見出し画像

プラットフォーム型サービスにおける提供者獲得のあくなき戦い

プラットフォーム型のサービスにおいてセールスは不要なのか?」という問いについて、先日同じくシェアサービスを運営する企業の皆さん(もはや同志)とディスカッションする機会がありました。

先日書いた記事でも触れてますが、プラットフォーム型シェアサービスをスケールさせるための一つの壁は提供者獲得にあります。利用者は品揃えが無い所ににはやってきません。その提供者獲得において、「セールスは必要なのか?」という点についてはサービス領域によるのかなと思います。

一般社団法人シェアリングエコノミー協会HPより

ざっくり整理すると下記。

サービス提供者の獲得ターゲットが
個人→マーケが主戦場
例)メルカリ(中古品)、ココナラ(スキル)など
法人→マーケとセールス両方
例)akippa(駐車場)、スペースマーケット(スペース)など

上記シェアエコ領域mapの左上、スペースマーケットも属している空間領域になると不動産や店舗がターゲットになり所有者が法人であるケースが多いので恐らくセールス機能が必要になると思います。

私は2016年にスペースマーケットにセールスとして入社し、今はチームマネージャーを務めさせてもらっています。

今、スペースマーケットは約11,000(2019年5月時点)ものスペースが掲載されていますが、それはそれは死闘といっていいほどの苦難の連続でした....!

もっとスマートな道もあったかもしれません。
また、人やカネといったリソースがもっとあればショートカットできることもあったでしょう。
ただ、スタートアップにおいてそんな制約条件は当たり前で、限られたリソースでいかにPDCAを高速回転し施策精度を高めていくか、が大事だと思っています。創業からこれまで細かな施策含めて何百ものトライ&エラーがあり今日に至っています。

ジョジョの奇妙な冒険 
第7部「スティール・ボール・ラン」編より

ということでスペースマーケット創業時から今日に至るまで提供者獲得で取り組んできたことを成功/失敗ふくめて以下に書き記します。

「人脈フル活用&PRでレバレッジ」時代

創業者の重松は元々NTTでキャリアをスタートし、その後写真サービス事業を展開するフォトクリエイトでIPOを経験しスペースマーケットを創業しています。noteも書いてます。

スペースマーケットを思いついたのもフォトクリエイト時代にクライアントだった結婚式場の平日の稼働の低さにビジネスチャンスを見出したことがきっかけ。

まずサービスローンチ前にキャリアにおいて社内外で培った人脈をとにかく辿って結婚式場や古民家、お寺といった掲載スペースを100まで増やし、サービスをスタートさせました。また創業前からセールスに強いメンバーがジョインしていました。当時はphotoshopで作ったデザインモックベースでの紙芝居営業。
サービス認知を高めるため、PRでレバレッジを利かせるべく当時は話題になりそうなユニークスペースの獲得も意図的に行っていました。
その一つがアメリカにある野球場。
サービスの画像にどうしても野球場を使いたいと思い日本の球場にラブコールを送っていたものの大苦戦。その最中にアメリカの球場オーナーが来日するのを知人から聞きつけ、口説きにいったところ、何とその場で許可が!

狙い通り、サービスリリース時のTOPにその画像を使用できることに。

すると見事にこのキャッチーなスペース写真が世の心を掴み、様々なメディアで取り上げられたり、ピッチコンテストで入賞する(こちらはビジネスモデルとしてですが)など多くの話題をさらうことができました。

TechCrunch Japan

Infinity Ventures Summit 2014 Spring Launch Pad にて準優勝した時のピッチ

尚、今もこの球場は借りられます。本当にいつかこの球場で社員総会したい!

