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【毎年恒例年末洋楽企画#1】2020年ビルボード誌Hot 100年間チャート予想(のはずだった)Part 4 完結編: 5位〜1位

さていよいよあと残すはトップ5のみ。ビルボード誌の結果はPart 1のリンクでチェック済みだと思いますが、それと自分の予想はどのくらいマッチしてたでしょうか。ここまでで順位ズバリ的中したのは、7位のフューチャードレイクの「Life Is Good」、11位のドジャ・キャットSay So」そして15位のミーガン・ザ・スタリオンビヨンセの「Savage」の3曲でした。トップ10では1位違いと惜しかったのが「Rockstar」(年間5位、予想6位)とマレン・モリスThe Bones」(年間9位、予想10位)と、今年の予想は結構いい線行ってるんですが、本領はこれからです(笑)。

トップ5に入る前に、自分の予想ではトップ20には入ってないけど、ビルボード誌の年間チャートの20位に入っていた曲が2曲あって、これまだご紹介できてないので、ここでクイックにカバーしたいと思います。

予想21位/ビルボード14位 Dance Monkey ▲4 - Tones And I

(Hot 100 - 29週、Top 40 - 23週、Top 10 - 11週、Top 5 - 3週/2020.2.29付 最高位4位

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トーンズ・アンド・アイこと、オーストラリア人の女性シンガー、トニ・ワトソンの不思議な歌声と、ちょっと哀愁がかったメロディのこのアップテンポ・ナンバーは、去年10月に突然UKナンバーワンに躍り出て11週間に亘って1位独占。UKだけでなく地元オーストラリアはもちろん、ヨーロッパやアジアの各国トータル38カ国で1位を獲得したという、世界的な大ヒットで、先頃「2020年で最もShazamされた曲」に認定されたらしいです(誰が数えてるんでしょうかw)。アメリカでもヨーロッパに遅れること4ヶ月後に見事トップ5入り。本人が老人に扮して死にそうな状態からピョンピョン跳び回るPVもなかなか笑えるのですが、しかしこの人、一発屋の雰囲気がプンプンしますなあ(笑)

予想23位/ビルボード16位 Roxanne ▲4 - Arizona Zervas

(Hot 100 - 23週、Top 40 - 23週、Top 10 - 18週、Top 5 - 3週/2019.12.28付 最高位4位

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自分のトップ20予想からこぼれた2曲はいずれも最高位4位の曲でした。アリゾナ・ザーヴァスって本名らしいんですが、ロード・アイランド州のプロヴィデンスというどっちかというとホワイト・エスタブリッシュメント層の多い都市から出てきたホワイト・ラッパー、というかどちらかというとシンガーですな。現在25歳、ティーンエイジャーの頃から曲作ってはスポティファイにアップして、かなり人気を集めてたらしいです。この「Roxanne」もトラップ風味のホンワカとしたポップ・チューンってのが今時のスポティファイ・リスナーに受けたらしく去年の10月にアップしたところ、直ちにヴァイラル・チャートのトップに立ったことからHot 100にも11月には登場、年末頃には4位に昇る大ヒットに。めでたくコロンビアと契約したんですが、この人もこの後が続いてないですねえ。どうでもいいんですが、あの首の周りのタトゥーって、入れる時半端なく痛かったんじゃないかな、なんてPV見ながらふと思ってしまうのは自分だけでしょうか。

ということで自分の予想もビルボードの年間チャートも、上位20位の曲を完全にカバーしたところで、残りのトップ5行きますよ。ここからは、自分の予想順位とビルボードの実際の年間チャート順位(BBxx位、というふうに)を併記しますね。

5. (BB6位)Adore You ▲2 - Harry Styles

(Hot 100 - 50週、Top 40 - 47週、Top 10 - 7週/2019.12.28付 最高位4位

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はい、トップ20内2回目の登場、しかもいずれもソロクレジットでの登場はこの人、ハリー・スタイルズだけ。そしてこれも予想と結果が1位違い。っていうか、Part 3見てもらうと判るけど、自分の予想と結果は5位と6位が見事に入れ替わってました。惜しいなあ

