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今週の全米No.1アルバム事情 #67 - 2021/2/20付

JOC会長、橋本聖子オリンピック大臣で決まるようですが、相変わらず決定の論議の内容が全く公開されてませんね。あの団体が森さんの騒動で何の教訓も得ないだけでなく、結局体質は一切変わらないことが改めて明らかになったってこと、誰か理事で判る人いないんでしょうかね。

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さて、事件から学びを得ないのはJOCだけではないと見えて、今週末のBillboard 200の1位、何と依然モーガン・ウォレンの『Dangerous: The Double Album』が1位をキープ、これで5週目の1位。しかも今週もトータル・ポイントは150,000ポイント(1%アップ)、実売に至っては37,000(49%アップ)とポイントを減らすどころか、あの問題発言騒ぎ以来、ストリーミング以外は3週連続ポイントを上げ続けての5週目1位。これ、どういうことでしょうか?確かにあの事件直後、速攻でほとんどのラジオ局や所属レーベルのビッグ・ラウドなどがモーガンを切り捨てる対応をしたのはやや性急かつ極端かな、とも思ったのですが、ネット上では多くの批判的意見が見られるし、少なくとも本人も「間違ったことをした」と何度も動画でアナウンスして自分の愚かな行動を反省しているのに、まるで「ラジオ局やレーベルの対応は間違ってる」と言わんばかりにこぞってモーガンのアルバムを買いに走る層がいる、というあたりに、未だに分断されているアメリカの現実を改めてまざまざと見せつけられている感じがしているのは自分だけでしょうか

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更に今週もっと驚いたのは、何とモーガンの前作のデビューアルバム『If I Know Me』(2018) がこの3週間で31位→17位そして今週10位に初のトップ10入と、まるで「もう禊は終わった」と言わんばかりのチャートアクションを見せたこと(これまでのこのアルバムの最高位は13位でした)。これで正しい対応をした全米のラジオ局やビッグ・ラウド・レーベル、更には今回の事件でモーガンを今年のアウォード資格対象外の決定を下したACM(カントリー・ミュージック・アカデミー)におかしなプレッシャーがかかるようなことがあったりしたら正しく本末転倒ですよねえ。だいたいモーガンは、今回の件だけでなく去年も5月にはナッシュヴィルのキッド・ロックのバーで泥酔して暴れて逮捕されたり、10月にはNBCの『Saturday Night Live』出演が決まっていたのに、直前にアラバマでのパーティでマスクなしでどんちゃん騒ぎをして女の子にキスしまくるコロナ違反の動画をポストされて、出演キャンセルを食らったりと、まあ正直懲りないタイプなんで、しばらくおとなしく頭を冷やしてもらう方が本人と周りのためだと思うんですが。

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そんなこんなでモーガンの勢いが収まらないので、てっきりブッチギリで1位初登場だと思っていたザ・ウィークンドのベスト盤『The Highlights』は、実売が10,000枚と思ったほど冴えなかったこともあり、89,000ポイントと、モーガンの約半分のポイントで2位に初登場でした(UKアルバムチャートでも初登場2位)。スーパーボウルのハーフタイム・ショーの影響が思ったほどポイントにつながらなかったのはやや意外でしたが、全米トップ10ヒット12曲中11曲収録(昨年最高位8位のジュースWRLDとのコラボシングル「Smile」のみ未収録)というお得な仕様なので、しばらくトップ10に居座るのかもしれません。ちなみに直近のアルバム『After Hours』にも収録の大ヒットで、今週Hot 100で3位と4位にそろい踏みしてる「Blinding Lights」「Save Your Tears」のダウンロードやストリーミング・ポイントは、今回『The Highlights』の実売数>『After Hours』の実売数だったので、全て前者にポイント加算されるそうで、そのあおりを喰らって『After Hours』は先週の4位から一気に37位にダウンしてます。これも何かチャート集計方法の歪さを感じますね。

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そしてそのウィークンドと競るのでは、と言っていたフー・ファイターズの新作『Medicine At Midnight』は70,000ポイント(実売64,000枚、今週の実売枚数ナンバー1)で3位に初登場。先行シングルの「Shame Shame」は既に昨年末から今年の頭にかけてメインストリーム・ロック・ソング・チャートで6週間1位を爆走してました。この曲を聴いてわかるように、今回のアルバムはこれまでのストレートなハードロック・サウンド中心からちょっと異なるタイプの、どっちかというとオルタナロック的な楽曲が多いようです。相変わらずギターサウンド中心のサウンドなんですが、一方ではプロ・トゥールズを使ったり、ドラム・ループを多用したりと、いろんな新しいことにトライしているらしく、デイヴ・グロール自身はこのアルバムをボウイの『Let’s Dance』に例えてるとか。確かにタイトルナンバーなんてかなり80年代のボウイっぽい。アコースティックな「Waiting On A War」も今のコロナ時代の心情を思わせるようないい曲。もう少しちゃんと聴き込んでみなきゃ、と思わせるアルバムですね。今週のUKアルバムチャートでは見事初登場1位。名作の予感です。

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今週のもう1枚のトップ10初登場は、62,000ポイント(実売1,500枚)で4位に飛び込んで来た、メンフィス出身今年21歳の新人ラッパー、プー・シースティ(本名:ロントレル・デネル・ウィリアムスJr.)のデビュー・ミックステープ『Shiesty Season』(デジタルダウンロードとストリーミングオンリーのリリース)。今やトラップの開祖のようなポジションを確保してるグッチ・メインに見出されたのがきっかけで昨年何枚かのシングルでシーンでの存在をジワジワ確保してたプー、今年に入って今回のアルバム収録のリル・ダークとのコラボシングル「Back In Blood」(今週Hot 100で37位→17位で上昇中)がブレイク、いいタイミングでリリースしたこのミックステープが4位に飛び込んで来たというわけ。まあどうということのない、普通のトラップ・チューンなんですがね。

今週はトップ10は賑やかですがその下は相変わらず地味なチャート状況。11位以下100位まで初登場ゼロという状態です。ではトップ10のおさらい(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト)。

1 (1) (5) Dangerous: The Double Album - Morgan Wallen
*2 (-) (1) The Highlights - The Weeknd
*3 (-) (1) Medicine At Midnight - Foo Fighters
*4 (-) (1) Shiesty Season - Pooh Shiesty

5 (2) (8) The Voice - Lil Durk
6 (3) (32) Shoot For The Stars, Aim For The Moon - Pop Smoke
*7 (9) (15) Positions - Ariana Grande
8 (5) (31) Legends Never Die - Juice WRLD
9 (6) (66) What You See Is What You Get ▲ - Luke Combs
*10 (17) (124) If I Know Me ▲ - Morgan Wallen

さて来週の1位予想です。対象リリース期間は2/12〜18なんですが、以前リリースラインアップに強力盤が見当たらず、目に付くのはペンタトニックス、シーアくらいですかねえ。でもモーガンの売上ペースが落ちないようだと来週もこのままモーガンが6週目1位、というのもかなりありそうです。何なんだ、という感じはしますが。ではまた来週。

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