2019年9月の記事一覧
月の砂漠のかぐや姫 第63話
盗賊に襲われてから数日の間、交易隊には大きな問題は生じず、羽磋たちは、ただ黙々とゴビを歩き続けていました。月の民の者は、辛い仕事や単純な作業に当たるときは、精霊に捧げる唄を歌いながら行うことが多いのですが、ゴビを歩く際には、唄を歌いながら歩くわけにはいきませんでした。
その理由は「喉が渇くから」でした。
これは、単純なことではありますが、同時に、命にもかかわる深刻な問題でもありました。水の補
月の砂漠のかぐや姫 第62話
「そうか、俺は人を殺そうとしていたのか・・・・・・」
羽磋は、自分の右手をじっと見つめました。自分がそのようなことをするだなんて、これまで、想像したこともありませんでした。でも、それは事実ですし、また、ひょっとしたら、今後も有り得ることなのかもしれないのでした。
「いいか、羽磋。俺はお前を気に入った。だから、前もって言っておく。俺は、交易隊の護衛なんかしているせいで、色んな危ない場面にあって