正しさより大切にしたかったこと。ボーダレスハウスの新ビジョンができるまで
2024年10月、ボーダレスハウスは新たにパーパス、ミッション、ビジョンを定め、事業スタートから17年目としてはじめてコーポレートサイトを立ち上げました。
“「ちがう」を越えて人と社会をつなぐ” という新ビジョンのもとに、新たなスタートを切ったボーダレスハウス。このプロジェクトを進めてきた、代表 李と広報 志村マミが制作の裏話をお話しします。
正しさや強さより、メンバーが熱狂する言葉を
マミ:ボーダレスハウス株式会社の新しいパーパス、ミッション、ビジョンを、コーポレートサイト新設と共にお披露目しました。どうして今だったのか。なぜこの言葉になったのか。色々とりーさんに聞いていこうと思います。よろしくお願いします。
李:よろしくお願いします(笑)。マミとはずっと一緒にやってきたので、あらたまって聞かれると緊張するわ。。。
マミ:半年ほど社内で取り組んでいた内容を一度まとめておきたいなと思って。
李:だね。
李:ボーダレスハウスはもともと、海外から日本に来た人たちが家を借りられない状況に対して、安心できる住まいとコミュニティを提供するというコンセプトの事業として2008年に始まりました。
国際交流シェアハウスとして事業を進めるなかで、国籍やルーツの異なる人と人が出会って対話することで、無意識に持っていた閉鎖的な考え方や差別偏見が無くなっていくという体験価値が見えてきて、当初のコンセプトに付加価値が一つ加わったところを新たなコンセプトにして、事業を広げてきた。
「差別偏見のない多文化共生社会を目指す」
この言葉は、これまで僕たちが走り続ける十分な動機になっていたと思うし、何より強さがあるよね。
マミ:”強さ”ですか?
李:そう。
だって差別偏見はないほうがいいし、多文化共生社会のほうがいい。誰に聞いても疑う余地がない。ただ、そういう正義だけでは、僕たちが日々やっていることを表現しきれないと感じるようになっていた。何より、働くメンバーが熱狂したりワクワクする言葉じゃないというか。
マミ:確かにそうですね。なんか生真面目な印象が残ります。
李:コロナがあって、海外からの入国が制限されて、国際交流シェアハウスそのものの存続危機に直面したのが2020年〜22年のこと。一方で、事業の本質に向き合う機会にもなって、新しい事業の種が生まれた時期でもあった。それが、学生向けの短期国内留学プログラムであるBH CAMPや、コミュニティスペースや発信拠点としてのBORDERLESS STATIONで、振り返るとシェアハウス事業から多角化していくきっかけになっているんだよね。
マミ:そうですね。
李:いざコロナを抜けて、シェアハウス以外にも事業領域が広がって、新たに人を採用したり、会社のこれからを構想したり、社外の人にボーダレスハウスとは何なのかを語ろうとする時に、自分たちのことをどう表現するのがいいんだろうって。
マミ:会社が今していることとコンセプトが合わなくなっていたんですね。
李:BORDERLESS STATIONのサービスサイトを立ち上げる時、「ちがうを楽しもう!」というコンセプトを掲げました。多様性や相互理解という切り口だけじゃない、お互いの違いそのものを楽しむような機会を作っている僕たちのリアルに近い表現で、新しいコンセプトを考えていく上で一つのヒントになった記憶があります。
マミ:ボーダレスハウスが仕掛ける様々な事業のゴールは、差別偏見を越えた先にある多文化共生社会であることは変わらない。じゃあ、それが実現した社会で人々がどんな風に過ごしているんだろうってイメージすると、違いを楽しむというあり方がフィットしますよね。
李:そう。解決したい社会問題は、無意識に人々が抱いてしまう差別や偏見意識に変わりはないけど、それをそのままビジョンに掲げるのではなく、その達成のためのボーダレスハウスらしいアプローチやソリューションは何か。
マミ:ゴールに対してどのルートを取るのか。
李:例えば、僕らは差別行為を悪として戦うという手段は取らないわけで、自分たちが実際にしていることを再定義するような言葉が必要だと考えるようになりました。
いざ考え始めると、「ちがうを楽しむ」という表現はヒントではあったけど、楽しさを振りまいていけばいいのかというとそういうわけでもない。もう一歩深さがある気がしてた。
マミ:楽しさだけだと、何かが足りない感じ。
李:そう。以前、同じく多文化共生社会を目指して活動している方と対談した時に、「ボーダレスハウスはすごく尊い経験をさせている」と言ってくれたことがあってね。
