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高橋孝雄『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て』読書メモ

著者は慶応の小児科教授であり、日本小児科学会の会長もつとめたという。主に母親向けのメッセージであり、育児は女性がおこなうものというジェンダーロールを強化する素晴らしい内容となっている。

子供の能力を信じよう、両親から受け継いだ遺伝子の力を信じようというポジティブなメッセージが多い。親があれこれ悩んでストレスを溜め込むくらいなら、放置プレイ気味のほうがましというのはよくわかる。そのかわり子供がなにか興味を示したり、才能の一端を見せたら、それを逃さないことが大事。完全放置じゃなくてちゃんと見守ってあげないといけない。

著者のこうした楽観的な態度は明らかに小児科医としての経験からきている。小児科の病棟で重い疾患をかかえる子供たちをみていると、元気に育ってくれるだけで十分ありがたいことだと感じるようになるだろう。そしてそんな子供たちでも前向きに生きている姿を見せてくれるわけで、遺伝子の持っている力を信じようという気持ちにもなるだろう。本書ではそうしたエピソードがたくさん紹介されている。

その他、興味深かったのは、小児科医師はいまや男女半々であるという。そして最初のうちは女性医師のほうが共感力が高いために有能とのことだ。患者本人だけでなく、母親とのやりとりも大事な小児科ではありそうな話だ。

もう一点、子供に英会話をさせたいなら、まず自分が勉強しなさいというものだ。まず自分がやってみせるというのは、きっと母児両方に良い影響があると思われるので賛成である。

専門用語は極力排して平易に書かれている。真面目過ぎて育児に悩み疲れている親御さんたちにいは良い息抜きになるのではないだろうか。今の世の中、真偽不明の育児に関する情報が、ネットにもテレビにも溢れかえっている。そんなものに振り回されるほどバカバカしいものはないと本書は教えてくれる。もっと気楽でいいんだよと。

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