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町田健『チョムスキー入門~生成文法の謎を解く~』

10年ちょっと前にTwitterを初めて驚いたのは、学生時代に学んだことに社会人になってからも関心を持ち続けている人がけっこういるということだ。その人たちの多くはそれとは関係のない仕事についているのにだ。私は仕事の忙しさにかまけて昔に関心を持ったことを学び続けるということを怠っていたので感銘をうけたものである。

最近読んだこの記事もそのような感銘を与えてくれた。ことの始まりは受験英語の良いところ、そして弊害ということだった。それらを踏まえた上で、受験英語とは違う視点、教養を持つための書籍紹介という趣旨である。

ソシュールとかバルトとか10代の終わり頃からいつか読みたいと思っていたが、全然読まないままに40過ぎのおっさんになっていた。ソシュールに関しては、大学に入ってすぐ喜び勇んで浅田彰氏の講演を聞きに行ったのだが、氏の鮮やかすぎる解説でわかった気になってしまい後回しにしてしまったというのもある。

しかしそんな後悔をしていても始まらないので、紹介されている5冊のうちもっともとっつきやすそうで、しかもKindle unlimitedに収載されているこれを選んでみた。

人間は5歳くらいまでに話し言葉をほぼ完全に身につけることができる。ならばそこには普遍的かつシンプルな法則があるはずだというのが生成文法の発想である。合理的で野心的な試みであり、いつか学んでみたいと思っていた。

しかし新書とは思えないほど気合の入った解説で、理論を誤解の余地のないように容赦なく説明してくれるため初心者向けとはいいがたかった。というか著者は生成文法に批判的であるように感じられた。どんなに精緻な道具を用意しても、自然言語は例外、破格が多すぎるからかなあとなんとなく思った次第である。

だがこれに懲りずにまた関連書籍を読んでみたいとは思っている。なんか最近チョムスキー話題になってたし。

あと本書の著者の町田健氏は著名な言語学者であり、私がいま読んでいる脱・日本語なまりの著者と共著も出してるようだ。こういうふうにつながっていくのも読書の醍醐味であるなあと思いなすのであった。


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