人が多様性を理解する時、その前に違いにぶつかる体験がある。そこで終わらず、違うという壁を越えることで多様性が獲得できるんだけど、実際には大変だからなかなかそこまで辿り着かない。でも、ボーダレスハウスは共同生活という形で半強制的に違いに向き合って乗り越える体験ができる場所だって。
マミ:あぁ、すごく分かります。
李:一緒に生活して、相手の嫌なところも自分のダメなところも見た上で、それを乗り越えてお互いを理解しあう。それがあるから、ただ楽しい経験をするだけでは生まれない、深い絆ができる。これがボーダレスハウスが実現したい社会の姿だとすごく腑に落ちたんだよね。
自分たちがしていることを自分たちの言葉で再定義したプロセス
李:今年5月にリーダーたちと経営合宿をして、会社としての強みや、これからどんな顧客体験を生んでどう社会を変えていくか、みんなで話したよね。
マミ:会社の課題や、いいと思うところをブレストしましたね。
李:人の価値観や固定観念を壊すような新しい文化との出会いを提供し続ける。僕らが生み出している顧客体験そのものが最高だと話している時に、戦略アドバイザーの但馬さんが「それをどう社会につなげるのか。カスタマーサクセスの次にどういう体験をしたらボーダレスハウスとその人たちが共創していけるのか」という質問をくれた。
その質問をきっかけに、体験や場を提供しているだけじゃない、仕掛ける活動やそこに参加した人々が「架け橋を作る」という話が出てきたよね。この話にすごく手応えがあって、経営合宿のあと新しいボーダレスハウスの中心に据えられる言葉を作ろうと本格的に動き出しました。
マミ:ミッションやビジョンを社内のリソースだけで作る。転職してきたばかりの自分にとってすごく良い体験でした。
李:外部のプロに一度だけ壁打ちしてヒントをもらったけど、社内のメンバーで作っていけたのも良かったよね。僕が叩き台を作って、クリエイティブチームやリーダーに相談しながら、朝会で全員にシェアして。
マミ:メンバーがその案を拒否して(笑)。
李:僕としては、毎回手応えある案を見せているんだけどね(笑)。これめちゃくちゃいいやん!って。でも、メンバーのみんなからはきちんと「違う」っていう反応をもらいました。その反応を持ち帰って変更するというサイクルを3、4回やったよね。大変だけど楽しいプロセスだったと思ってる。
マミ:こういうサイクルを丁寧に積み重ねていったことも印象に残っています。
李:全体として7割くらいの納得感は毎回感じていたし、押し通して進める方法もあったけど、それでは意味がないなって。ボーダレスハウスのビジネスモデルはやっぱり、それぞれの現場で活躍するメンバーあってのもので、みんなにブレーキがかかっていると感じたら、僕にも自動的にブレーキがかかる。僕はそういうスタイルなんでしょうね(笑)。
マミ:7割の合意と3割の反対。3割って結構大きいですよね。
李:大きいよね。例えばそのまま進んでいたとしたら、その3割を埋めるための社内のコミュニケーション設計が必要になる。それより、最初からみんなが共鳴している状態から、みんなでこの言葉をどう高めていけるかにエネルギーをさきたいと思ったんだよね。
マミ:そのプロセスもボーダレスハウスらしいなと思っていました。
李:メンバーの違和感や反応を細かく見ていくと、「越える」という言葉はみんなにも刺さっている手応えを感じていた。
差別偏見があることを一度受け入れて、そして、越えていく。それはジャンプするのとは少し違って、足がかりや仕掛けを作っている実感がBeyondや架け橋という言葉に表れている。
誰だって、初めての人とコミュニケーションを取る時には、難しさや自分の中のハードルを感じるだろうし、今までの自分とは違う一歩を踏み出す時には、いろんな人の力を借りて越えていく。社会が変化する時もそれは同じ。今までのミッションビジョンにはなかったけど、この「越える」という言葉はボーダレスハウスらしいなと思った。
マミ:私たちがやっていることの本質を表現している感じがしますよね。
李:するよね。社会を変えるというようなビジョナリーな言葉も良いけど、僕たちがしているのは、人をつなぐこと。一番わかりやすい事実にフィットしているよね。
マミ:完成した言葉を見て、みんなで目指したい未来がこれだし、みんなの気持ちが入っている言葉だなって、すごく感じました。
言葉って人が紡ぐものなんだな。一つの歌じゃないけど、みんなで作るとこういう歌詞になるんだなって思いました。深い達成感を感じた覚えがあります。
一人ひとりが自分の言葉でビジョンを語り、新しいスタートを切った
マミ:コーポレートロゴは、海外の方が見てもパッと分かるユニバーサルなデザインがいいねと話しましたよね。
