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「ウクライナの叫び」が日本人に届かない理由

NHKのBSスペシャルで『届け ウクライナの叫び』という番組を放送していました。僕が見たのは再放送でした。
日本に暮らし、NHKのディレクターをしているウクライナ女性、カテリーナさんを中心にした番組で、祖国の危機に際して思い悩む彼女の声を伝えていました。
カテリーナさんは、安全な日本に暮らしていることに罪悪感を感じたり、自分にできることがなんなのか、とても思い悩みながら、こういう趣旨のことを言っていました。
「平和を願ってくれる日本人は多いが、ウクライナ人が”勝利”を望んでいることが、なかなか日本人に理解されないのはなぜだろう」

ウクライナの人たちは、民族のアイデンティティを賭けて戦っており、ロシア人の支配による平和を望んでいないのです。そのことは、日本人にも理解はできるのですが、その切実さを理解できる日本人は少ないということです。
カテリーナさんには、その理由がわからないのです。

ウクライナの人には「ウクライナ民族」のアイデンティティがあり、それを侵犯されることへの強い抵抗があります。
一方のロシアは、東部ウクライナで「ロシア民族」(ロシア語話者)が迫害されていることなどを理由に、ウクライナに侵攻しました。

しかし、この「民族アイデンティティ」は、侵略に抵抗する者にとってこそ、とても重要なものです。そのことを、カテリーナさんは理解してほしいと思っているのです。

これは日本の歴史にとって、とても都合が悪いことです。
言うまでもなく、過去の日本は、蝦夷、琉球、朝鮮などにおいて、他民族を踏みにじってきた歴史を持っています。
しかし、日本人は、そのことに目を向けてきませんでした。
日本人は、ウクライナの人たちではなく、むしろロシア側が用いている論理を正当化して、自国の歴史に向き合うことから逃げてきたのです。
これが、日本人がウクライナ人の感情を理解できない、いちばんの理由だろうと思います。

日本人がロシアの蛮行を非難し、ウクライナに寄り添うとき、それは自ずから日本の負の歴史に向き合うことになるはずだし、そうでなくてはいけないのです。
朝鮮独立運動を弾圧した歴史、アイヌや琉球の文化を奪って「日本人」に同化させてきた歴史、東南アジアの占領地で「皇民化教育」を強制した歴史。
そうしたものに、改めて日本人は向き合い、自分たちが虐げてきた他民族の心に思いを寄せることができなければ、ウクライナの人に寄り添うことなどできないのです。
それこそが、日本人にとっては、ウクライナを支援する大きな意義ではないかと思います。

NHKは、そういうことをよく考えるべきだと思います。


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