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忘却力を高めたい【癒しの里 名張の湯@三重県】(2/2)

 翌日の仕事に向けて、前もって三重県の名張駅に到着した僕は、近くのホテルに向けて歩き始めた。といっても、今回のアポイント先はここから電車でさらに30分ほど離れた場所にあるのだけれど、僕が宿泊先としてこの地を選んだのには理由がある。

 時刻は15時を少しすぎたところ。チェックインを済ませた僕は、荷物を整理してからすぐにホテルを出て、ある場所へと移動を開始した。

「けっこう立派な建物だなぁ」

 そう、今回訪れたのは「癒しの里 名張の湯」だ。これが名張駅に降りた理由である。アポイント先の近くでサウナを検索したところ、たまたまこちらがヒットしたので、それに合わせて近くのホテルを予約していたのだ。少し気になったのは、平日の昼間にも関わらず駐車場がかなり埋まっていたことだ。それほど人気な施設なのだろう。
 だが、館内に入り、下駄箱に靴を預けて受付に向かった僕は、ここである衝撃的な事実を知ることとなる。

「えっ?」

 料金を告げられた僕は、思わずスタッフに聞き返してしまった。なんと、8月1日から6日までの6日間、平日の入浴料が通常850円のところ、オープン10周年記念で390円になっていたのだ。これは幸運にもほどがある。それと同時に、駐車場が埋まっていた理由も察した。
 料金は後払いらしく、バーコード付きのリストバンドを受け取り、僕は2階に上がって脱衣所で準備を済ませると、いよいよ浴場に足を踏み入れた。

「広くてきれいじゃないですか」

(公式サイト: https://www.nabarinoyu.com/spa.php?no=2 )

 手入れが行き届いている浴場には、複数の種類のお風呂のほか、サウナ室と水風呂、そして奥には露天スペースを確認できた。この露天には壺風呂や炭酸泉のほか、天然温泉が注がれている風呂もあるようだ。
 まず身を清めた僕は、軽くお風呂で体を温め、さっそくサウナ室へと向かった。

「おお、広いな! しかもこのストーブは……!」

(公式サイト: https://www.nabarinoyu.com/spa.php?no=2 )

 ゆっくりと扉を開けると、そこには30人弱ほどが座ることができそうな4段のベンチが設けられた空間が広がっていた。室内は比較的薄暗く、そして驚いたことに熱源はイズネスとガス遠赤外線ヒーターの2機体制で、温度計を確認すると85℃を指していた。
 僕は空いている最上段に腰をかけ、テレビの音に耳を傾けながら静かに蒸され始めた。時刻は15時55分。そして、それから数分が経過すると、いよいよその時がやってきた。

「ジャー……」

 イズネス名物のオートロウリュである。名張の湯では、11時から23時までの毎時0分に作動するよう設定されていて、たまたまタイミングよく居合わせることができたのだった。
 イズネスは、その後も複数回にわたってロウリュを発生させ、そのたびに熱波が襲いかかってきた。そしていよいよ限界を迎えたところで、僕はサウナ室を飛び出し、頭から掛け湯を浴びて、水風呂に肩まで浸かった。

ーーこれは良い……。

 水温は僕の好みである20℃の設定でバイブラは無し。大人が5人ほど入れる十分な広さの水風呂で1分間、火照った身体をじっくりと鎮めた僕は、本能の赴くままに露天へと移動し、畳が敷かれた寝転び湯に横たわった。

ーー最高なんですけど。

(公式サイト: https://www.nabarinoyu.com/spa.php?no=2 )

 あまりの気持ち良さに笑いが込み上げてきた。いや、笑いが込み上げるなんてもんじゃない。僕は爆笑していた。頭で考えるよりも先に体が反応していたのだ。ソフトな寝心地、さらに隣との仕切りが設けられていることで周りを気にする必要もなく、自分の世界に集中できる没入感。これはたまらない。僕は立ち上がることができなくなり、その場でしばらく悦びを噛み締めていた。
 その後も僕はサウナと露天を何往復もした。寝転び湯ではなくサンラウンジャーに横たわって青空を見上げたり、途中で1階のレストランに移動して腹ごしらえをしたりして、結局22時過ぎまで滞在することになった。
 そして退館前の最後のセットである。サウナと水風呂で自分を追い込み、そして露天に出て深呼吸をしながら休憩していると、いつしか僕は夏の星空に心を奪われていたのだった。

ーーもう、なんかどうでもよくなってきたなぁ。

 僕は忘却力を高めたい。でも、高めなくてもいいような気もする。その答えは見つからないままだけど、もうそんなことはどうでもいい。僕がグーを担当するのであればチョキとパーを見つければいいし、僕はグーとしての役割を全うすればいいだけなのかもしれない。グー、チョキ、パーが揃えば負けることは無い。そうやって、この社会は成り立っているのだろう。

(written by ナオト:@bocci_naoto)

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