見出し画像

志樹逸馬 春

ものの芽の均しく
天を指さす季節が来た
人間だけが
暗いくらいと
地上を右往左往していた
志樹逸馬詩集「春」


わたしは春が近づくと志樹さんのこの詩を心の中にそっと収めます。
植物たちと季節との関わり、そして人間の存在。
彼らは生き生きと瑞々しく空に光に向かって指をさす。
けれども人間は暗いくらいと下を向いて右往左往する。

わたしたちの人生はいつも慌ただしく、季節を通り過ぎていくだけのように思えます。地上に這いつくばり目の前の問題の処理に追われて、同時に時間に追われていきます。多くの問題を抱え、暗いくらいと右往左往するばかりです。

この詩を心に収めると大きなことに気が付きます。
いつも歩く道沿いに立つ木の芽が、下を向くわたしに「あの空を見よ、あの光を見よ」と指をさしているのです。
その指の先には、春の気配を纏った青々とした空が両手を広げて待っていたのです。

この時代に迷い悲しむわたしたちに志樹さんは上を向く美しさを見せてくれます。春の始まりの美しさを天を指さし教えてくれているのだと。

よい一日を。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?