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【マガジン】月の砂漠のかぐや姫

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今ではなく、人と精霊が身近であった時代。ここではなく、ゴビの赤土と砂漠の白砂が広がる場所。中国の祁連山脈の北側、後代に河西回廊と呼ばれる場所を舞台として、謎の遊牧民族「月の民」の… もっと読む
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2019年2月の記事一覧

月の砂漠のかぐや姫 第16話

月の砂漠のかぐや姫 第16話

 羽も、これほどの大きな砂嵐は経験したことがありませんでした。ただ、遊牧経験の豊富な父から、砂漠で遭遇するかもしれない大きな危険の一つとして「ハブブ」と呼ばれる大砂嵐のことは聞いていました。ハブブの規模、風の強さ、巻き上げる砂の量は、通常の砂嵐とは比較することのできないほど大きなものだといいます。そして、なにより、恐ろしいのは‥‥‥。

「竜巻だ」
「竜巻? あの、壁みたいなのが竜巻なの?」

 

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月の砂漠のかぐや姫 第15話

月の砂漠のかぐや姫 第15話

 グウエエエエ・・・・・・。
 ギェ、グウウウウゥエ‥‥‥。

 何やら暖かな世界に浸っていた二人でしたが、駱駝が不安げに鳴く声で、急に現実に引き戻されました。

「なんだろう、羽。駱駝たちが不安そうにしてるよ」

 先ほどまで、アカシアの茂みの脇で、ときおり葉を噛みちぎりながら大人しくしていた駱駝が、今は、前足に結わえられた紐が邪魔で仕方がないとでも言うかのように、鳴きながらしきりに身体を動かし

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月の砂漠のかぐや姫 第14話

月の砂漠のかぐや姫 第14話

「竹、あのな」

 なんとか、竹姫を励まそうと言葉を探す羽。そんな羽の言葉を、竹姫はおもいきり元気な声でさえぎりました。

「ごめんね! なにか深刻な話しちゃって。みんな人外のわたしにすごく良くしてくれているのにね。わたしね、だから、いろんなところに行って、いろんなことを経験して、いろんなことができるようになりたいんだ。そうして、みんなにお返ししたいの。そう、それだけなの」

 羽には、その竹姫の

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月の砂漠のかぐや姫 第13話

月の砂漠のかぐや姫 第13話

 羽にはそんな竹姫にかける言葉がありませんでした。ただ、彼女を何かしら元気づけてあげたいと思い、話題を変えることにしました。

「そうだ、竹。俺に妹が増える話ってしたっけ」
「え、そうなの。でも有隣(ユウリ)殿は一緒に遊牧に来てるけど、そんな感じじゃないよ」

 竹姫も、ちょっと湿っぽくなってしまったその場の空気を敏感に感じたのか、羽が振ってくれた新しい話題に飛びつきました。羽の母親といえば、竹姫

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月の砂漠のかぐや姫 第12話

月の砂漠のかぐや姫 第12話

「あー疲れたねぇ」

 泣きじゃくっていた竹姫も、しばらくすると気持ちが落ち着いてきました。すると、今まで感じていなかった体の疲れが、どっと押し寄せてきました。それは、これほどの疲れを今まで感じていなかったのが不思議なほどの、もう一歩も歩きたくないとでもいうような疲れでした。

「ああ、俺も疲れたよ、少し休んでから帰ろうぜ」

 竹姫に比べて体力がある羽でしたが、こちらは竹姫と違って駱駝に乗らずに

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月の砂漠のかぐや姫 第11話

月の砂漠のかぐや姫 第11話

「また、進み始めましたね」

 逃げた駱駝を探して、終始砂漠の奥の方に気を配っている竹姫と羽。ずっと離れたところに、その二人をじっと見つめている人影がありました。万が一にも二人に見つからないように、注意深く砂丘の影の中に潜んでいるその人物は、バダインジャランで駱駝を探す竹姫と羽の二人を、ここまでずっと追いかけてきていたのでした。
 その人物は、二人が移動を再開したのに合わせて、傍らに座らせていた駱

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月の砂漠のかぐや姫 第10話

月の砂漠のかぐや姫 第10話

「わたしだけ乗せてもらってごめんね、羽、大丈夫?」

 駱駝の背の上から、竹姫が羽を気遣いました。

「ああ、こっちは大丈夫だから、竹は周りを頼むぜ」

 羽も、その竹姫の気遣いに、優しく答えます。でも、本当は、かなり体力を消耗しているのでした。
 バダインジャラン砂漠に入って、そろそろ一刻が経とうとしていました。
 バダインジャランの柔らかい砂地では、踏み出すたびにギュギュッと足が沈み込み、羽の

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月の砂漠のかぐや姫 第9話

月の砂漠のかぐや姫 第9話

 羽と竹姫は急いで荷物をまとめると、オアシスへ向かって出発しました。竹姫が駱駝に乗り、羽は小走りでその綱を引きます。急かされる駱駝は大きく揺れるので、その背に乗っている竹姫は自分の座っている鞍の端を強く掴み、落ちないように身体を支えているのでした。
 オアシスの近くに到着すると直ぐに、二人は駱駝が逃げたと思われる方向を確認しました。やはり、駱駝はオアシスの対岸に広がる砂漠の奥の方へ入っていったよう

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