見出し画像

今週のおすすめ本 vol.16

店舗とオンラインストアで取り扱っている本から、おすすめのタイトルを紹介するマガジン「今週のおすすめ本」。

今回取り上げるのは、香山哲さんの『レタイトナイト』です。

ドイツでの移住生活を綴ったエッセイコミック『ベルリンうわの空』が大きな話題を呼んだ香山さんの最新作は、ファンタジー世界を舞台にした冒険物語。『ベルリンうわの空』とは全く違うアプローチですが、香山さんらしさがしっかり詰まった作品になっています。


テーマは「生きるための旅」

海に挟まれたこの地には、4つの国があった。人々はその土地ごとに、さまざまな暮らしを送っていた。
北方の国レタイトの集落に住む少年・カンカンは最近、どうも納得がいかない。「自分の町の誰も買えないものを作るようなことは、なんかおかしい気がする」。
生活に苦しむ人々や、町に漂う閉塞感を感じていたカンカンはある日ふと、外の世界に出てみよう、と考えたのだった。
生きるための旅の出よう。
力を持たざる者たちによる「居場所発見」ファンタジー!

あらすじより

主な登場人物は、レタイトの集落に住む少年カンカンと、カンカンと一緒に暮らしている叔父のマル。

集落での貧しい暮らしに希望を見いだせないカンカンは、学校に行くのをやめて旅に出ます。意を決して旅立ったものの、直後に野盗に襲われ、集落へ逆戻り。
怪我をおったカンカンが家での療養を余儀なくされていたところ、今度は叔父のマルが出稼ぎの旅に出ることになります。

1巻では叔父のマルの動向をメインに、集落の隣町タタトへの旅の道中と、タタトに滞在している時の様子が描かれています。


細かく練られた設定や解説が楽しい

本作を面白くしている要素の一つが、丁寧に考えられたレタイトという舞台の設定。
大陸図から町の地図、建物内のレイアウト、通貨の単位や物価、さらには食堂の定食メニューまで、ディティールについての解説が随所に散りばめられており、レタイトの世界観の解像度を上げてくれます。ファンタジー世界でありながら、貨幣や物々交換による経済活動についてリアルに描写されているのは、他にはない特徴だと思います。


物語は始まったばかり

『レタイトナイト』の物語は、まだ序章。野盗に返り討ちにあってしまったカンカンの本当の旅立ちは、きっと2巻で描かれるはず。続きが楽しみな作品です。

本作はウェブコミックサイト「路草」の掲載作品。単行本には14話までが収録されていますが、4話までは「路草」上で読むことができますので、気になった方はまずこちらを覗いてみてください。


副読本『プロジェクト発酵記』もおすすめ

前作『プロジェクト発酵記』には、『レタイトナイト』の連載がどういった始まった経緯や、物語作りにおける事前準備、プロジェクトの進め方について香山さんが考えていることが綴られています。「連載内容を考えるための過程を連載にした」というこれまた変わった本ですが、こちらもとても面白い内容になっているのでおすすめです。


今回はここまで。

取り上げた本は、店頭、オンラインストアで販売しています。在庫数は限られているため、売り切れの際はご容赦ください。
本の取り置きや、在庫がない本の取り寄せも承りますので、お気軽にお申し付けください。それではまた次回。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?