この曲は「Watermelon Sugar」とはちょっと雰囲気が異なり、ちょっとThe 1975あたりとも通じるエレクトロ・ブルーアイド・ソウル的なグルーヴを持つなかなかゴキゲンなナンバーですが、1位まで昇り詰めた「Watermelon Sugar」に対して最高位6位にして、年間5位(ビルボードは6位)と強力なのは、Hot 100に50週チャートインという、今年の年間チャート対象曲では2番目の長期滞在曲だったってのが大きい(1番がどの曲だったのかもうすぐ判ります)。そんなこんなでアルバム『Fine Line』同様、音楽メディアからも評判よかったんですが、今回のグラミーでは主要4部門には残念ながらノミネートされず、この曲はビデオ部門でのノミネートのみ。最優秀ポップ・ソロ・パフォーマンス部門では「Watermelon Sugar」の方がノミネートされてました。こういうコンテンポラリーなよくできたポップ・ナンバー、もっと評価されて欲しいんですけどねえ。

4. (BB4位)Don't Start Now ▲3 - Dua Lipa

(Hot 100 - 49週、Top 40 - 45週、Top 10 - 20週、Top 5 - 10週/2020.3.21付 最高位2位

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はい、この4位は予想見事的中。一昨年のグラミー賞新人賞部門を並み居る実力者達を押しのけて受賞したデュア・リパ、それ以来というもの何だか向かうところ敵無しの雰囲気や、あたかも今を代表するポップ・クイーン!みたいなオーラを漂わせていて、実際英米でも人気あるし(新作『Future Nostalgia』は全米4位、全英堂々の1位)、マドンナの再来、みたいなことを言ってる音楽メディアもあったりするんだけど、果たしてそうなんでしょうか。この曲も、英米両方で2位まで昇る大ヒットになってて年間チャートでも堂々4位と、2020年を代表するヒット曲の一つであることは間違いないけど、なーんかこの子の曲って、新鮮味というかワクワク感みたいなものを感じないんですよね、個人的には。この曲の楽曲構成も、何か70年代後半のフロアダンクラナンバーっぽい感じの既聴感が半端ないし。まあでも裏返せば広く受け入れられやすいというのはあるかも。まあルックスもクールな美人で、こういう曲やってるとかなり絵になりますしね。でもなあ、今回のグラミー賞でも『Future Nostalgia』が最優秀アルバム部門ノミネート、ってのはかなり?マークが飛んじゃってます。まあいいや。とっとと次に行きましょう。いよいよトップ3!

3. (BB3位)The Box ▲7 - Roddy Ricch

(Hot 100 - 38週、Top 40 - 33週、Top 10 - 25週、Top 5 - 19週/2020.1.18-3.28付 11週1位

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おお、これも予想順位大的中。しかもこの曲、11週1位と2020年で最も長期間1位にいた曲なのにこの年間3位という意外性のあたりもバッチリ当ててるあたりが偉いなあ、自分(自画自賛)。いやそれくらいこの曲は、デビューアルバム『Please Excuse Me For Being Antisocial』の1位快進撃(Billboard 200で、昨年12月から今年2月にかけて4回に分けて1週ずつ、計4週1位を記録)と並行して、今年の第1四半期(つまりコロナが深刻化する前ですね)のHot 100の1位をほぼ独占していたくらい、圧倒的なヒットだったので、当然年間1位を予想したトップ40ファンも多かったと思いますし、それも無理ならず、といったところです。ただ惜しむらくはHot 100には僅か38週と、21世紀のナンバーワンヒットとしてはビックリするくらいのロングヒットではなかったのと、何よりもこの後に登場する2曲がとにかくロングヒットという意味では遙かに圧倒的だった、ということなんですよね。

