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棚田とは

棚田とは、山間部などの傾斜したところに造られた段々に連なる水田である。学術的な定義としては、農林水産省が1988年に実施した「水田要整備量調査」で傾斜20分の1(水平に20m進むたびに1m高くなっていく)以上の土地にある水田を棚田としたものが用いられる。

傾斜地で稲を育てるための水田を造るためには、水を溜める必要がある。水を溜めるためには、土地に畦畔(けいはん)をつけてお皿状にし、水を張ってもこぼれないように水平にしなければならない。そのため自然と棚状の水田が何段も配置されたような状態になる。なお畦畔とは、水田を区切るあぜのことで、水田間に高低差がある場合には、畦畔も自然と高くなる。石を積み上げた石垣を作ることが出来れば垂直な畦畔となるが、材料となる石が少ない土地では、法面(のりめん)と呼ばれる斜面によって造られる。石造りの畦畔を石積み、土作りの畦畔を土坡という。その土地の傾斜度や周囲の地形、土壌などの状態によって畦畔の形状は違ってくるので、棚の大きさも形状もばらばらになる。能登の千枚田として有名な石川県輪島市白米の棚田は、海に面した急傾斜地に7995枚もの水田がかつて造られた(田村ら,2003)。土坡の畦畔で造られた水田の大きさはまちまちで、傾斜の緩急によって変わるが、ほとんどは0.09a(8.4平方メートル)と非常に狭い。

一般に土坡の畦畔は、傾斜を急にすると崩壊する危険性が高まるため、緩やかな勾配で作られる。しかし、勾配を緩やかにするとそれだけ多くの土地が必要となり、耕作のための土地が狭くなってしまう。こうした畦畔によって耕作できなくなってしまう部分の土地を「潰れ地」という。土坡の畦畔では、潰れ地をできるだけ狭くしたいが、そのためには斜面を急にしなければならず、そうすると崩壊の危険性が高まるというジレンマをもつ。それにくらべて石積み畦畔は、文字通り石を積み上げて造る畦畔なので、垂直に近い勾配を造ることができ、潰れ地を小さくすることができる。だから石積み畦畔は先のジレンマを解消できる方式ともいえるが、これを実現するためには多くの石が必要となる。くわえて、石を崩落させることなく、しっかりと積み上げるための技術も必要とされる。材料の石がたくさんあってなおかつ技術を持つ者がいる場合に、石積み畦畔を造ることができる。九州には石積みの棚田が比較的多く存在する。 

土坡であっても石積みであっても、地形や傾斜に応じて畦畔を造る必要があるため、形も大きさもまちまちの水田群が形成されることは共通している。

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