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『ワクチンの噂』読んだ

久々のみすず書房だ。

内容はタイトルの通り。人類学者である著者がワクチンなどにまつわる噂を収集し、分析したもの。コロナ禍が始まる以前に脱稿していたので、議論の多いmRNAワクチンには触れられていない。

反ワクチンの噂によって接種が滞り死者が出ると、医師や科学者らは自分たちの権威が傷つけられたと感じ、感情的だったり、木で鼻を括ったような言動をしてしまう。そうすると反ワクチンの人々はエリートから疎外されたと感じて、より頑なになってしまう。

というようなことが繰り返し語られる。

噂の統制は戦争中を始めとして古来より行われてきたが、著者は必ずしも正しい対応ではないと批判する。表現の自由を侵害するのはもちろんのこと、噂が正しいことだって多々あるからだ。噂によっていち早く防御態勢を取ることもできるだろう。みんなの意見は案外正しいのである。

このように、著者は反ワクチンの噂を一方的に断罪するのではなく、建設的な方向へ議論を進めており好感がもてる。

なお日本におけるHPVワクチン反対運動などの記載はやや正確さを欠いていることが訳者解説で指摘されているので、そちらもあわせて読まれたし。

そういえば本邦もようやっとHPVワクチンの積極的勧奨が再開されるようだ。それに関して朝日新聞のおもしろツイートが炎上していた。

ワクチン接種後の多様な症状は思春期女性にありがちなものがほとんどでワクチンとの因果関係は否定的と訴えてきたのは医療者のほうなんだけど、、、

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