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【恒例年末洋楽企画#2】Boonzzyの選ぶ2020年ベストアルバム: 5位〜1位

2021年新年も2日目、普通であればほとんどの人が初詣、という感じでしょうが、ステイホームお正月の今年は家でゆっくりとご家族と音楽や映画、TVなどを楽しんでるという方が多いはず。この「Boonzzyの選ぶ2020年ベスト・アルバム」も年内に発表完結できませんでしたが、何とか3が日のうちにトップ5の発表ができそう。この完結編には今回発表した20枚のそれぞれから選曲したプレイリストもお付けしてますのでお正月のお供にどうぞ。

では5位に行く前に、21位以下40位までの圏外ランキングを発表しておきます。

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21. Gaslighter - The Chicks (Columbia)
22. Shelby Lynne - Shelby Lynne (Everso)
23. Half Moon Light - The Lone Bellow (Dualtone)
24. It Was Good Until It Wasn't - Kehlani (Atlantic)
25. Walking Proof - Lilly Hiatt (New West)
26. PREP - PREP (Bright Antenna)
27. Over The Road I’m Bound - Joachim Cooder (Nonesuch)
28. Gigaton - Pearl Jam (Monkeywrench / Republic)
29. Women In Music Pt. III - Haim (Polydor)
30. That's How Rumors Get Started - Margo Price (Loma Vista)
31. It Is What It Is - Thundercat (Brainfeeder)
32. Good Souls Better Angels - Lucinda Williams (Highway 20 / Thirty Tigers)
33. What Kinda Music - Tom Misch & Yussef Dayes (Blue Note / Beyond The Groove)
34. Canyons - Young Gun Silver Fox (Légere)
35.  American Standard - James Taylor  (Fantasy)
36. Love Goes - Sam Smith (Capitol)
37. Mordechai - Khruangbin (Dead Oceans)
38. Rough And Rowdy Ways - Bob Dylan (Columbia)
39. Self Made Man - Larkin Poe (Tricki-Woo)
40. McCartney III - Paul McCartney (MPL / Capitol)

惜しくもトップ20を逃したディキシー・チックス改めザ・チックスは久しぶりながら矜持あるメッセージと家族や仲間達に対する愛情表現が心温まるいい盤でした。その他、一斉を風靡したミュージシャン達のジュニア達、リリー・ハイアットジョン・ハイアットの娘さん)やジョアキム・クーダーライ・クーダーの息子さん)たちの気概ある作品もフレッシュでしたね。ちなみにザ・チックスのアルバムは9月に「新旧お宝アルバム!」の記事でレビューをアップしてますのでそちらで詳細の解説をご覧になれます。

ということでカウントダウンに戻ってBoonzzyの選ぶ2020年ベスト・アルバムの第5位はこちらでした。

5. The Dirt And The Stars - Mary Chapin Carpenter (Lambent Light)

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これまでも何度かコメントしてますが、2020年はこうしたコロナのロックダウンの状況の下にも関わらず(というかそれも一つの要因となって)例年以上に質の高い作品が多くリリースされてるなあ、というのが年間アルバムを選ぶに当たっての実感で、しかもその多くが女性シンガーソングライター達によるものであったというのが大きな特長だったように思います。このトップ5も結局3作は女性シンガーソングライターによる作品になっている、というのはその象徴みたいなもんです。で、自分の年間5位は、90年代以降カントリーというフィールドに止まらず、オルタナティブ・カントリーやインディ・フォーク的な立ち位置で活動を継続してきているメアリー・チェイピン・カーペンターが今年8月にリリースした『The Dirt And The Stars』でした。このアルバムについても、ここnote.comに11月にアップした「新旧お宝アルバム!」で詳細なレビューをやってますので、こちらも是非ご覧下さい。

そこにも詳しくこのアルバムにのめり込むに至った経緯を書いてますが、メアリー・チェイピン・カーペンター(MCC)というシンガーソングライターは、自分が年間11位に入れていたローラ・マーリング同様、シーンからの定評もあって「一度ちゃんと聴かなきゃ」というアーティストだったのが、今回はひょんなきっかけで購入、聴取に踏み切ることができたという意味でこのアルバムの自分にとっての意味は大きなものがあり、かつこのコロナ禍の状況の中での我々の気持ちに響くような、そんなインティミット(親しみ深い)でパーソナルな作品であるが故に自分としても今年の後半は繰り返し繰り返し聴いた作品だったんです。

