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糖質についての本を読んだら突っ込みどころがありすぎた件

有名な本で読みたいと思っていた本をよんだのですが、イマイチでした…。普通にレビューしようと思ったのですが批判ばかりになりそうだったのであえて名前はふせます笑
その本の怪しいところを突きつつ、正しい知識をつけつつ、情報リテラシーない人をどうやって騙してくるかの教訓にしようという記事です。批判的読書というやつの入門だと思ってください。では、よろしくお願いします。

まず本文を読む前に


大事なのはその本の著者が何をしている人か、です。
インフルエンサー?
評論家?
コメンテーター?
記者?
研究者?……などなど。

この本の場合は…
AGE(糖質に関わる物質)を研究していたことがある。
糖尿病専門医でクリニック経営している。

です。
なるほど。
糖尿病の専門医だが、クリニックの宣伝なのかな?ということを意識の片隅に置いて読まないといけないですね。
私は天邪鬼なのでこういうことをよくします。かっこよく言うと批判的思考というやつです。

さて、この本の要点をあげるとこうなりました。

  • 糖質を過剰に摂るとAGEs発生、免疫力低下、糖尿病、糖尿病性腎症などを招く。

  • 日本食は健康にいいと思われているが、塩分・糖質を多く含んでいるためそれは間違いだ。

  • プロテインは飲むべきではない。

  • ワイン、蒸留酒を適度に飲んだ方がいい。

  • 食品添加物を含まない食品を選ぶべし。

それぞれ突っ込んでいくことにします。よろしくお願いします。

プロテインは飲むべきではない

曰く、人口的に精製されたタンパク質なので大量摂取しやすく、そうすると腎臓に負担がかかるからとのこと。
ただし、食品からであればいくらでも食べていい、食べれる限界があるため過剰摂取にはならないと主張。

人口的なものにそもそも忌避しているのかな?というなんとなくの主張を感じ取れますね。
私もプロテインを飲みますが、一日の摂取量を守って飲んでいますよ。摂取量を守れないならどんなものでも毒になりえますね。

食品添加物を含まない食品を選ぶべし


主張を詳しく解説しますと…

防腐剤は「食品の寿命を科学物質で強引に引き伸ばしている」

不自然なものはとらないほうがいい。

加工肉は摂らない方がいい。なぜならWHOによって発がん性があると発表されているからだ。
という感じでしょうか。

また、きれいなピンクの加工肉は亜硝酸などが入っている。入ってないものは茶色く敬遠されがちだが、そちらは安全である。

と、図で解説されていました。

これをみられて、どう思われますか?

やはり、人工的なものではなくて自然由来のものを食べた方がいいんだな、と思われるのではないでしょうか?なんだか主張が偏っていますね。私の中ではもう黄色信号です。


国立研究開発法人国立がん研究センターによれば

IARC主催の10か国、22人の専門家による会議での評価では、加工肉について「人に対して発がん性がある」と、主に大腸がんに対する疫学研究の十分な証拠に基づいて判定されました。
赤肉については疫学研究からの証拠は限定的ながら、メカニズムを裏付ける相応の証拠があることから、「おそらく人に対して発がん性がある」と判定しています。

また
「すでに2007年に世界がん研究基金(WCRF)と米国がん研究協会(AICR)による評価報告書で、赤肉、加工肉の摂取は大腸がんのリスクを上げることが「確実」と判定されて」います。

このように調べると自然のものは大丈夫で、加工したものは駄目という簡単なものではなないとわかります。

しかし、この本では赤肉のリスクについては言及されていません。加工してあるものは安全ではない、加工してないものは安全である、と偏見を植え付けています。
知らなかったのか、知っててわざとそうしたのか定かではないですがね。

もちろん、このような発がん性の分類に当てはまったからその悪影響が同じか、というとそういうわけではありません。話がそれてしまうのでここではその説明はしませんが気になる方は調べてみてください。

食品添加物について


ワイン、蒸留酒を適度に飲んだ方がいい。

この本では糖尿病患者を対象にした試験を紹介。
夕食時にワインを、もう一方にノンアルコール飲料を飲んでもらうことで翌朝の空腹時血糖が下がったというもの。
従って、みんなお酒を飲んだ方がいい。飲むならビールや日本酒紹興酒は糖質を多く含む為飲むならワインや焼酎やウイスキーにしましょう。
だそうです。

う〜ん、かなりひどいですね。もう赤信号です。
データをそれっぽく引用して話しているだけですね。おかしいところ気づきましたか?



