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合理主義とミルフィーユ【綱島源泉湯けむりの庄@綱島駅】(2/2)

 田園調布暑での運転免許更新後、僕は東急東横線に乗り込み、11時半過ぎに綱島駅に到着した。目的地までは無料のシャトルバスが定期運行されているものの、無計画に移動をしてしまったためにタイミングが悪く、次のバス発車時刻までは20分以上あるようだ。

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 そこで目的地の位置情報を調べると、どうやら歩いて20分ほどの場所にあることがわかった。そのくらいであれば、僕にとっては徒歩圏内である。

ーーせっかくなら、歩いて行ってみようか。

 僕はバスを待たずに徒歩で向かうことにした。そして、綱島の街並みを眺めながら鶴見川を越えて、そのままさらに歩いていると、予定通り20分ほどで無事に目的地に辿り着いた。

「久々だな〜」

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 そう、今回訪れたのは「綱島源泉湯けむりの庄(しょう)」だ。実はここに訪れるのは今回で4回目なのだが、いつもシャトルバスを利用していたため、駅から徒歩で移動できるほどの場所にあることを知らなかったのだ。
 おそらく前回伺ってから1年以上は経過していて、久々の往訪に僕の気分は高まっていた。

 「湯けむりの庄」と言えば、忘れてはならないのが今年の2月16日に初めて伺った宮前平店の存在である。綱島店も宮前平店も「高級日帰り温泉施設」と謳ってはいるものの、平日は1,320円というお手頃価格で一日中過ごすことができるスーパー銭湯として人気を集めていて、それぞれ違った良さがある。今日はたっぷりと綱島店の魅力を堪能しようじゃないか。

 僕はさっそく館内に入り、下駄箱に靴を預けて、受付にてロッカーキーと館内着、そしてタオルセットを受け取った。

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(公式サイト: https://www.yukemurinosato.com/tsunashima/firstvisit/

 1階には広々としたエントランスホールがあり、浴場がある2階に向かう途中の階段から眺めると、その広さがよくわかる。1階には、さらに素材にこだわるレストラン「心音」や、コンセントとWi-Fiが利用できるリクライニングチェアが100席以上並べられた休憩処も用意されていて、しかもここには15,000冊以上の漫画も揃えられているので、手ぶらで夜まで贅沢にくつろぎながら過ごすことも可能だ。

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 2階に移動して脱衣所に入り、指定されたロッカーに荷物を預けて準備を済ませると、僕はいよいよ浴場へと足を踏み入れた。

「おぉ〜。やっぱりキレイだし広いな〜!」

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(ニフティ温泉: https://onsen.nifty.com/yokohama-onsen/onsen012186/ )

 浴場は黒を基調とした落ち着いた高級感のあるデザインで、豊富な種類のお風呂が僕を迎えてくれた。しかも、さすがに平日のお昼というだけあって混雑している様子は見られず、むしろガラガラである。
 僕はまず身を清めて、源泉内風呂で体を温めることにした。

「やっぱり、めちゃめちゃ濃いな!」

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(PR TIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000036648.html)

 綱島源泉湯けむりの庄では、僕の大好きな黒湯に入ることができるのだ。その墨汁を思わせる漆黒のお湯は甘みのある独特な香りを発していて、少しぬるっとした手触りが特徴的だ。僕は、このお湯がたまらなく好きなのだ。

「では、行きますか」

 ほどよく体を温められたところで、僕は立ち上がってサウナ室へと向かい、全身の水分をタオルで拭き取ってから、扉を開けて中に入った。

「こんなに広かったっけ!?」

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(公式サイト: https://www.yukemurinosato.com/tsunashima/hotspring/ )

 サウナ室の中は、感染対策のためかサウナマットが間引きされた状態で16人ほど座れるようになっているけれど、物理的にはもっと多くの人数を収容できるほどの広さがある。座面は3段構造で、壁に沿うようにL字型の設計になっていた。その中心には150cm×150cmほどと思われる巨大なサウナストーブが鎮座し、大量のサウナストーンがその上に敷き詰められている。
 そして驚くことに、なんと以前は無かったであろうセルフロウリュの設備が用意されていたのだ。いや、もしかしたら前回伺った時から設置されていたのかもしれないけれど、その当時は今ほどサウナ室の構造や設備に興味を持っておらず、気付かなかった可能性がある。
 僕がサウナ室の中に入った時にはそれなりに湿度が保たれていて、わずかにシトラス系の香りを感じたため、おそらく直前に他のお客さんがロウリュをしてくれたのかもしれない。おかげで室温は92℃だが、体感温度はそれ以上に高い。