このアルバムの最大のハイライトは、アルバムラストで8分にも及ぶ大作であるアルバムタイトルナンバー。上記のレビューでも歌詞を紹介しながら詳しく解説したように、ストーンズの「Wild Horses」への言及など楽曲全体が70年代的懐かしい雰囲気に満ちているのですが、今聴き返してみると、あのジャクソン・ブラウンの名盤『Late For The Sky』(1973)の持っているサウンド的雰囲気に通じるものがあるな、と改めて感じました。後半のギターもちょっとリヴァーヴがかかった感じがあのアルバムでのデヴィッド・リンドレーのギターの音色を彷彿するようなところもあって、そうした感じもこのアルバムが自分にとって特別な位置を占めるようになった一つの理由なのかもしれません。そのレビューで決意表明した、彼女の作品を辿っていって彼女のこれまでの軌跡を尋ねる、という宿題はローラ・マーリングについての同様の宿題同様まだ手が付いていませんが、2021年の早いうちにはその宿題も片付けなければいけないな、それによってまた新たな素晴らしいMCCの作品に巡り会えるかも、という期待が改めて膨らんできています。アコースティックなサウンドと聴きながら映画のようにイメージを想起してくれるシンガーソングライターの作品に興味のある方であれば、絶対気に入って頂けると思いますので是非ご一聴を。

4. Circles - Mac Miller (Warner)

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Boonzzyの選ぶ年間アルバム4位は、2018年に若くして他界してしまったマック・ミラーが残した録音途中だった音源を、当時一緒にアルバム制作に携わっていたジョン・ブライオンが、マックの遺志を思いながら完成させた、マックの遺作『Circles』です。マックは本来ラッパーとしてヒップホップ・シーンのみならず、オルタナティヴ・シーン全般から高いリスペクトを受けていたミュージシャンでしたが、このアルバムはもはやラップという単一の表現手法に止まることなく、どちらかというと「喋るように歌うシンガーソングライター」と呼ぶのが適切ではないか、と思うような、そんな自由な表現手法によって、これまたマック個人のパーソナルな感情とか、経験とか、苦悩とかをエレクトロ系の打込み中心の音源をバックにしながら極めてオーガニックなシンガーソングライター的な作品になっています。このアルバムについては、「新旧お宝アルバム!」をこのnote.comに引っ越ししてくる前の2月に、前のブログのプラットフォームで熱いレビューをアップしていますので、こちらを是非ご参考に。

えー、ヒップホップかあ」と思われる向きもあるかもしれませんが、この作品はもはやヒップホップという枠からも飛び出して、極上のエレクトロなスタイルによるポップ作品になってますので、是非ご一聴を。「Good News」や「Hand Me Downs」などは自分も特に好きなナンバーですが、後者などこのアルバムではアナログな音が一番フィーチャーされてて、バックにさりげなく流れるギターリフやエレピの音色、メロディやマックの歌唱スタイルなどがメンフィス・ソウルっぽい気持ち良さを醸し出していて、マックの自宅に集まって演奏を聴いているような、そんな心地よさを感じさせます。彼の生前のライブ動画などを見たり、他界直前にガールフレンドだったアリアナ・グランデのコメントなどを聴くと、彼が極めてパーソナルで、ジェントルな人間だったことが判りますし、この作品はそうしたマックの人格的側面を、ジョン・ブライオンが気持ちのこもった仕事で最大限表現されるように作っているのが伝わってきます。まだまだ彼の音楽的世界観をいろんな形で聴きたかった、感じたかったと思いながら、コロナロックダウンが始まった今年の3月〜4月頃はこのアルバムは自分のパワーローテになっていました。マックの世界にまだ触れたことのない方に、是非一度聴いて頂きたい、そんな作品です。

3. Chilombo - Jhéne Aiko (Def Jam)

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確かこのアルバムがBillboard 200の2位に初登場した3/21付の「今週の全米No.1アルバム事情 #20」の記事でもコメントしていたのですが、このアルバムも含め、ジェネ・アイコの作品は、『Thank U, Next』以降のアリアナ・グランデのスタイルに楽曲のスタイルや歌唱スタイルはよく似ているのですが、アリアナの作品との違いは、こちらの方がエレクトロな音源よりもオーガニックな音源でほとんどのサウンドが作り上げられていること、楽曲の内容が男女の関係や営みにも赤裸々に触れていながらよりスケールの大きい、スピリチュアルでエスニックな世界観を持っていることの2つがあると思うんです。彼女自身が、日系ドミニカ人の母親とネイティブ・アメリカンの血を引く黒人の父親の間に生まれたという出自もそのあたりには大いに関係があるところだろうと思いますし、今回のアルバム・タイトル『Chilombo』というのが父親のネイティブ・アメリカン由来の姓であること(彼女はソングライティング・クレジット上はジェネ・アイコ・エフールー・チロンボ名義を使用しています)もそうした側面をより明確に自分のアイデンティティとして表明するためであることは容易に想像が付きます。