では突っ込んでいきましょう。

紹介していた論文は雑誌名やvolやページ数が記載されていたので実際の論文を読んでみました。PDF をここに貼ってもいいんですが、興味がある人は検索して読んでみてください。→「Diabetes care, 2007-12-01, Vol.30 (12), p.3011-3016」

すると次のことがわかりました。
「試験が行われた医療施設のスタッフも被験者も、介入(アルコールと糖尿病の比較)に対して盲検化することができなかった。」
まぁ匂いとかでわかりますよね。つまり、プラセボ効果などは無視できない訳です。

「適度なアルコール摂取は、空腹時血糖値を有意に低下させるが、食後血糖値は低下させないことを示した。」効果は限定的であるわけですね。本書では全くそのことには触れていません。

そして一番大事なことですが、この試験は糖尿病患者で禁酒している中年の人に対して行われました。
これを拡大解釈してまるでみんなお酒を飲んだ方が健康になれるようにうたうのは明らかな間違いです。

またこの論文の著者らは
「2型糖尿病患者の場合、3ヵ月以内にアルコールに起因する代謝の変化をすべて把握することはできないためより長期の介入試験が必要である。」とこの論文を締めくくっています。
すなわちアルコールお酒を飲むことが糖尿病に良いと結論はまだ出ていないのです。

さらに2022年のアメリカ心臓協会(AHA)の現在飲酒している約31万2千人を対象にした調査で、食事と一緒に適量のアルコール(女性は1日14g以下、男性は1日28g以下)、特にワインを摂取することが、2型糖尿病の発症リスク低下と関連することが示唆されました。しかし、AHAとアメリカ疾病対策予防センター(CDC)は、この結果はお酒を飲まない人がお酒を飲み始める理由にはならないと注意を促しています。

つまり、お酒をいつも飲んでいる人は適量にすることで糖尿病発症のリスクが下がるという結果なわけです。こういうと当たり前のように聞こえますね。

さらに私がひどいと思ったのは食品添加物については発がん性を主張しているのにアルコールの発がん性については触れていないことです。

国立研究開発法人国立がん研究センターによれば、要因が疾病に与えるインパクトを算出する疾病負担研究プロジェクトでは喫煙に起因する全世界のがん死亡は年間100万であったのに対し、アルコールは60万、大気汚染は20万、加工肉では3万4千人であったことが示されています。
つまりこの数字だけ見たら注意を促している加工肉よりアルコールの方が発がんのインパクトが大きいことを示しています。
なんと言うか、健康にしたいと思って執筆しているのか疑ってしまいます。

なぜこのようなことが行われるのかという邪推

糖尿病の患者や健康になりたい人というのは節制することが当たり前と教育されます。

すなわち、アルコールを飲んでもいい、お肉は食べてもいい、と甘いことを言ってくれる医師や医療機関を頼りたいと思ってしまうのです。
誰だって自分に耳障りのいいことを言う人のことを信じたくなるバイアスがあります。つまり、自身のクリニックの宣伝であると言われても否定できないでしょう。


本当にあなたの健康を心配しているかどうかをよく考えてみてほしいですね。
このようなことはさまざまな分野で行われていますが、今回はある本を取り上げて話をしてみました。
なんだか偉そうな人だから言ってることは正しいと思ってしまいがちだが、自分の頭で情報を集めて考えて結論を出すのが大事ですよ。
なんたって、自分の健康ですからね。

ではまた。

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