 僕は空いているところに腰をかけて、じっくりと蒸されることにした。サウナストーブ越しにテレビが設置されているものの、音声はオフになっていて、その代わりに落ち着いたBGMが室内に流れている。そのテレビ画面をぼーっと眺めながらじっとしていると、6分ほど経った頃には全身から滝汗が流れ出していて、呼吸は荒れ、心臓の鼓動も激しくなっていた。

「そろそろ出よう……」

 僕はゆっくり立ち上がり、サウナ室を出て頭からお湯で汗を流して、水風呂に肩まで沈み込んだ。

「おおおぉぉぉおぉぉお!!!やっぱすげー!!!」

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(PR TIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000036648.html)

 なんと、こちらの水風呂は黒湯の源泉が使用されているのだ。久が原の「COCOFURO ますの湯」しかり、僕が最近よく伺っている麻布十番の「竹の湯」しかり、冷鉱泉である黒湯を源泉そのまま掛け流してくださっている温浴施設さんには頭が下がる。この良質な冷水に火照った体が包まれる感覚がたまらないのだ。
 しかも、水温は11℃と凍えるほどキンキンに冷たく、20秒が限界だった。僕はなんとか立ち上がり、そのままおぼつかない足取りで露天スペースへと移動し、体を温め直すためにすぐ脇にあった炭酸琥珀湯に浸かった。

「はぁ〜……、なんだ、この気持ちよさは……」

 極寒の冷鉱泉によって収縮された全身の血管に、みるみるうちに血が巡っていく感覚がわかる。それだけではなく、炭酸がぴりぴりと肌を刺激し、血流がさらに促され、生きている実感が湧いた。
 そこで体を温め直してから、休憩がてら露天岩風呂に入浴することにしたのだが、僕はこの時、完全に油断していたのである。

ーーこれはやばい……! もう身動きが取れない!!

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(PR TIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000036648.html)

 広々とした湯船には、贅沢に源泉掛け流しの黒湯がたっぷりと満たされていて、不感温よりも少し低めの28℃と絶妙な水温に保たれていた。この温水とも冷水とも言えない不思議な感覚を味わうことができる露天風呂に火照った身体を委ねると、そこには極上の快楽が待っていたのだった。僕の意識は次第に薄れていき、視界は徐々にぼんやりとしてきて、気付いた時には、僕は恍惚とした表情を浮かべていた。

ーーきっと、もっと手軽に快感を得る方法なんて他にいくらでもあるだろう。ただ、やっぱり僕はわざわざ「サウナ/水風呂/休憩」というセットを通して得られる唯一無二の快感が、この時間が、たまらなく好きなんだ……。

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 綱島源泉湯けむりの庄には、先ほど入ったフィンランド式サウナの他に「スチーム塩サウナ」があったり、露天スペースには仰向けで寝転がった状態でお湯に浸かることができる「うたた寝湯」や、一人分の大きさに削られた本御影石の「壺湯(黒湯)」があったりと、自分の好みに合わせた温浴体験ができる設備が整っている。
 僕はそれらをさまざまな組み合わせで堪能したのちに、レストランで麻婆豆腐をいただいたり、休憩処で仕事をしたりして夜まで過ごして、最後に再びサウナを味わってから帰路に就いた。

 サウナによって得られる快感は、合理性とは相反するものかもしれない。ただ、僕はこのような ”わざわざ” をどれだけ経験するかで、人間としての魅力が磨かれていくような気がしている。

(written by ナオト:@bocci_naoto)

YouTube「ボッチトーキョー」
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①僕たちは自費でサウナに伺います ②それでお店の売上が増えます ③noteを通して心を込めてお店を紹介します ④noteを読んだ方がお店に足を運ぶようになります ⑤お店はもっと経済的に潤うようになります ⑥お店のサービスが充実します ⑦お客さんがもっと快適にサウナに通えます