前述のように、楽曲スタイルは2010年代以降のエレクトロな浮遊感や音響派的な今風R&Bサウンドで、ほとんどの楽曲がミディアムからスローな曲調で展開される、ゆったりとした気分で聴いているとひたすら癒やされる感じですが、H.E.R.とのデュエット「B.S.」や「Pu$$y Fairy (OTW)」といった曲などで歌われている歌詞はf**k関係の四文字熟語も頻出してくる、男女関係のあからさまな感情や状況、葛藤などをエロティシズムたっぷりに自由に表現している作品。なので、自分自身はこのアルバム高く評価してましたが、今回のグラミー賞のノミネーション発表でこのアルバムが主要部門の最優秀アルバム部門にノミネートされていたのは嬉しい驚きでした。その主要部門にはテイラーの『Folklore』という超本命がいるので受賞は厳しいかもしれませんが、もう一つノミネートされている最優秀プログレッシヴR&Bアルバム部門(昨年までの最優秀アーバン・コンテンポラリー・アルバム部門が改称)ではかなり受賞の可能性は高いと思ってます。彼女にはしばらく前からかなり注目していただけに、今回はどちらかで是非受賞してほしいなあ。

ジェネの元カレ、ビッグ・ショーンや前述のH.E.R.をはじめ、ナズ、フューチャー、ミゲル、ジョン・レジェンド(彼とのデュエット「Lightning & Thunder」は今回のグラミーの最優秀R&Bパフォーマンス部門にノミネートされてます)などなど、R&Bやヒップホップのスター達の客演もふんだんに盛り込まれたこのアルバム、現在のところCDとデジタルのみリリースで、個人的には早くヴァイナルを出して欲しいというのが望みです。できれば8月に追加リリースされたデラックス・バージョンで。デフジャムさんよろしく!

2. Daylight - Grace Potter (Fantasy)

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Boonzzyが2020年のベスト・アルバムの2位に選んだのは、2010年代にバック・バンドのザ・ノクターナルズを率いてR&Bやブルースベースのロック・バンドのボーカルとして注目を集めたグレイス・ポッターの、ある意味カムバック・アルバム的な位置付けの、でもビックリするくらいエモーショナルで、率直に自分の感情や幼い息子への愛情などを表現した、でも随所でひたすらカッコいいロックンロールな楽曲も含まれた、素晴らしいアルバム『Daylight』です。このアルバム、正確には昨年10月末のリリースのアルバムなんですが、自分が実際に音を聴いたのは今年に入ってからでしたし、何しろ今のコロナの状況にぴったりの素晴らしい作品なので、敢えてルールをオーバーライドして今年のランキングに入れたことをお許し下さい。こちらのアルバムの曲ごとの詳細なレビューも7月にここnote.comで「新旧お宝アルバム!」の記事としてアップしてますので、是非ご覧を。

このアルバムでの重要曲であり、自分としてもお気に入りの曲は、息子セイガンへの愛情をストレートに表現した、ある意味感動的なロック・バラード(後半ドラマティックに盛り上がります)「Every Heartbeat」と、彼女が4年ぶりにこのアルバムを録音するきっかけになったという、ゴスペル的なカタルシスを持った「Release」の2曲です。特に前者は、楽曲自体はAメロやサビは基本ほとんどGかC on Gの、Gのベースが鳴り響いてるというとても単純な構成なのに、すごくロック的にカッコいいグルーヴが感じられ、感動的ですらあるのがスゴいことだなあ、と思います。

そして。このアルバム、自分にとっては今のアメリカン・ロックの率直さと良心を感じさせてくれる素敵なアルバムなのですが、グレース自体がメインストリームから外れて4年以上経つので、シーンの評価はあまり期待していなかったのですが、今回発表されたグラミー賞のノミネーションで、何と見事に最優秀ロック・アルバム部門と、最優秀ロック・パフォーマンス部門(アルバムタイトル曲の「Daylight」で)にノミネートされたんです。ロック・パフォーマンス部門の方はフィービー・ブリッジャーズハイムなどもノミネートされてるので厳しいでしょうが、アルバムの方はかなり可能性あるんじゃないかと思ってるので、こちらも今月31日(日本時間2/1)に予定されているグラミー賞授賞式の楽しみの一つになるでしょうね。