昨年のグラミー授賞式でも故ニプシー・ハッスル・トリビュートのセクションで、ミーク・ミルらと堂々たる共演を果たして、自らもそのニプシーの「Racks In The Middle」にフィーチャーされて初のグラミー受賞を決めていた(で、それが理由で今年の新人賞部門ノミネート資格から落ちたんですが)ロディ。今回の第63回グラミー賞では、この「The Box」が何とソング・オブ・ジ・イヤーでノミネートされているほか(本人も本名のロドリック・ムーア名義で共作者になってますので受賞可)、最優秀メロディック・ラップ・パフォーマンス部門(去年までのラップ/歌唱パフォーマンス部門です)と最優秀ラップ・ソング部門に堂々3部門ノミネート。彼はそれ以外にも、年間5位(予想6位)だったダベイビーの「Rockstar」にフィーチャーされて、かつ共作者にもクレジットされているので、そちらがレコード・オブ・ジ・イヤーと、「The Box」同様最優秀メロディック・ラップと最優秀ラップ・ソングにノミネートされているという凄い状況。どう転んでもどっかで複数受賞しそうなロディ・リッチ、完全にヒップホップ界の実力派大型新人としての存在感を十二分に発揮した一年でした。

で、その「The Box」の上を行く2曲、まず第2位はこれでした。

2. (BB2位)Circles ▲4 - Post Malone

(Hot 100 - 49週、Top 40 - 49週、Top 10 - 27週、Top 5 - 19週/2019.11.30-12.7 & 2020.1.11付 3週1位

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年間2位も見事予想的中。これで4位からずっと予想的中しているな。そしてこの「Circles」は個人的にも2020年のヒット曲の中ではかなり上位にランクされるほどお気に入りの曲でした。既にグラミー賞予想の記事の時にも散々書いたけど、今回のアルバム『Hollywood's Bleeding』では、それまでの「ちょっと聴きやすいトラップ・アーティスト」から「トラップ風味を巧みに消化した、良質のメインストリームポップシンガー」に大きく軸足をシフトしたポスティの、その中でも象徴的といえるナンバーでしたから。

相変わらずPVの趣味はイマイチなんだけど(笑)、「Sunflower」あたりから如実に楽曲のクオリティも上がって来ていて、ある意味この曲は今のポスティの作品としては頂点に近いんじゃないかな。その1位3週の「Circles」(UKでは最高位3位)が1位11週の「The Box」を押さえた最大の理由が、この曲、11月末の年間チャート対象期間終了の1週間前までは、トップ10内39週というHot 100歴代最長記録を打ち立てていたこと。残念ながらチャートインが年間チャート集計期間前の2019年9月なので、最初の12週間(すべてトップ10内、含む1位1週)が頭切りされてるのと、実はその上をいくヒットが土壇場で登場したので、年間2位に甘んじています。もし全てのチャートランが年間チャート集計期間に収まっていたら、ひょっとするとこの「Circles」が年間1位の目も充分あったと思いますね。

そしてこの曲、当然のごとく今回の第63回グラミー賞ではレコード・オブ・ジ・イヤーとソング・オブ・ジ・イヤーに何とダブルノミネートされている上、アルバム『Hollywood's Bleeding』も最優秀アルバム部門ノミネートと、主要4部門中3部門にどっしりその存在感を見せています。ラップ部門には逆に一切登場していないというのも、彼の今回の軸足シフトの結果をアカデミーメンバーがちゃんと受け止めているように見えます。いずれの部門も厳しいんだけど、どこかで一つくらい取って欲しいなあ、と個人的には大いに応援してます。

さて、いよいよ注目の年間チャート1位予想、先に言っちゃいますとこちらも見事予想的中、これで1位〜4位まではズバリ的中で5位と6位が入れ替わりで、7位的中ですから、ほぼ1位〜7位は大当たりだったなあ、というのが今年の予想の自己評価でした。そしてビルボード誌の年間チャート発表でこの曲が1位だったのを見て「あれ?」と思ったトップ40ファンは多かったかも。その年間1位はこの曲でした。

