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著者が読者と出会うためのマーケティング戦略 〜数字に踊らされない本の売り方〜

よく著者の先生から

「自分の本をどう売ればいいかわからない」
「私がやるべきことはなんでしょうか」
「重版させるために自分の本を自社の社員向けに購入したいです」

などと言われたことが過去にありました。

実際巷でも、「重版はトップ15%の商品、1万部はトップ5%の商品」などといわれており、こういった数字を意識する人が多いのかなと思いました。

ただ、数字に踊らされ、本来の出版の目的を見失うのは、良くないと思い、今回は、「読者と巡り会うためにすべきこと」を著者の出版マーケティングという観点から見ていきたいと思います。


この考えに染まってはいけない!


そもそも出版をなぜするのか? ですが、
「自身の考え方を世の中に広めたい」
「困っている人の一助になりたい」
「価値あるノウハウを提供したい」
などの想いがあるからではないでしょうか?

こう考えると、「著者の想い」と「読者の共感」が合わさり、購入に繋がっていくのが理想です。

しかし、本を作っていくとだんだん
「○○がベストセラーになった」
「○○さんの本が重版した」
などの情報が入ってくるもの。

それらの情報が入ってくるにつれ、読者との出会いではなく、数字の方に目線が移っていくことになるのでしょう。

よく著者の方から言われるのが、「あと何部売れたら重版ですか?」ということ。しかし、重版するために本をだしたわけではないことを忘れてはいけません。粛々と出会いたい読者のために何ができるかを考えることが重要です。

そう考えると発する問いは?


「あと何部売れたら重版ですか?」
       ↓
「どうすればもっと読者にとどきますか?」

に変わってくると思います。根本を理解しておかないと、「売れることがすべて」という風潮に流されてしまうので、注意が必要です。
そのうえで、必要なことを次項目より解説します。

イノベーター理論で考えるとわかりやすい

私は「製品が売れる流れを整理すると、やるべきことが明確になる」と考えています。

ですから、マーケティングでよく使われるイノベーター理論をもとにここでは解説します。

まず下記の図版を見ていただきたいのですが、著者の先生ができることは、本をはやめに購入してくれるイノベーター・アーリーアダプター(全体の15%)に向けてアプローチすることです。


イノベーター・アーリーアダプターは全体の15%


このクラスターの方々は、コンテンツの新しさを求めています。

たとえば、マーケティングの書籍を出版する場合には、

「マーケター」
「中小・ベンチャー企業の経営者」

などは鋭く反応するでしょう。
マーケターは常に新しいメソッド・考え方などを求めていますし、経営者はプラスして、コンサルを依頼する先なども探しています。

この層は著者の提供するコンテンツと読者の求めているものがダイレクトに重なる層です。
ここに向けてどんどんアプローチをしていくことが必要です。
そしてそれはコンテンツホルダーの著者にしかできません。

セミナーやコンサルを通して常に顧客と向き合い、価値ある情報発信をしてている著者だからこそ、最初の15%にリーチができると考えています。

どういったアプローチを?


それではどうアプロ―チするかですが、まずは顧客の洗い出しです。
過去に

自分が開催したセミナーに来た方、
自分のメルマガに登録してくれている方、
SNSをフォローしてくれている方

は、著者の「発信するコンテンツがいい」と共感するからこそ、SNSをフォローしたり、セミナーに来てくれたりするはずです。

もうやることは明確になったかと思いますが、SNSでの書籍の発信、メルマガでの配信はマストです。


あらゆるツールを使って発信

どんどん情報を発信しましょう。

その際に気を付けるべきことは
「○○という書籍を発売します。ぜひご予約下さい」
などと購入を促すような発信はNGです。

理由は2点あって、
・イノベーターやアーリーアダプターは自分の価値基準というものを明確にもっており、自分で判断して購入を決められる
・告知だと思われた瞬間、購入する意欲が減退する
からです。

ではどうすればいいか?

必要な情報は下記です。


・発売日、値段、タイトル、ページ数
・書籍のサンプルページ
・誰向けの書籍か?
・どういったところが新しいのか?
・どんな悩みが解消されるのか?
・どんなベネフィットが得られるのか?

こういった情報を掲載し、
「もし気になる方は、○○のサイトで詳しく掲載しているので、そちらをご覧ください」などとリンクを掲載しておけばよいでしょう。

持っているSNSチャネルをすべて活用せよ!