この様な形で、人脈とPRの力を上手く使いながら掲載ホストを獲得していきました。

尚、創業時のサービス全体の0→1はスペースマーケットでインターンをしてくれていたメンバーが運営しているメディアが分かりやすくまとめてくれています。


「兎にも角にもアウトバウンド」時代

その後セールス活動を本格化。私もこのフェーズでジョインしました。

冒頭で述べた通り、サービスの利用者(=ゲスト)を増やすためにも提供者(=ホスト)の拡大、スペースの拡大が急務でした。
本来はWEB登録可能なサービスなのですが、当時は殆どインバウンド登録(自発的にWEBで登録してくれるホスト)は無く、アウトバウンドによるセールスにフォーカスしていきました。

セールスチームは私含めて社員6〜8名程度。

目標として据えた掲載スペース数はスタートアップらしくとてつもなくチャレンジングな数。私たちだけでは実現できそうもなく、学生のインターン生を常時10名くらい採用し、彼らの力を借りてセールス活動を展開。

この時期はとにかく掲載スペース数を重要KPIとしていた時代で、数の観点から当初は飲食チェーンやホテルチェーンなど貸し出す余地のあるスペースが数百、数千といった規模の数を所有しているエンタープライズ企業をターゲットにしていました。

ただ、提供者獲得面単体においてもにわたま問題があり、まず上記の様なエンタープライズ企業にアプローチしても大体「何か事例はありますか?」と言われ、なかなか掲載に至らないのです。彼らにとって、空いていて、貸し出せば収益になること間違いなしのスペースがあっても「万が一何かが起きたらどうするのか」の「万が一」のリスクが許容できず、話が先に進まない。
そんなエンタープライズのリードに対して1日100件とかコールし、ロストしまくっていた暗黒時代....
この時代が一番タフだったかもしれません。

今一度方針を見直し

事例をつくる

事例があることで利用する企業が増える

事例が更に増える

増えた事例により利用する企業が更に増える

というポジティブなサイクルを回すためにも、少しターゲットをシフトし、以下の事業体数のピラミッド図でいうMid -Market(中小企業)・SMB(スモールビジネス、個人事業主)にフォーカスすることにしました。
サービスが成長し、フェーズが変わった際にエンタープライズ企業から声がきっとかかる様になるだろうと。実際に今、様々な企業から彼らの遊休不動産活用についてご相談をいただける様になっています。

また、効率的なセールス活動を模索したのもこの時期。

スモールビジネス(個人事業主がオーナーの飲食店やスタジオなど)
インサイドセールス側で電話/メール/ビデオチャットでクロージングまで

Mid-Market(数十の貸し会議室やパーティスペースを運営する企業など)
インサイドセールス+フィールドセールス

といった様に活動の効率化/成果最大化を目指していきました。

この時代に大変だったのはスペースの掲載作業
本来はホストがWEBの管理画面からスペース情報を入力し、掲載できるのですが不動産/店舗という属性上、ITに苦手意識を持つ方が多く「入力しておいてくださいね」といってもなかなか進まない...

私たちは数を背負っているため、それを悠長に待つ訳にも行かず結局その入力作業自体をこちらで巻き取って進めていきました。1スペースの入力所要時間が5-10分だとしても数十、数百ともなると....!まさに苦難の時代でした...
(今は引き受けることはせず、ホストの皆さん自身にお願いしています)

そのほか、この時代は本当に様々な獲得手法にチャレンジしました。

(効果を◯△☓で評価)
・セミナー→当時は△、現在◯
当時は認知が低く、そもそもの集客に苦労していましたが今は認知が上がったことで毎回多くの参加をいただいており、良い手法となっています。

・飛び込み営業→☓
原宿など、ターゲットエリアの飲食店などに飛び込み。認知が低いことで説明コストが高くつき全然掲載に繋がらず。

・チラシのポスティング→☓
住宅などをターゲットに。そもそも「人に自宅貸すなんて怖い」という不安感をチラシ1枚で払拭するのはハードルが高く、無風。

・FAXによるDM→△
未だFAXで商取引するカルチャーが根強く残る飲食店や不動産会社をターゲットにFAXでDM。飲食店からは一定の反響がありました。ただ回を重ねる毎にCPAが悪化していった為、一時期のみで停止。

