ウェブ会議の話し方心得

7.ウェブ会議のマナー

 自分の声が「目に見える形で」保存される時代になりました。あなたがYouTubeやインスタライブ等で発信しなくても、スマホのビデオ通話など、映像を通して自分の話が他人に聞かれる機会は増えています。

 新型コロナウイルスの感染拡大によってバーチャル会議(ウェブ会議やテレビ会議)が瞬く間に普及し、首脳が参加する国際会議もバーチャルで盛んに行われるようになりました。

 新型コロナ禍が、人々の生活習慣を長期的にどこまで変えるかは分かりませんが、この機会に、肉声だけでなく、画面を通してもスマートに違和感なくメッセージを伝えられるようにしたいものです。対面や電話での会話と同じように気楽に構えていると痛い目に合うかも知れません。

 従来、私たちが公共の映像を通じて目にする人の語りは、テレビのニュースであれトーク番組であれ、「プロの話し手」によるものが大半でした。時代は変わっても、私たちはまだ、画面を通して「素人のしゃべり」を長い間聞くことに慣れていないのです。YouTube時代になって、既存のメディアなら編集によって淘汰されていたはずの「無防備なしゃべり」が一気に姿を現しました。聞き手を不快にさせたり、相手に無視されたりしては始まりません。「聞き手は寛容ではない」という前提で、話し方の基本を身につけましょう。

 ウェブ会議では、話の中身や話し方だけでなく見た目にも気を遣う必要があります。話し手の容姿が、思いがけずメッセージの伝達を妨げる「雑情報」となることがあるからです。私たちは、話し手の些細なことが気になり、一旦そこに意識が向いてしまうと話の内容に集中できなくなってしまうのです。

 物理的な制約の多いバーチャルな会議では、対面の会話以上に気をつけるべきことがあります。まず、通常の会議に比べ、ウェブ会議では発言者だけが画面上アップで切り取られ、他の参加者から注目を集めます。しかし、当の本人は、自分の姿がどのように映っているか分からないことも多いのです。さすがに発言中に肘をつく人はいないと思いますが、髪や鼻を触るといった何気ない仕草も目立ちます。自分が話していない時でも気を抜かず、振舞いに注意しましょう。特に、唐突な動作は見ていて不自然に映ります。また、ウェブ会議で発言していると相手の反応が見えにくくなります。相槌が全くない中で話し続けるのは不安なものです。また、不安は早口につながりやすいので、ウェブ会議では特にゆっくり、短めの文章で話すように心がけましょう。

 参加者全員が同じ空間を共有している通常の会議と異なり、ウェブ会議では発言者以外の人が集中力を維持するのは容易ではありません。聞く方もつらいのです。発言者はコンパクトに話すようにし、話が長くなる場合には途中で一旦止めて、他の参加者が質問やコメントを挟めるように配慮しましょう。冒頭に自分の発言の流れやポイントをごく簡単に説明し、それぞれの項目について何分ずつ話すか伝えておくのも効果的です。

 ウェブ会議では、一度集中を切らして話を聞かなくなった参加者は、なかなか戻ってこないと考えた方が良いでしょう。あえて言うまでもありませんが、自分が発言しない間のミュートは厳守し、会議の主催者は発言者以外のミュートを冒頭に明示的に求めるべきです。発言と関係のないノイズは会議の妨害でしかないと肝に銘じましょう。また、説明資料が画面に映っている場合、話し過ぎは禁物です。すでに映像や資料が十分に伝えている内容をそのまま繰り返しても誰も聞いてくれません。話し言葉は付加価値を高めるために使う必要があるのです。(つづく)

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