龍池と長池
現在の「京都国際マンガミュージアム」は、明治2年に創設された龍池小学校の跡地を再利用している。
そこに至るまで、閉館した小学校の再利用を京都市が考え出していた頃のことだった。「芸術祭典・京」という文化事業の中で「小鳥は大空を想像する」というとてもロマンチックなお題の展覧会が企画、制作された。
手元にカタログを出してみる。1995年5月11日から17日までが公開制作で、18日から31までが展覧会期間だった。
私は、二つの教室を使った。そしてそれぞれの黒板を緑から赤に変えて、縦書きで文字を施した。一つの教室には、龍池小学校の校歌。もう一つの教室には、私の卒業した昭和3年創設の長池小学校の校歌。池でつながった二つの小学校の校舎には、京都であろうと、大阪であろうと近しい空気が流れていた。「龍と長」も私には「龍紋の長服」に思える。そんな厳かな気分など蹴散らして、小学校は明確な社会規則の始まりと子供の野生が争い、高い声がこだまする庭だ。
作品化した展示資料の発見をきっかけに、それぞれの校歌をここに記しておこうと思う。口籠もりながら、意味もはっきりわからない入学生が歌う歌詞は、今となっては古い日本語だ。しかし、両校の歌詞が表すものはほとんど同じで、どちらの歌詞であってもおかしくない。小さき子らへの願いは、等しく平らだから。
1 たついけの こらは たついけの こらは
こらは のびゆく
あたらしい いのちの
いのちの はなよ
せんねんの みやこの つちに
あすの ひの ゆめの なないろ
2 たついけの こらは たついけの こらは
こらは のびゆく
おおぞらの ひかりを
ひかりを うけて
こころには ひの あたたかさ
はてしらぬ ちえの みのりよ
3 たついけの こらは たついけの こらは
こらは のびゆく
むすぶてに ちからを
ちからを こめて
よろこびの うたを うたえば
かえりくる せかいの こだま
ああ たついけの こらは
たついけの こらは のびゆく
1 そらおおう けむりにとおく
さくらさく いけのほとりに
そびえたつ われらのこうしゃ
ああながいけに
ひかりあふれる ひかりあふれる
2 あさをよぶ ぶんかのひかり
てりはえる にほんのそらに
あおぎみる われらのりそう
ああながいけに
ちからあふれる ちからあふれる
3 きよらかな まつのふちどる
こうしょうの ほこりもたかく
はげみあう われらのつとめ
ああながいけに
きぼうあふれる きぼうあふれる
©松井智惠 2022年11月3日筆
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