・展示会出展→△
不動産や民泊といったテーマの展示会に出展。ただ高い出展費用を支払ってどのくらいのホストが獲得できたのか、ちゃんと評価するとROIが合わず。今のフェーズでのLTVを鑑みると再トライはあり得るかもしれません。

・コンベンション・ビューローへの加盟→☓
コンベンション・ビューローとは各地域の自治体や観光産業に従事する民間企業から構成される、海外から国際会議の招致や観光促進をするための組織。企業と繋がりを持ち、大型施設の掲載を行うことが目的でしたが動きが遅く、殆どが形にならず。

・ターゲットの業界団体への加盟→☓
様々な会場ジャンルにアプローチするために、そういった業界が属する業界団体に加盟してセールス活動。例えば、お寺を獲得すべくご住職に出会いに全日本仏教会などに加盟。年会費払うと袈裟をいただくことができ、私は坊主なのでその袈裟を着用して会合に参加させていただいたりしていました。が、全然掲載に繋がらず...

・営業代行のアライアンス→当時☓、現在◯
ぐるなびやrettyがスケールさせるために取っていた営業代行会社との提携という手法を当時から私たちも模索していましたが、当時のサービスレベルではお支払いできるインセンティブ額が営業代行企業の要求水準に見合わず成立せず。
今フェーズが変わり、USEN Mediaさんという非常に心強いパートナーを持つことが出来ています。

などなど

結局、スマートにスケールできるような手法は見出だせず(もっと優秀な方がいれば結果が違ったかもしれませんが)、ひたすらセールスメンバー総勢で地道に粘り強く掲載数を積み上げていきました。
今考えると途方も無い数を良くやったと思います。

この時期が自分的に最も苦難の時代でした。
多分、誰もこの時代に戻りたくないと思っているはずです笑

「セールスの転換期」時代

スペースの掲載数が一定の水準に到達し、その後に優秀なマーケターがジョイン。PRとマーケの連動でメディアに取り上げられる様な話題を創出したり、SEO施策をテコ入れするなどして「レンタルスペース」というカテゴリやスペースマーケットの認知・ユーザー数が伸びていきました。

それに比例して、ホスト側についてもインバウンド流入(自発的にWEBで登録してくれるホストの流入)が増えてきたのです。

ただ、そこに大きな課題がありました。それは

WEBでホスト登録をしてからスペース掲載に到達できる人が全然いない
→CVRが非常に低い

という問題でした。

スペースマーケットの掲載までの流れは下記の通りで、管理画面上でホスト情報を入力し、その次はスペース情報を入力し、審査が通れば晴れて掲載開始となります。

ゲストの多様なニーズに答えられる様、スペースの情報入力の自由度が非常に高い反面、当時は管理画面が複雑で、ホスト全体の年代が高めなこともあって情報入力が完了できないまま離脱してしまっているケースが相当ありました。

折角興味を持って入り口まで来てくれていたのに去ってしまうホスト候補たち...その離脱した方たちと同じ数をアウトバウンドで獲得するのにどれだけの稼働がかかるのかを考えると恐ろしい機会損失でした。

この状況を打開するため、プロダクトと連携して掲載率を改善するプロジェクトが発足。
本プロジェクトで管理画面を大きくリニューアルし、初回登録時に表示させる入力項目をミニマムに削ぎ落とし、一旦登録を終えた後により詳細な設定をする様に登録ステップを2段階に分けました。また100を越えるホストからの改善要望を精査し、リニューアルに取り入れました。

半年間にも及ぶ大規模な開発を経て、リリースして一ヶ月後。
見事に登録から掲載のCVRを大幅に改善させることができました。

そして、ついにインバウンド流入経由での登録ペースがアウトバウンド経由を追い抜くという時が...!
そして、インバウンド経由とアウトバウンド経由のスペースでどちらが利用されやすいか、比較するとインバウンド経由の方が大きく上回るというデータも出てきました。これは自発的に登録してくれるホストの方が掲載後も頑張って運用をしてくれる傾向にあることが主な要因です。(アウトバウンド経由でも人気のスペースはもちろんあります)