1. Blinding Lights ▲ - The Weeknd

(Hot 100 - 51週、Top 40 - 47週、Top 10 - 40週、Top 5 - 33週/2020.4.4-11 & 4.25-5.2付 4週1位

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はい、2位に続いて1位もPVの趣味があんまりよろしくない(笑)ザ・ウィークンドの「Blinding Lights」でした。80年代エレクトロ・ダンスR&Bの意匠をまといながら、大きなスケールのソングライティングで独自の世界を醸し出したこの楽曲、チャート的には1位は4週でしたが、Hot 100内51週とほとんど1年に亘ってチャートインし、しかも11月の最後の週で、それまでポスティの「Circles」が今年樹立していたトップ10内最長記録を破って年間チャート集計期間を終了するという、まるで第4コーナーから脅威の末脚でゴール前1メーターで鼻の差で優勝する、みたいなそんな雰囲気の勝ち方をした曲だったんです(ちなみにトップ10内最長記録は最終41週まで伸ばしました)。

まだあります。今回この曲が樹立した歴代最長記録はもう一つあって、トップ5内33週というやつ。これ、それまでの記録だったチェインスモーカーズの「Closer」とエド・シーランの「Shape Of You」の27週を大きく抜き去ったぶっちぎりの記録でした。せっかくなので、ここで歴代トップ5最長ランキングを見てみましょう。

1.(33週)Blinding Lights ▲ - The Weeknd (2020年、4週1位)
2.(27週)Closer ▲12 - The Chainsmokers Featuring Halsey(2016年、12週1位)
2.(27週)Shape Of You ▲10 - Ed Sheeran(2017年、12週1位)
4.(26週)Circles ▲4 - Post Malone(2019-20年、3週1位)
5.(25週)Uptown Funk! ▲11 - Mark Ronson Featuring Bruno Mars(2015年、14週1位)
5.(25週)How Do I Live ▲3 - LeAnn Rimes(1997-98年、4週2位)
7.(24週)Girls Like You ▲8 - Maroon 5 Featuring Cardi B(2018年、7週1位)
7.(24週)That's What I Like ▲7 - Bruno Mars(2017年、1週1位)
9.(23週)Old Town Road ▲13 - Lil Nas X Featuring Billy Ray Cyrus(2019年、19週1位)
9.(23週)Despacito ▲13 - Luis Fonsi & Daddy Yankee Featuring Justin Bieber(2017年、16週1位)
9.(23週)Without Me ▲7 - Halsey(2019年、2週1位)

いやいや、いずれ劣らぬ重厚長大大ヒットが並んでますね。中でも何気にソロとフィーチャリング両方で2曲エントリーしているブルーノ・マーズホルジーが渋く光ってます。そして「Blinding Lights」もつまりは、1週の週数は短かったけど(UKでは8週1位と頑張ってましたが)、こういうスケールのロング&ビッグ・ヒットだった、ということなのです。それにもかかわらず、です。先日のグラミー賞ノミネーション発表の記事でも大きく取り上げたように、今回のノミネーションでザ・ウィークンド、この曲だけでなく完全ボウズだったんです。あり得ないですよねえ。ちなみに上記のリストの中で、グラミーノミネート完全ボウズだったのは、このザ・ウィークンドの曲と、ホルジーの「Without Me」だけでした(ホルジーグラミーにはガン無視され続けてるんで可哀想なんですが)。

ビルボード誌のR&Bソングチャートでは、今週もまだ通算38週目の1位を続けている「Blinding Lights」。いろんな意味で2020年を代表する曲としては充分だと思うのですが、皆さんはいかが思われますか?

ということで4回に亘ってお送りしてきた「2020年ビルボード誌Hot 100年間チャート予想(のはずだった)」シリーズ、いかがでしたか。締めくくりとしてこのシリーズでカバーした2020年のヒット曲+2曲を収めたプレイリストをオマケに、このシリーズを終わります。次の年末企画第2弾は「Boonzzyの選ぶ2020年ベストアルバム」です。乞うご期待。


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