ブッツァーティ「コロンブレ」②
ブッツァーティ『神を見た犬』光文社古典新訳文庫
職務怠慢の鮫 前回、ステファノが生涯恐れ続けてきた鮫コロンブレは、実は海の王からあるものを渡すように命じられてきたことがわかった。
ステファノが十二歳の頃から、死期を悟る老齢期まで、半世紀近くは時間が経過していると考えていいだろう。
その間、頼まれた仕事を完遂できないというのは、いかに野牛のような顔をした鮫とはいえ、職務怠慢ではないだろうか。