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【100分de名著を語ろう】レジュメ『精神現象学』②

こんにちは。

もう「本日(23/05/11)」になってしまいましたが、clubhouseの定例ルーム「100分de名著を語ろう」についてのレジュメをお届けします。今回の範囲は、ヘーゲル『精神現象学』の第2回放送分「論破がもたらすもの―—「疎外」と「教養」」で、ナビゲートは斎藤幸平さんです。

正直なところ、今回に限って言えば「今日的な」イシューに引き寄せ過ぎてしまっていたのではないかと思ったのですが、ご覧になった、あるいはお読みになった方は、どうお感じになったでしょうか。この「レジュメ」を読んで、話をしてみたくなったら、ぜひclubhouseにまで遊びにいらしてください。本日21時から始まります。

1)「精神」とは何か?

  1. ヘーゲルの哲学は、ヨーロッパの人びとが拠り所としていたキリスト教を擁護し、称揚するものだという偏見がいまだに根強くあります(略)これでは『精神現象学』に魅力は半減してしまうし、非キリスト教文化圏に生きる私たちが読むべき理由もうすくなってしまう。

  2. 原語の Geist はドイツ語に独特の言葉です。mind のように個々人の「心」を指す言葉ではないし、宗教的な「精霊」の sprit とも違います。

  3. 一言でいうとそれは「私たち」のことです。

2)「理性」から「精神」へ

  1. 「私」であることは「私たち」であることと切り離せないと考えたからです。これこそ、ヘーゲル哲学の画期的な視点です。

  2. 「精神」章においてヘーゲルは、社会のなかで多くの他者と交わり、影響を受けながら、「私」が「私たちのなかの私」として成長していく仮定を描いています。

3)「私たち」である「私」

  1. デカルトやヒューム、カントを読んでも、他者との関係において知が形成されるという視点や発想はあまり見られません。これらの思想家たちにとっては「私」がまずあって、そこから付随的に他者との関係が出てくるのです。/そうした個人主義を、ヘーゲルは徹底して斥けます。

  2. つねに人間は他者と共にあり、その関わりのなかで生きている。

  3. どのようにすると対立を調停し、他者と自由な協働関係を取り結ぶことができるのかが問題になります。

4)拘束されつつ、操るようになる

  1. 前近代社会に生きる人々は(略)伝統が「自然」だとされたのです。しかし近代になると、私たちは「実体」としての規範から自覚的に距離を取ることができるようになっていきます(略)これを「疎外(Entfremdung)」と呼びました。

  2. つまり、規範に高速されつつも、規則を操ることができるわけです。

5)「教養」の意識とは何か?

  1. では、「私」が正しいと個人的に確信する「思いなし」が、社会的・客観的に通用するような「知」として承認されるためには、どのような条件をクリアする必要があるのでしょうか。/ここで重要になるのが、先の引用にもあった「教養」です。

  2. 疎外された近代社会では、みなにとって自動的に「正しい」ものは存在しません。

6)「高貴な意識」と「下賤な意識」

  1. 真っ向から対立する立場のように見えて、実は相互に依存しているのです。

  2. こうした反転現象によって、安定した価値判断から疎外されることが近代の本質であり、それが「全体を維持する」——つまり、こうした現象がなくなることはない、とヘーゲルはいいます。

7)懐疑主義のリスク

  1. もはや私たちは、いかなる所与の価値観も疑いなしに受け入れることのない疎遠な状態に置かれている。ですから私たちは、安定を保障してくれる真理などないことを学び、物事を懐疑的に考察することで自己形成していく必要があります。

  2. 常識を疑ってみることは大事だが、懐疑的に考えさえすれば正しい答えや真理がみるかるわけではない、というものになります。ここに教養という意識の限界が浮かび上がってくるのです。

8)「エスプリに富んだ」不毛な会話

9)なぜ「ラモーの甥」は空虚なのか?

  1. あらゆる常識から距離を取るという意味で、ラモーの甥は教養と疎外の完成形にほかなりません。けれども、そのような自己は矛盾するものを「統合」することができず、矛盾を分裂状態に放置している、とヘーゲルはいいます。それでは新しい規範(「実体」)を把握することはできません。

10)思想なき論破の態度

  1. しかし、彼らには決定的に欠けているものがあります。それは「協働」の態度です。

11)人間は「再動物化」してしまうのか?

  1. つまり、近代の複雑さや変化を拒否して、昔の素朴さに憧れ、伝統的価値観を擁護するような「単純な意識」では、問題解決にはならないということです。

  2. 今までの自分を捨てなければいけないという不安が、私たちのうちに「真理への恐怖」を呼び起こします。

12)6月1日(木)の回の内容について

  1. 5月の月曜は5回あります。通常、第5月曜の「100分de名著」の放送は、第4月曜分の再放送がされています。ですので、5月29日(=第5月曜)には22日と同一内容の放送がされます。

  2. すると、直近の木曜である6月1日(木)の「100分de名著を語ろう」では、何をするのかが問題となってきます。ぼくは、①今までの放送で最も印象的だった「オールタイム・ベスト」か、②そもそもこの番組を見るきっかけとなった回は何だったのかをご発言いただければいいなと考えています。ご意見を賜りたく存じます。

13)追記

※5月13日(土)以降、追記される場合があります。


今回のレジュメは以上となります。お読みくださいまして、ありがとうございました。それではまた!



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