よく「私はXが強いので、そこで告知します」などと、一番アセットとフォロワーを持っているSNSのみ活用しようとする人がいます。

もちろんリソースの割き方としては悪くありませんが、SNSチャンネルをほかにも持っているのであれば、すべて使う方がいいです。

それぞれで感度の高いフォロワーの方はいるはずですし、本に関する発信を通して新たな接点も生まれるかもしれません。やらないのはもったいないです。

「でも、さまざまなSNSでの書きぶりや表現の仕方は違うので、それぞれの投稿文をつくると時間がかかります」という質問も受けます。

たしかにそうです。

そんなときにおすすめなのが、文書作成AIのclade。
たとえば、長文の投稿を一本作り、「○○の投稿をInstagramの書評風に」などというと、10秒ほどで投稿文を作ってくれます。
ほかにも、「YouTubeの台本を」などというと、それもまた、10秒で作ってくれます。

一本しっかりしたコンテンツを使えば、claudeを使って他のSNSにも転用可能です。是非やりましょう。

告知は何度も行う

「告知ばかりすると、フォローを外されるのでは?」「嫌がられるのでは?」という声もよく聞きます。たしかにそういった側面もあるでしょう。

しかし、人生をかけて本をつくったはずです。
また、意外と告知は届いていないもの。
1回告知したからと言って、自分のすべてのフォロワーには届きません。

継続して何回も発信しないと、いきわたらないものです。

「では、どのくらい?」

目安でいうと、1日3回(朝、昼、晩)×2週間ほどです。


フォロワーに情報を届けて拡散

本の告知は発売後2週間が命。ここで、重版するかどうか決まるといっても過言ではありません。

この間に
なにもやらずに後悔するか? 
回数をこなせず、情報が行き届かないと懸念するか? 
などを考えたら、発信一択だと思いませんか?

発信内容は

1.新刊告知/内容紹介
特に内容紹介は訴求を変えて何度も行うことをお勧めします。
①誰向けか?
⓶どんなコンテンツが入っているか?
③類書になかった本なのかどうか?
④どのくらいの想いをこめてつくったか?
⑤自分の実体験から来たものか?
⑥顧客のどんな声を拾ったのか?

などにわけて何度も投稿すると良いでしょう。

2.レビューの紹介
書名などでサーチをかけると、レビュー投稿などを発見するかと思います。
お礼も兼ねてぜひシェアをしましょう。また、レビューいただけ方には、
感謝の気持ちを伝えることはマストです。

知り合いからの声なども有効活用しましょう。
「○○の部分がおもしろかった」
「○○がいいと思った」
「○○は他にない観店だった」
などのコメントをいただけたら、自身のSNSでシェアをしましょう。気になる方はそのレビューをみて書籍購入を検討してくれるかもしれません。

・書店展開写真
こちらは出版社から許可をとりましょう。書店さんの展開写真はとてもインパクトがあります。本がでたのは喜ばしいこと。自身で盛り上げていきましょう。

4.動画はインパクト大
近年YouTubeやTikTokが躍進しており、動画で情報発信をする人が増えました。また、Instagramにはインスタライブなどの動画投稿機能も備わっています。動画によるアセットをつくることは無料で、簡単になっています。

ただ、そうはいっても手間がかかるもの。

その場合は、コラボができないか打診してみましょう。
知り合いでYouTubeやInstagramチャネルを運用している方がいれば、打診し動画コンテンツを発信しましょう。

その際に、先方のチャンネルの利益になるよう、コンテンツを作りこむのはマストとして、注意するのは、売り込みにならないこと。
あくまで、本のコンテンツを軸とした発信を心がけましょう。

一本でも動画を取れば、書籍名や著者の名前で検索したときに動画のプラットフォームで検索され、人となり、コンテンツ力を見てもらうことができます。また、自身のブログやホームページ、SNSでもシェアできます。
それにより、ユーザーへもより訴求できるでしょう。

※頑張る経営者チャンネルと三田のコラボ

※三田のアカウントでインスタライブ。xで情報発信を盛んに行っているユーザーを呼んでコラボ

以上、著者が出版マーケティングでできることをお伝えしました。

出版社がやることは?


「では出版社はなにをやるのですか?」
よく聞かれるのですが、出版社がやることは、「アーリーマジョリティ」以降に向けた施策なのではないかと思います。


アーリーマジョリティ以降は実績などの信頼感が大切

たとえば、Amazonや楽天などに施策を実施し、ECサイトでバナーを出したり、SNS広告などを出稿し、興味関心のある顧客ターゲットに向けて情報発信したり、書店での展開強化を行い、より読者に訴求できるようにします。

しかし、これらはまず、イノベーターやアーリーマジョリティが反応しているかどうかが指標になります。いわゆる初速というもの。
これがしっかりでていて、「この先もマーケティングを行いより反響をうむことができるか」を出版社はあらゆる指標をみて分析しています。

なので、まず初速がでないことには検討もできないといった状況になってしまいます。そのためにできるのは顧客を知っている著者が顧客に近いクラスターにアプローチをすること。


まとめると


・著者はまず、フォロワー・顧客にむけて情報発信
・1回ではなく、何度も訴求をかえて発信
・1つだけでなく、さまざまなSNSツールを使って発信
・1本しっかりとした記事をつくり、それをclaudeでマルチユース
・動画をつくる。できなければ、コラボできないか打診
・売り込みはダメ! どんな内容で誰向けかを発信

これらを本を出したら2週間以内にがっつりやりこみましょう。