心理的安全性が組織の土台である理由
最近、よく耳にする心理的安全性について再考してみた。
以前の考えのまとめはこちら。今の時代は言葉を交わし続ける場が必要という結論を得た。それをもう一度捉えなおしてみる。
恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす-エイミー・C・エドモンドソン
今回読んだ本は、恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす-エイミー・C・エドモンドソン。HRアワード2021の書籍部門の一冊で、キーワードにも貢献している。
英語だと、The Fearless Organization: Creating Psychological Safety in the Workplace for Learning, Innovation, and Growth。Psychological Safetyが心理的安全性に該当する。
本書は長年チームワークの調査に関わった著者が発見した心理的安全性の話。ここ最近もこの手の論文の増加やデータが示す価値が見え、その土台として心理的安全性が必要なことを紹介。
日本の福島原発の事例は権威的な問題と現場のリーダーシップの弱さを認める強さが印象的で具体的で響く。リフレーミングできる環境が必要で、それがない組織は自然と滅びるのだろうと思わせる。
今の時代がVUCAだとすると不安を感じやすい組織環境は望ましくないと感じた。そう、今はVUCA。この前提から入ることが重要だ。時代が心理的安全性を求めている背景はこの視点から入る必要がある。
VUCA世界は必然的に心理的安全性を前提とする
VUCA(ブーカ)。ビジネス用語になっているが以下の通り。
・V:Volatility(不安定性)
・U:Uncertainty(不確実性)
・C:Complexity(複雑さ)
・A:Ambiguity(曖昧さ)
それぞれの頭文字を繋げた造語。本書P.52でも、この定義で解説。現在直面している組織の利益に直結する問題を解決する方法に心理的安全性が欠かせないとしている。
あった方が良いレベルの話ではなく、心理的安全性は組織のパフォーマンスを左右するレベルで影響があるとしている。つまり、前提だ。それだけ、世界が複雑で予測がつかない状況を表していると言える。
そんな状況は不安でしかない。不安だから、協働において発言を控えたり、失敗をオープンにしない環境ができてしまう。その不安を取り払う役目がリーダーの責務だと本書では訴えていると読み取った。
素直に発言した方がお得だと思える環境
上記引用に続く形で、本当のことを言うことができない環境をデータをもとに憂いている話が登場する。簡単にいうと、沈黙した方がお得だと感じる環境は心理的安全性が低いと言える。
何を言っても変わらない。知識を共有しても活用されない。自分の能力が低いとみられるなら虚勢や隠した方がマシという考え。これが蔓延している組織はパフォーマンスが低下する。これはなんとなく想像ができる。
その環境の良し悪しを形成するのが組織側。沈黙にこそ真の答えが隠れているようだと、この時代を乗り切れない。パフォーマンスも出ないという結果になってしまう。そんな組織構造は避けたい。
そのためには衝突を恐れないことも必要で、相手を信頼・尊敬を込めた上で謙虚な態度で意見をぶつけていく必要もある。
また、リモートワークも心理的安全性が関係するとおもわせる事例に、P.73より、地理的分散・時差の対処・メンバーの入れ替わりという難題においても、チームが対応できるとしている。これも素直さがなせる術だ。
心理的安全性を高める第一歩は失敗を素直に報告すること
第1,2部は心理的安全性が欠けている事例により生じた現象をまとめていて、第3部 フィアレスな組織をつくるで、実現方法を紹介している。
リーダーがわからないとか失敗を認める発言をする「無知な人」になる方法も紹介されているが、注目したい点は、その土台作り。
例えば、私の職場で実践していることととして、失敗から得られる貴重なデータを改善の仕組みづくりにしている。問題が起きたときに人のせいではなくて、もの・ことに分解してその問題が起きやすい状況を改善する。
人が要因だとしても、人間が介在することでミスが起きやすい作業があったりすれば、それは機械や別の仕組みにしてしまうといった代替案だ。これも、構造化およびドキュメント化をして自動化へと向かう。
その話の種には、失敗がたくさんあったり、失敗をたくさん報告したりする環境が求められる。まずはこれをしても恥をかかない。自分が無力だと思われたくないと感じてしまうかどうかが分岐点かもしれない。
この土台作りの時点で、失敗を認め合うことができないのであれば、本書紹介より、感謝することや、完璧でないことを認める促しが必要だろう。相手の話に耳を傾ける・反応する関係が必要だ。失敗は恥ずかしくないと。
マネジメント視点でこの組織づくりとしてみた時には文化がとても大事で、この組織なら素直になって問題ないと思えるまで継続的にフォローする。その土台の上で衝突を健全に促せば成果が自然と出てくるはずだ。
やがてOKRでエンゲージメントで対話
ややストレッチが必要な目標やエンゲージメント確保や対話が必要となるのは、この心理的安全性を前提とした上での話だ。色々組織が試そうとしている組織改善の結末は、データが示している。
最近、OKRだエンゲージメントだ対話だということを調べていた。これは、組織の定着率や成長を促す学習する組織の方法論。ただ、いくらこの視点で頑張ってもうまくいかないことがあるはずだ。
もし、そういう場面に直面したら、まずは心理的安全性を高めるところだなと思えることから始めたい。全てはここからと思えた。うまくいっていることがうまくいかなくなった時も、ここからやり直すのだ。
それができた上で、エンゲージメントを確保して、継続的なフォローができるようサーベイする。
感謝する。伝える。対話する。
そして目標に向かってひた走る。
人は弱い。一人じゃ何もできない。だから、組織でみんなで一人じゃできないことを実現する。その協働の場を支えるのがマネージメントする側の責務だ。みんなが笑顔でいられる職場づくりにこれからも貢献し続けたい。
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