
レティシア書房店長日誌
後藤正文「朝からロック」
このタイトルで著者がASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカリストとなれば、ロックの紹介の本と思いますが、全く違います。日々の生活のこと、コロナのこと、政治や社会のことなどを簡潔に、しかし、自分の主張はしっかりと入れたエッセイで、朝日新聞に連載している「朝からロック」をまとめたものです。先日、ミシマ社から出た藤原辰史との対話集「青い星、此処で僕らは何をしようか」を読んで、この著者の世界を見るスタンス、考え方に同意することが多く、店の棚にあった著書を手に取りました。付箋だらけになってしまいました。(朝日新聞社・新刊1980円)

「僕は『性的少数者』という言葉を使うことに、罪悪感とためらいがある。どんなに慎重に書こうとも、自分は多数派であるという思い上がりがどこかに潜んでいるからだ。それでも書かずにはいられない自分の傲慢さに触れる度に、恥ずかしさでいっぱいになる。 こうした感情と向き合い続けることが、表現の自由には含まれる。」(2017.11.1)
「様々な言語で書き留められた『戦争反対』という意思が、フェイクニュースによる分断を無効化させながら拡散されて、世界中の人々を正気で結ぶ。 恥ずかしげもなく、戦争反対と書きたい。世界中に、私と同じ思いを持つ人がいると信じた」(2022.3.2)これは、ウクライナへのロシアの侵攻が始まった時の文章です。当店もあの時から、ウクライナ語と英語と日本語で「戦争反対」と書かれたポスターを貼ってますが、店を開けるたびに、これ、いつ下ろせるのかな?と不安になります。この戦争が終わるまで掲げておきます、後藤さん!

著者は、友人に推薦されて「99%のためのフェミニズム宣言」を読んだと言います。「抗うべき敵は資本主義だと本書は喝破する。文化、人種、民族、セクシャリティー、ジェンダーによる分断を乗り越えるべく、それぞれの苦しみや経験を認識して連帯しよう、と。 調和のためには、聞くことが何よりも重要だ。良い演奏家は、必ず他者の演奏をよく聴いている。」音楽家ならではの意見ですね。
最も心に残ったのが、川上未映子と村上春樹の対談本「みみずくは黄昏に飛びたつ」を読んだ感想を綴ったものです。
「本のなかで、村上さんはこう語る。『優れたパーカッショニストは、一番大事な音を叩かない。』。心の奥に触れるような、深い言葉だ。 ビートやリズムだけでなく、音楽について漠然と考える場合、どうしても鳴っている音に注目してしまう。けれども、もちろん休符も音符なのであって、どこでどんな音を鳴らすかと同じぐらい、どこでどんな音を鳴らさないのかというのは、とても大事だ。(中略)以前、谷川俊太郎さんが沈黙について語った記事を読んだことがある。言葉は、言わないこと、書かないこと、黙っていることまで含んでいるのだと。 書くこと、鳴らすこと。村上さんと谷川さんの言葉の重なり合うところについて考えている。」(2017.6.7)
いい文章だと思いました。
1月1日能登の震災が起きた激動の2024年、今年の営業も本日が最後になりました。ご来店いただき誠にありがとうございました。
そして今年もたくさんの方々に本屋のギャラリーを飾っていただきました。アトリエ・ローゼンホルツさん、Towersさん、まるぞう工房さん、hmさん、北岡広子さん、tatagutiさん、下森きよみさん、松本紀子さん、ふくら恵さん、よしだるみさん、村瀬進さん、西山裕子さん、後藤郁子さん、クロアゼイユさん、待賢ブックセンターさん、やまなかさおりさん、中村ちとせさん、飯沢耕太郎さん&港の人出版社さん、槙倫子さん、永井宏さん&信陽堂さん、菊池千賀子さん、ランマス・ニットさん、ミシマ社さん、高橋邦子さん。皆様本当にありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。(レティシア店主・女房)
●年始年末休業のお知らせ:12月29日(日)〜1月7日(火)
レティシア書房ギャラリー案内
12/25(水)〜12/28(土)絵本ディスカウントフェア
2025年 1/8(水)〜1/19(日)古本市
1/22(水)〜2/2(日)「口を埋める」豊泉朝子展
⭐️入荷ご案内
「京都町中中華倶楽部 壬生ダンジョン編」(825円)
「オフショア4号」(1980円)
青木真兵&柿内正午「二人のデカメロン」(1000円)
オルタナ旧市街「Lost and Found」(900円)
小峰ひずみ「悪口論」(2640円)
SAUNTER MAGAZINE Vol.7 「山と森とトレイルと」
いさわゆうこ「デカフェにする?」(1980円)
「新百姓2」(3150円)
青木真兵・光嶋祐介。白石英樹「僕らの『アメリカ論』」(2200円)
坂口恭平「自己否定をやめるための100日間ドリル」(1760円)
「トウキョウ下町SF」(1760円)
モノ・ホーミー「線画集2『植物の部屋』(770円)
古賀及子「気づいたこと、気づかないままのこと」(1760円)
いしいしんじ「皿をまわす」(1650円)
黒野大基「E is for Elephant」(1650円)
ミシマショウジ「茸の耳、鯨の耳」(1980円)
comic_keema「教養としてのビュッフェ」(1100円)
太田靖久「『犬の看板』から学ぶいぬのしぐさ25選」(660円)
落合加依子・佐藤友理編「ワンルームワンダーランド」(2200円)
秦直也「いっぽうそのころ」(1870円)
折小野和弘「十七回目の世界」(1870円)
藤原辰史&後藤正文「青い星、此処で僕らは何をしようか」
(サイン入り1980円)
YUMA MUKUMOTO「26歳計画」(再々入荷2200円)
モノホーミー「自習ノート」(1000円)
コンピレーション「こじらせ男子とお茶をする」(2200円)
牧野千穂「some and every」(2500円)
マンスーン「無職、川、ブックオフ」(1870円)
笠井瑠美子「製本と編集者」(1320円)
奈須浩平「BEIN' GREEN Vol.1"TOURISM"」
小野寺伝助「クソみたいな世界を生き抜くためのパンク的読書」(825円)
小野寺伝助「クソみたいな世界で抗うためのパンク的読書」(935円