李:そう、多様性を色でも形でも表現したくて、積み木で表すアイデアを見た時はめちゃくちゃ良いって直感的に思った。
李:ロゴはBの一文字にしようという話もあったけど、僕たちのアイデンティティがどこか欠けてしまう気がして。BH、この二文字に僕たちがやっていることを込めようと決めたよね。
マミ:社外にはあまり出していないけど、メンバー間では自分たちをBHと呼んでいるし、BとHがセットであるからボーダレスハウスだなって私も思います。
李:Bについては、BORDERLESS、BEYOND、BRIDGE、BRIGHT。
ミッション、ビジョンと重なる、ポジティブな意味がすごく多い。僕は漫画のワンピースが大好きで、そこにはDの意志を継いだ者たちが出てくるんだけど、僕たちはBの意志を持つ者たちだなって(笑)。
H、HOUSEが入ることで住宅事業の印象を強めてしまうって懸念もあったけど、もっと広義な意味があったよね。
マミ:そうですね。HOUSEには家族やコミュニティ、居場所という意味もあって、ボーダレスハウスの大事な価値観を表していると思います。
この制作過程の中で、すごく印象に残っている場面があるんですね。
パーパス、ミッション、ビジョンの言葉が固まった後、全員が集まって、この言葉と自分の原体験をからめて、どんな社会を作っていきたいのか、一人ずつスピーチする時間を持ちましたよね。まずはじめに、李さんが、幼少期から今までのこと、経営者として、一人の親として、自分のストーリーとしてシェアしてくれて。
マミ:あれがすごく良かったなって。会社の新しいミッション、ビジョンがメンバー一人一人のものになっていく感覚がありました。
普段仕事をしていると自分の原点に立ち返る機会がどんどん減っていったりするけど、社員もアルバイトの方もみんなでフラットに共有した時間がすごく印象に残っています。
李:結構な人数がいるけど、全員で話して全員が聞いたね。差別偏見を越えたってところがいいとか、架け橋、違うを越える、人と社会をつなぐとか。メンバーそれぞれに共感するところがあって、全体としては偏りなく広がっていて。あの時間を持って、新しいスタートを切れるという確信ができたように思う。
李:例えば「この方針で経営するのでよろしく!」と示す方法もあるとは思うけど、受け取った側は、それを一生懸命インストールしなきゃというエネルギーを使うことになる。それよりも、新しい言葉に出会った時に、それぞれが咀嚼して、自分から「乗った!」って意思表示したり、自分の言葉として再定義する方がよっぽどポジティブなんじゃないかなって、みんなの貴重な時間だけど集まってもらいました。自分で言うのもなんだけど、お手柄だったなって思います(笑)
マミ:社会に変わって欲しいと言うより、自分がこうしたいと言うほうが走り続けられますよね。
李:自分が燃える言葉がいいよね。与えられた言葉に合わせていくと、きっとどこかで疲れちゃうし。自分の内側から湧き出るものがある人たちがボーダレスハウスに集まっていると言う確信があるので、自分の話をしてもらうことが大事だったんだよね。
ロゴも、パーパス、ミッション、ビジョンも、いいものができたという実感はあるけど、この言葉より事業が先に走ってないといけないなって今は気を引き締めています。
事業家としては何を言っているかより、何をやっているかを見て欲しいって思うので。これからいろんな企画や事業を打ち出していくけど、みんなの共通の信念としてこれがあるんだという、そんな位置付け。
リニューアルした、これからのボーダレスハウスを楽しみにしていてほしいです。
採用情報
現在、ボーダレスハウスでは複数ポジションで採用強化中です。
12月には会社説明会を行います。ぜひお気軽にご参加ください。
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募集職種は下記に掲載しています。
カジュアル面談も受け付けておりますので、気軽にご連絡ください。
ボーダレスハウスの目指す社会を一緒に創っていってくださる、あなたのご応募をお待ちしています!
「ちがう」を越えて、人と社会をつなぐ。ボーダレスハウス株式会社
私たちボーダレスハウス株式会社は、国籍やルーツ、生まれた場所、性別などのさまざまな「ちがい」に関係なく、一人ひとりの多様なアイデンティティが尊重され、つながっていく体験とコミュニティをつくりたいと強く思っています。
「“ちがう” を越えて、人と社会をつなぐ」というビジョンの下、出会いやつながりが多文化共生社会への一歩になると信じて、差別や偏見の社会課題と向き合うソーシャルビジネスを社会に広げていきます。