そして、Boonzzyの選ぶ2020年ベスト・アルバムの1位は、こちらです。

1. Letter To You - Bruce Springsteen (Columbia)

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はい、Boonzzyが選ぶ2020年ベスト・アルバムの1位はボスの『Letter To You』でした。「何だかオッサンくさい、メジャーすぎる1位だなあ」というご感想を持たれる、特に若い洋楽ファンの方も多いかもしれませんが、前作『Western Stars』(2019)で、自らの言葉とメロディで、まるで一大大河映画のサントラ盤を作るように映像感覚溢れる作品を提示してみせたボスが、今回は2014年の『High Hopes』以来6年ぶりに自らの出発点でもある、Eストリート・バンドとの面々とのストレートなバンドスタイルによって、我々世代に取っての共感をいやが上にも呼ぶ、それでコロナの時代の感情をしっかり表現した、これだけの感動的なアルバムを作ってくれたことに対する、長年の音楽ファンである自分の感謝の気持ちをこめた1位、と受け止めて下さい。何しろこれだけの存在感とエモーションを持って迫ってくる楽曲群が、僅か5日間で、しかもほぼEストリート・バンドとの一発録りで作り上げられた、と言う事実自体が凄いことだと思いませんか?

何しろこのアルバムは魅力的な楽曲、胸に響く楽曲が多すぎるのです。コロナで身近な人を失った人々に思いを馳せるようなオープニングの「One Minute You're Here」、自分のこれまでの経験を手紙にしたんだ、是非読んでくれと、このアルバムに誘う「Letter To You」、「Born To Run」の頃のサウンドと何ら遜色ない疾走感一杯の「Burnin' Train」、昔一緒にバンドやってた奴らの中には逝っちゃった奴もいるけど、オレは一人残って何とか頑張ってるぜ、と今は亡きクラレンス・クレモンスを偲ぶような歌詞が胸に響く「Last Man Standing」(後半のサックスはそのクラレンスの息子、ジェイクです)、何があろうと自分達はいろんな所に演奏に行って人々の気持ちを明るくしていくんだ、という決意表明的な「House Of A Thousand Guitars」、ボスがファースト・アルバムの『アズベリー・パークからの挨拶(Greetings From Asbury Park, N.J.)』(1973)のために書いたが未発表となっていた50年近く前の楽曲で、聖書の登場人物が昔のアメリカ西部に登場するというボス一流の寓話的なストーリーが今も新鮮な「If I Was A Priest」、先に逝ってしまった友に対してまた夢の中で会おう、というメッセージがこのアルバムのクロージングにぴったりな「I'll See You In My Dreams」などなどが、ボスの歌声とEストリート・バンドの演奏で聴く者の胸を揺さぶるんですよね。ファーストの頃からぐるっと回ってまたスタートラインに立っているかのように、そして昔からのボスのファンであれば「ああ、こういうボスのアルバムを聴きたかった」と思わせる、そんな重要なアルバム。

このカウントダウンでは、お届けするアルバムが再三グラミー賞でどのような評価をされているか、今度のグラミー賞での受賞の可能性などについて言及してますが、このアルバムは今年10月のリリースなので、今回ではなく、来年第64回のグラミー賞対象作品となります。全く違った意味で名作の評判高かった前作『Western Stars』は昨年のグラミー賞ではガン無視されてしまいましたが、今回のこの作品はまともな音楽ファン、ミュージシャン、音楽関係者であれば決して無視できないほどの重要性を持った作品になっていると思うので、よもや来年はガン無視はないよね、と思ってるところ。そしてボスには素晴らしいアルバムをありがとう、と言いたいですね。

以上、Boonzzyが選ぶ2020年ベスト・アルバムのカウントダウン、いかがでしたか?最後にこのカウントダウンでご紹介したアルバムの曲で構成されたプレイリストを作りましたので、SpotifyまたはApple Musicで是非お楽しみ下さい。次の恒例洋楽年始企画は、「第63回グラミー賞主要部門大予想」です。昨年までは他のブログ・プラットフォームでやっていた、51部門の受賞予想を今年はこのnote.comで来週くらいから展開予定です。1/31(日本時間2/1)の授賞式までに完了するかちょっと不安もありますが、何とか頑張りますのでどうぞお楽しみに。ではまた!


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洋楽の虜になり早45年、90年代は洋楽サークル「meantime」スタッフ。現在は都内でDJの傍ら、FBとnoteでのチャート情報・アルバム紹介、音楽評論家の吉岡正晴氏と毎年グラミー予想イベント登壇など活動中。https://www.facebook.com/masato.ata