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ソクラテスが簡潔にサイバーエージェント決算の業界インプリケーションをまとめておきます

こんばんは。元外資系投資銀行でアナリストをやっていた身としては決算期と聞きますと本来震えあがる時期なのですが、今では気楽に迎えられているソクラテスです。

先週はNetflixの決算も発表されましたが、本日はまず決算シリーズ第一弾としてサイバーエージェントの決算のポイントと示唆を簡潔にまとめさせていただきます。個別株投資というよりは主にエンタメ業界全体を見るという観点からまとめていきます。

早速要約ですが以下4点です!

・広告出稿は3月まではなんとか好調を維持(対前年比+9.2%)するも、4月以降は落ち込みを避けられなさそう。

・ゲーム事業は、主力タイトル「グランブルーファンタジー」「プリンセスコネクト!Re:Dive」「バンドリ! ガールズバンドパーティ!」の周年イベントや、2月27日にリリースした新規タイトル「この素晴らしい世界に祝福を!ファンタスティックデイズ」が好調で、前年比で+12.4%。

・AbemaTVのWAUは1,200万―1,400万人くらいのレンジで従来水準から20-30%程度の大幅上昇。有料会員サービス「ABEMAプレミアム」の会員は67.6万人(前年比1.7倍)を突破。

・高品質なライブ配信やチャンネル月額課金での動画配信のほか、プロジェクト支援(投げ銭)、オンラインサロン、EC物販など、エンターテインメント産業のデジタルシフトを推進し、新たな収益機会の創出を支援する新子会社OENを設立

いくつか決算資料からまとめを拝借させていただきますと以下のようになります。(ついでに重要な関連リンクも貼らせていただきました)

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翌日株価も10%近く上がったと記憶してますが、決算としては素直に好感が持てる印象でした。それぞれソクラテスが気になりましたテーマ別に注目ポイントと視点をシェアさせていただければと思います。

メディア事業(AbemaTV):巣ごもり需要でWAU(weekly active user)が大幅上昇したことは素直に1)業界全体としては需要が高まっている、2)Abema TVとしてはその特徴でもあります”リアルタイムで届けるニュース”と”ニッチなコンテンツ”が評価されたという点ではプラスだと思います。ただしAbema TVの場合は、結局1番の議論は赤字体質からの脱却であり、こちらに関しては足元のユーザー数増ももちろん関係ないとは言いませんが、中長期的なWAUの成長持続性が議論となってきます。

そのためには1)プロコンテンツのディスプレイ媒体向けというセグメントで戦っている同社として各放送局やNetflix, Amazon Primeといったプレイヤーに打ち勝つコンテンツが作れるか?、2)作れたとして、それを採算性のとれる形で収益化できるかが引き続きポイントになってきます。実際、ユーザーという観点から分けましたときに、”マス向け”につきましてはテレビ局と張り合う点では決して楽な戦いではなく、”ニッチ向け”につきましては採算性の見合うコンテンツが作れていないというのがソクラテスの率直な感想です。またこちらにつきましては需要がございましたら詳細に分析したものをシェアさせていただければと思います!

広告事業:広告出稿の落ち込みは4月以降ということですが、これはもはやこれ以上議論の余地はないと思っています。広告という意味では4月14日にUUUMが第3四半期決算を発表されてますが、アドセンス(Youtube広告)・タイアップ収益が従来比-20%、イベント関係を今期0と想定しているあたりからも、業界全体の厳しさの顕在化はこれからということは間違いなさそうです。ちなみにご参考までにソクラテスが以前まとめました不況時における広告出稿動向は以下のようになってます!

新子会社OEN:収益や株価への影響は現段階で軽微ですが、ソクラテス的には今回の決算で1番のハイライトだと思っています。内容としましてはデジタルシフトの推進ということで様々な形でエンタメ産業の収益化を”デジタル”という観点で支援するということとなります。収益性以外の観点からみた本子会社設立の意図は現時点で不明ですが、外出自粛ご時世においてエンタメの重要性が再注目される中、本施策の重要性は十分に理解できます。一方で、従前から何度も議論させていただいたとおり、エンタメ会社においては大きくコンテンツと仕組みが価値を提供していますが、今回のケースは明らかに”仕組化”による価値の提供です。その中で、動画配信やEC等のオンライン化支援といった様々なサービスが提供予定となる中で、果たしてサイバーエージェントがこのサービスを行うにあたってどこまで差別化できるかは正直疑問が残ります。サイバーエージェントが優良なコンテンツを持っていてそれをレバレッジすることでサービスを受ける企業側にもメリットがあったり、既に同社が仕組みの観点から様々なエンタメのデジタル化モデルを有しているのであれば理解はできるのですが、現時点ではそこの優位性が明らかな形では見えない状態です。

ソクラテスのエンタメ会社に関する考え方はひととおり以前まとめさせていただいたので、以下の記事をお時間のある方は読んでいただきご感想いただけますと嬉しいです!今後も引き続きエンタメ業界のトレンドや企業に関するアップデート、実際クリエイターとして事業をやっていく上での実務上のコツなど発信できればと思います!!

本日も最後までお読みいただいた方はありがとうございました。皆さんのご意見・感想・質問お待ちしております!!


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