クラウドファンディング「スラム街の暮らしを肌で感じたい!」プロジェクトについて

深夜、ツイッターのTLに流れてきた引用RTで、とあるクラウドファンディングのプロジェクトを知った。

そのクラウドファンディングは、“フィリピンのマニラにあるスラム街に、ごく普通の大学生3人が潜入して、『学生がスラム街の子供達に夢を与えたい!』というプロジェクトをドキュメンタリー映像に残す”ため25万円の資金を募る内容だった。

海外のスラム街の生活を肌で感じるために他人のカネをアテにするという考えのなさ、「フィリピンのマニラ」という特定の地名をあげて「スラム街」を連呼するデリカシーのなさ、そして夢や正しいことの前には無知も肯定されるはずと信じている浅はかさは、引用RTのアカ主の「傲慢で無神経で甘ったれたプロジェクト」という指摘通りだと思う。

ちなみに、このプロジェクトの掲載元であるクラウドファンディング大手の「CAMPFIRE」で「マニラ」と検索してみたら終了したものも含めて24件のプロジェクトがあった。つまり彼らの活動はオリジナリティさえないのである。また、「スラム」で検索すると68件のプロジェクトがヒットした。

ツイッターでのバズリ方(この記事を書いている7月4日4時現在で6800以上のRT数、7100以上のいいね数がついている)やクラファンのコメントからも、彼らのプロジェクトが世間から迎えられていないことがわかる。

たしかに彼らは考えが足りず、デリカシーがなく、無知で幼稚だが、ぼくには実名と顔画像をあげている学生を叩く趣味はないし、そんな権利もないと思っている。

ぼくが彼らのプロジェクトに惹かれるのは、2013年公開の映画『グリーン・インフェルノ』(イーライ・ロス監督)で食人族に食われる学生たちとそっくりのノリだからだ。

映画『グリーン・インフェルノ』予告

〜映画『グリーン・インフェルノ』あらすじ〜
大学生ジャスティンは、環境保護を訴える慈善活動団体「ACT」メンバーと共にペルーの森林伐採を止め、少数民族ヤハ族を救うため現地へ赴く。彼らがスマホのカメラで生中継した、工事中のブルドーザーに鎖で自ら体を巻き付けるといった過激な抗議活動の動画は世間の反響を呼び、大きな成果を得て帰路につくことに。しかし、エンジントラブルにより乗っているセスナ機が墜落。窮地で命を拾ったジャスティンらACTメンバーが森の中で出会ったのは、彼らが救おうとしていたヤハ族だった。彼らには食人の習慣があった…。

『グリーン・インフェルノ』のACTメンバーは数年前から海外のネットを中心に話題になっている“ソーシャル・ジャスティス・ウォーリア”がモデルになっている。日本だと“意識高い系”が近いだろうか。

イーライ・ロス監督が「ネットの安全圏で手軽な正義感を振りかざすソーシャル・ジャスティス・ウォーリアなんか食人族に食われてしまえ!」という気持ちで『グリーン・インフェルノ』をつくったように、あの3人組のプロジェクトとそれへの世間の声、ついでにいうとクラウドファンディングの潮流はぼくに妄想を与えてくれる素材だった。

それでは、ぼくがクラファンのプロジェクトから喚起されたストーリーがこちらである。
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映画は3人が“社長”と呼ばれる人物に会うところから始まる。
社長は、夢を持つこと、誰かのために仕事をすることのを大切さを語る。そしてそのために「海外の貧しい国に行くこと」をすすめる。
社長の言葉に感銘を受けた3人はクラウドファンディングのページを立ち上げる。
フィリピンのマニラに行く旅費を募るためだ。
マニラではスラム街を訪れ、そこに住む子どもたちと触れ合いながら彼らにも夢を与えたい、そしてその様子をカメラに残して映像ドキュメントをつくりたい。
熱っぽい文章でプロジェクトを語るページは各所で炎上しながらもそれが逆に功を奏したのか、目標金額25万円を達成。
晴れて3人は夏休みにフィリピンに向かう。


1年後。3人組に助言したことなどすっかり忘れていた社長の元に、海外から段ボール箱の荷物が届く。送り主はフィリピン警察からだ。中にはビデオカメラ。
社長はカメラに残されていた映像を再生してみる。
3人がフィリピンに到着するところから始まる。スラム街の子どもたちと日本から持ってきた折り紙やおはじき、めんこなどで遊んでいるシーンが申し訳程度にあるが、ほとんどは夜の歓楽街でハイテンションになって興じる場面である。
旅行最終日。メンバーの一人が観光案内にも載っていないマニラでも最もいかがわしいと噂の秘密イベントの情報を仕入れる。さっそく外出の用意を始める3人。
突如場面が暗転。そこには3人がホテルの一室らしき場所でスラム街の住人に拷問されている映像が記録されていた…。
<完>

目標金額は映画の製作費3千万です!
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