そこで、チームのあり方を大きく変更。
アウトバウンドセールスを縮小し、インバウンド登録の最大化に注力する決断をしました。
アウトバウンドを担当する人数を減らし、流入を最大化させるためのホスト向けマーケティング担当、登録後のホストが離脱なく掲載まで到達する様に支援するサポート担当といった役割を新設。アウトバウンドの担当はエンタープライズ(大口ホスト)をターゲットに絞る体制に。

プロダクトの改善+スペース掲載を支援する体制構築により、掲載までのCVRをもう一段高めることができ、着実にスペースを積み上げていった結果、ついにこの日が...!

今、そして今後

今、スペースの掲載数はウォッチしつつも重要視しているKPIは更にその先の指標です。
ざっくりいうと、どれだけ多くのスペースが成約されてその1つ1つのスペースがどれだけの収益を上げられたか?、といったKPIを重要視しています。要はホストにとっての本質的なビジネスゴールを今、私たちも追いかけています

今振り返ってはじめから上記KPIを見ていくことも出来たのではないか、とも思ったんですが、多分この目線では今の様な掲載数にもなっていないし、サービスの伸びも天井が見えていたのでは無いかなと思っています。
やはりそれは提供者、提供数をまず一定の水準まで引き上げることがグロースサイクルの起点であるからかなと思います。

品揃えが豊富であるからこそ利用者が増え、利用が増えてビジネスチャンスを感じるからこそ提供者が増える、といったにわたま問題解消の突破口をどう作るかはサービス属性によると思いますが、スペースマーケットはセールスが起点でした。

利用数が伸びてきたことで、このスペースシェアにビジネスチャンスを見出す方が増え、インバウンド流入が増えるといったポジティブなサイクルが今回っています。

以上、文章を改めて眺めてみると割といい感じにゴールに近づいているみたいな書き方になってますが笑、全然まだまだです。

たかが10,000、されど10,000。
ちなみに、ホットペッパーの掲載店舗数75万だそうです。(2019年2月時点)
でも、ネット予約可能店舗は4.7万。スペースマーケットの1万は全てネット予約可能
スペースシェアリングという前例の無いサービスでここまで来れたことはそんなに悪くはないんじゃないかなという視点と、いやいやまだまだマーケットのポテンシャルに対して一部じゃんという視点両方あるかなと思います。

空き家なんかも日本には1,000万戸以上もあったり、空きスペースだらけ


また、今無いジャンルの品揃え(スペース)を開拓することも今後あり得ますし、その際にターゲット属性によってはアウトバウンドセールスが必要になる場面がまた出てくると思います。

これからも提供者獲得の旅は続きます

下の写真は毎年1度開催しているホストの皆さんとのミートアップ
今ではホストのコミュニティも運営し、ホスト同士の交流を図ったり、様々な勉強会を企画開催しています。本当に色々なホストの方がいて面白いです。

・亡くなったご両親が暮らしていた思い出の古民家を貸し出して1,000件ものレビューがつく大人気ホストとなった方
・自宅をレンタルスペースにして安定的に収益を得ることで海外を飛び回れる様になった方
・レンタルスペース運営代行を事業にする企業
など。

出会った人たちの人生を変えているシェアリングエコノミー。
その本質をいつもホストの皆さんから教わっています。

こんな死闘を経て絶賛成長中のスペースマーケットに興味を持った方は、ぜひ一度気軽に話を来てください。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

スタートアップ/ビジネス開発といった自身の仕事について整理し書いていこうと思っています!ときどき、年間休日の約100日を使い全力投球している子どもとの遊びネタも。

\(^o^)/
20
スタートアップでビジネス開発・推進をしてます。事業フェーズの1→10が主な守備範囲。現在はトレタで新規事業のプロダクトマーケティングを担当中です。趣味はアウトドアと子育てとローカル活動。Twitter→https://twitter.com/shumpeei
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。