
64歳 ファミコンからVRへ、そして
最近の子どもの遊びと言えば、画面を見ながら操作するゲームが圧倒的な人気だ。以前カードゲームというのがあったが、今も続いているのだろうか。
ファミコンのスーパーマリオブラザーズが発売されたころ、私はすでに結婚していて20代後半になっていた。
ある年の暮れに、義姉一家がスキー旅行に行くのでファミコンをやらないから好きに遊んで、と言ってゲーム機を我が家に持って来た。どんなゲームかワクワクした。
年末の仕事も一段落したので、ゲームをやってみることにした。とはいっても遊び方はわからず、適当にボタンを押しているうちに始まった。
何をどうすればいいのか全く分からないまま、とりあえずマリオを右へ右へと進ませた。そのうち、下に落ちたりカメに当たって飛ばされたりして、そのたびに最初からやり直すというシステムはすぐに分かった。画面の中のマリオが自分の指先の操作で飛んだりしゃがんだりして、次から次へとやってくる敵をかわしながら進む面白さを知った。
指でボタンを操作するだけだから、ちょっとのタイミングのズレで敵にやられてしまうのは実に悔しかった。夫も私もすっかりそのゲームにはまって、何度も何度も最初からチャレンジした。ファミコンは一時停止ができず、落ちるとすべて最初からやり直しだった。
12月30日からゲームの電源を切ることもないまま元旦を迎え、夫と交代で仮眠を取りながら続けた。そのうち、私の両方の親指に大きな水ぶくれができた。ゲームのやりすぎでマメができたのだ。ハサミでマメをつぶし、テープを貼ってゲームを再開した。もう完璧な依存症だ。姉一家が帰るまでに少しでも先に進めたくて必死だった。
あるところまで攻略できても、その先はさらに難しくなるから、結局、3日たってもピーチ姫には会えなかった。もういい加減にやめたいと思った頃、ちょうどタイムアウトとなり、私たちのお正月も終わった。
その後、子供が2人できたがテレビゲームは買わなかった。あんなに楽しくて夢中になってしまうものが家にあったら何もできないからだ。私たちは身を持って知っていたので、絶対に買わないと決めた。子供のためではない、私たち大人のためにだ。
その後、ゲームの攻略本が販売されたが、あんなものを見てゲームをして何が楽しいのかと思ってしまう。何もわからないから楽しいのではないか。私に言わせれば、もったいない遊び方だ。
今はネットでもいろいろなゲームができるようだが、みんなどうやって自分をコントロールしているのだろう。想像しただけでストレスがたまりそうだ。ゲームより楽しいことに出会わない限り、いつまでも続くだろう。
コロナになる少し前、ユーチューブでVRについての動画を見た。私は運動不足になっている現状をどうにかしたくてⅤRカメラを一週間借りてみた。その頃はまだ発売したばかりで値段も高いということもあり、お試しのレンタルがあった。酔ってしまう人もいるようだったが私は何ともなかった。無料のデモもいくつもあり、視界に広がる別の世界に自分がいるようで本当に不思議な感覚だ。
スポーツ系のものをやってみると5分もしないうちに汗びっしょりになった。3畳ほどの畳の上でただメガネをかけて体を動かしているだけなのに爽快感があった。汗の量と体重はあまり関係ないと思うが、かなり運動した錯覚になる。
その後、新品のVRを買い、いくつかゲームも買った。充電の関係で長くても2時間までしか続けてプレイできないのは、ちょうどいい。仮想空間に長くいると現実に戻れなくなってしまう。
私が買ったゲームはボクシングや卓球など体育系のものが多く、シューティングゲームなどは興味がない。私のお気に入りは前から飛んでくるボールを力いっぱいパンチするという単純なもの。力の入れ方で音とポイントが変わるので、さらに力が入り2分もやると汗びっしょりになる。
あれから5年がたち、VRも次々と新しいものに変わってきた。私が買った機種で今も遊ぶことは出来るが、もうアップデートはされなくなってしまった。まあ、電源が入るうちは使い続けたい。
ファミコンからネットゲーム、そしてVRへと、おもちゃの進化には驚くが、やっぱり誰かと対面して場と時間を共有したい。
ネットでは年末に向けて、懐かしいボードゲームが売られている。ワイワイガヤガヤしながらやった、或いは、やってみたかったボードゲームで好きな人と楽しい時間を過ごすのだろう。
その様子を想像しただけで穏やかな気持ちになる。