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東島見聞録

「旅の者よ」
 暗い海を臨む岬、襤褸をまとった老人はしわがれた声で告げた。
「この海を渡ってはならぬ。東の島へ行ってはならぬ。あそこは忌まわしきものどもの巣。愚かな好奇心のまま立ち入った者達は無惨に死に果てた。僅かに逃げ帰った者も、恐怖に囚われ心病んだ。そうなりたくなければ海を越えてはならぬ。わしの様になりたくなければ……!」
 語るうちに老人の声は熱を帯び、片方しかない眼は狂気を宿し始めていた。

「死ね! ○×△□野郎!」
 アリシアの両手に握られた最新ピストルが計十二発の弾丸を吐き出すと、眼前の巨体に全弾命中! 鎧を纏い武器を手にし、しかし人とは思えぬその生き物は、先に負った多数の傷とアリシアの弾丸全てのダメージによって、ようやく倒れ沈黙した。
「なんなんだ、こいつらは!」
 アリシアは喚かずにはいられなかった。
「やはり来てはならなかったのでおじゃる!」マロスケもまた喚いた。「このカマクラ・ブシどもの巣には!」

【続く】

#小説 #和風 #逆噴射プラクティス #逆噴射小説大賞

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