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先生たちのあだ名 #名前の由来

私の高校時代を振り返ってみると、それはそれは色んなあだ名の先生がいました。たかがあだ名、されどあだ名。高校生のフレッシュな感性から生み出されるあだ名は、まさにオーダーメイドとでもいうべきもので、先生方ひとりひとりの個性を見事に捉えていました。あだ名だけ見るととんでもない高校のように思われるかもしれませんが、もちろんそれは尊敬と親愛の意を込めてつけられたあだ名だということを、先におことわりしておきます。あしからず。

①数学教師、アルちゃん

アル中ではないです。数学教師ことY先生は、肌が白く、おまけに背が高くて細長い先生でした。髪は短くて、ちょっと天然パーマ。普段の発言もどこかミステリアスで、ゆるーい雰囲気をまとった先生は、その様子がアルパカに似ているという理由から「アルパカ(アルちゃん)」と呼ばれていました。高校生の頃は「やべっ、アルパカの宿題やってないや」なんて会話がよく交わされていたものです。ちなみに私が卒業してから異動されたそうですが、次の学校では「もやし」という名がついたらしいと風の噂で聞きました。

②体育教師、若様

W先生はもうすぐ定年というお年でありながらがっちりとたくましく、体も心も大きな先生でした。笑うときは「わっはっは」と大きく口を開けて笑い、自校体操の音楽をかけるときはちょっとすまして「ミュージック、スタァート」と号令をかけ、塩沢さんという生徒にソルトというあだ名をつけるなど自由奔放だった先生は、「若様」と呼ばれていました。生徒にとても慕われていた先生で、「若様ぁぁぁぁぁ」と言うと、「おうおうどうした」と本物の若様さながらの対応をしてくれました。

③生物教師、ミトコン

生物教師K先生は時間に厳しい先生で、生徒の雑談がうるさいせいで授業開始が5分遅れると、休み時間を削ってでもきっかり5分授業を延長するような先生でした(次の時間が移動教室なのに延長された時にはヤキモキしたものです)。そんな先生は生物好きが高じて(?)ちょっと不思議な面も持ち合わせていて、「疲れた時に、放課後の理科室で葉緑体が細胞壁をつたっていくのを眺めながらコーヒーを飲むと本当に落ち着くのよ〜〜〜」と言っていました。中でもお気に入りはミトコンドリアで、ミトコンドリアが人間の体内でいかに素晴らしい働きをするのかを、それはそれは熱く語っていたのをよく覚えています。いつもは厳しい先生が推しについて熱く語る姿は生徒たちの心を打ったのか、いつしか「ミトコンドリア先生」と呼ばれるようになりました。

④世界史教師、教授

私が教授ことI先生の授業を受けていたのは、高校1年生の時です。整えられていないモサモサした髪の毛、手塚治虫の自画像のようなちょっと大きな赤い鼻、丸メガネ。当時の私たちに「教授はそんな見た目の人ばかりじゃないぞ」と言ってあげたいですが、高校生の狭い世界ではあれが「教授」のイメージだったのでしょう。教授の授業は、授業というよりも「僕が大好きな世界史をみんなにおしゃべりしに来ました」という感じで、50分間ずっと喋りっぱなしでした。生徒と積極的に関わろうという感じはなく、ただただ好きをぶちまけてるような、そんな感じ。黒板いっぱいに板書を取り、スペースが無くなったら僅かなスペースを見つけてまあ書き足す、書き足す。1コマ終わる頃には黒板が文字だらけになっていました。ノートを取るのはとても大変だったけれど、世界史が大好きなことが伝わってきて、教授の授業はいつもとても楽しい時間でした。

⑤英語教師、キャシー

名前の由来の話をしてきたというのに、とうとう由来を思い出せない先生が登場しました。英語のF先生は、気づいた時にはもうキャシーでした。一説には、口腔断面の模型を使ってthの発音をレクチャーする時にキャシー、キャシーと連呼したとのことですが、真相は定かではありません。男性の先生でしたが、親しみを込めてキャシーと呼ばれていました。

学校と家しか知らなかったあの頃、学校と家以外の世界に踏み出すための知識と勇気をくれたのは、アルパカであり、若様であり、ミトコンであり、教授であり、キャシーでした。また、キャッチーなあだ名はないけれど大好きな先生たちもたくさんいます。高校を卒業したのはもう何年も前のことだけど、先生たちと過ごした日々は今でも大切な宝物です。

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