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【マガジン】詩

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くにんの「詩」を集めております。
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記事一覧

願い ~小さな叙事詩Ⅱ

願い ~小さな叙事詩Ⅱ

「ずいぶんと風通しが良くなったね」
今年の暮れに北極圏からやって来る冬の使者は そう呟くだろう
交通の要所であるこの街には ずいぶんとたくさんの背高な建物が並んでいて
彼が連れて来る北風が街を通り抜けようとすると いつも邪魔をしていたのだ
ところがどうだ 今年の街は
中心部に林立していた建物で 昨年と変わらないものは一つもない
ほとんどの建物が その肌に大きな穴や崩れを持っている
石灰色の瓦礫でで

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【抒情詩】フラーレンの黒棒

【抒情詩】フラーレンの黒棒

夜空の青暗さを表す言葉がどれだけあったとしても、一夜の空が見せる色彩の豊かさを表現し尽くすことなどできない。
見る者に母なる海を思い出させるその深みの一端でもキミと共有することができたなら、ボクはそれを自分の成し遂げた一大事として記憶し続けるだろう。
それとは対照的なのが、漆黒で塗りつぶされた丘だ。
陽の光を浴びて輝いていた木々の緑葉も、長い時をかけて微生物が有機物を分解して生み出した褐色の腐葉土

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【詩】ここにはいない貴方へ歌う唄

【詩】ここにはいない貴方へ歌う唄

タン タン タタタン
タン タン タタタン

柔らかな紙を束ねたノートに文字が
光るインクで綴られていく
貴方があらわす詩にはいつも
優しい音楽が宿ってる

顔も知らないけれど
声も知らないけれど
貴方がそこに居ることで
僕はいつも救われる

貴方が今日も 笑っていられますように
貴方が今日も お腹いっぱいでありますように
貴方が今日も よく眠れますように
貴方が今日も 幸せでありますように

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【詩】ヨルとヒカリとキミとボクと

【詩】ヨルとヒカリとキミとボクと

高台から見下ろした夜の街は 
月星が輝く夜空を地上に移したかのようだ
綺麗だねと君は無邪気に喜ぶけど
自分が消えてしまうようで僕は怖くなるんだ

光を放つことができるのは 君のような人だ
自分の中に輝きを持つ 恒星のような人だ
輝きを持たない僕が あの街に一人でいたとしても
きっと黒く塗りつぶされた部分のどこかにだろう

純粋で透明だと言われた昔の僕は
今では濁って不透明になったみたいだ
これまで

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【詩】5月の共鳴

【詩】5月の共鳴

梅雨の走りの雨が止み
僕は傘を畳んで家路を急ぐ

一刻も早く黒雲を払いのけようというのか風が騒ぎ
大きく張り出した木々の枝が震える

道には大きな水たまりができていて
靴を濡らしたくない僕は 途方に暮れる

すうっと傍らを通り抜けた風が木の葉から落としたのは
一粒の水滴

ぶわわわ

雲と風が押し合う空を映していた水たまりは
水滴を受け止めた個所を中心に 揺れる 揺れる
それは幾重にも重なる円を描

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【詩】 声は 届いたか

【詩】 声は 届いたか

シンにオソろしいものは
カタチのナいもの
シらないもの
オコってないもの

声は 届いたか

ソレは ヒトのココロをたやすくシハイする
フアンにオカされたヒトは
イトしてイタんだカジツをトりこみ
サすようなニガミのナカに アンシンをモトめる

僕の声は 君に届いたか

ボクは キミをミていた
ミずにはいられなかった
だけれど 
ボクは イタみをオソれた
ソレが オソろしくてシカタがなかった

この

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【詩】コントラディクション

【詩】コントラディクション

死んでしまいたいとは思わないけど

誰ともかかわりたくはない

できる限り世界に触れぬよう

僕が透明な球となったら

君は「朝露のように綺麗だ」と言ってくれるだろうか

【詩】イロトリドリノセカイ

【詩】イロトリドリノセカイ

天使は 私たちの気持ちを理解してくれない

彼らは 人の心を持たないから

悪魔は 容易く私たちの気持ちの中に入り込む

彼らは 人の心から生まれたから

【詩】カレンダー

【詩】カレンダー

新しい年のカレンダーを買ったんだけど
まちがってしまった

いつものとは違う 月曜始まりのカレンダー

まだ壁にかけてはいないけれど
僕の周りの時間は
これまでとは違う色で 流れ始めている

【詩】夜の力

【詩】夜の力

夜に書く詩は 
朝には書けないものです

夜に書く詩は
後では読めないものです

夜は人の心に働きかけます
月は人の心に囁きかけます

少しだけ羽を伸ばしてもいいんだと
少しなら飛んでみてもいいんだよと

それを知っているから 


                

                」

心の雫をこうして文字に表しても
その度にそれを消してしまうのです

いつか
夜風を感じなが

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【詩】 たったそれだけ

【詩】 たったそれだけ

母親が眠る ベットの横で

赤子は 握っていた手を開いた

生まれたときから ずっと握っていた その手を開いた

赤子が開いた 手のひらから

何かが立ちのぼって 空気の中へ溶けていった

暖かいようで 懐かしいような 何かが溶けていった

たった それだけ

たった それだけのこと

たった それだけのことで

何かを掴む自由を 赤子は 手に入れたんだ

【夏の詩】

   葉の裏で 夕立ちを待つ かたつむり

 何事にも「タイミング」というものがございます。この子はそれに恵まれませんでした。
 この子が生まれたときには、すでに兄がおりました。
  「葉の裏で 五月雨を待つ かたつむり」
 兄はワタシのブログ友達のところに投句済でしたが、この子が生まれたときにワタシは思ってしまったのです。「この子の方がカワイイ」と。
 しかし、今更、ワタシに何が出来るというので

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【詩】

夏の香(か)を

キミに伝えんと

メールうつ

恐ろしいことに「題」すらありません。
人様の俳句ブログに軽い気持ちで投稿した本作、完全にnote及び自分のブログでの出番を失っていたところに、どこからともなく祭囃子が・・・・・・。
ヘチマの陰から飛び出した次第でございます。南無南無・・・・・・。

【詩】オトとカタチとキミとボクと

【詩】オトとカタチとキミとボクと

わたしはサメ女だから 肌が鮫肌で哀しい
あの人はそう言って サメザメと泣いた

ワシは日本製なのに 中国製と間違われて困るわい
あの置物はそう言って カラカラと笑った

待たせたね さあ行こうか 
ボクとキミはそう言って 手をつないで歩きだした
我(ワ)と彼(レ)はつながって 我々となった

我々は どこからか現われ
我々は 何者かであり
我々は 何処かへと向かうのだ