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開幕します。Jリーグの新SNSガイドラインの活用がいま有効な理由。

今週末から、いよいよ2022年のJリーグが開幕します。

開幕前は、新体制発表、トレーニングキャンプに始まり制作物の締切に追われたり、新しいオペレーションを策定したりと、とにかく忙しい時期。

ただ個人的には、開幕前は遠足の前のワクワク感というか、ソワソワする感じというか、とても楽しみな気持ちでいます。忙しく余裕が無くて怖い顔をしがちだけど、多くの人が待ち望んでいるこのやりがいのある仕事をさせてもらってる以上、クラブの仲間にも同じようなワクワクする感覚で、一緒に開幕を迎えたいなと思います。

2月12日(土)から、Jリーグが定めたガイドラインが新しく施行されました。

それに伴い、今後ファン・サポーターの皆さんが発信するUGCを活用した施策やインフルエンサーマーケティングも活発になると予想されます。

サポーターの発信がクラブにとって必要な理由

スポーツとSNSの相性は非常に良く、Jリーグではこれまでも多くの発信がされてきました。

現場の興奮や実況などリアルな感情を伝え、サポーター仲間と繋がるコミュニケーションとして”Twitter”が使われたり、スタジアムやアウェイの旅の思い出や推しの選手の投稿などアルバム的に”Instagram”が使われています。

一般に、SNSで一人当たり平均200人のフォロワーがいるとして、10,000人のスタジアム来場者のうちの1割が投稿してくれるだけで、約200,000人に情報が届くポテンシャルがあります。その中には横浜FCやJリーグに興味のない人、サッカー観戦をしたことが無いという人も多く含まれていますが、これはクラブではどう頑張っても知り合えない人たちです。

クラブ公式の発信では上記のような人にはアプローチはできませんし、たとえ情報が届いたとしても興味のない人には見向きもされません。
しかし、知り合いの投稿ならなんとなく気になって覚えているという人が多いのも事実。つまり、ファン・サポーターの皆さんの発信は、試合の盛り上がりを伝えるだけでなく、クラブやリーグが手の届かない新規の潜在顧客にリーチし、認知され、興味を持つきっかけとなるとても有効な策のひとつといえます。

より多くの人、まだ出会えていない人に自分たちのクラブやJリーグを広く知ってもらうために、沢山の発信をしてもらいたいと思います。

以下、参考までに。

SNS内での検索行動が当たり前になっている中で”「検索される」ハッシュタグを想定”して発信することが大切です。

例えば、#saulomineiro よりも #サウロミネイロ の方が日本人の検索行動にあったものなのでより多くの人に投稿を見つけてもらえる可能性があります。海外の人にもと考えると両方つける方が良いですが、こうしたハッシュタグ一つでもちょっとしたことですが意識したいところです。

また、新規層にも接点を持ちたいと考えたとき、特にInstagramにおいては一つのコンテンツを起点としてビッグワードとスモールワードを組み合わせて投稿することでSNSでの検索にヒットする可能性も広がります。(Twitterは文字数制限があるので変に増やさない方が良い。)

たとえば、#横浜FC #yokohamafc を起点としたときに『ビッグワード』(#サッカー #Jリーグ #スタグル)『ミドルワード』(#大宮アルディージャ #ardija などの対戦相手)、『スモールワード』(#ロティ、#フリ丸、#選手名)などあらゆる角度から接点を設けておくとより広がりやすいので、投稿する際に「あ、そんなのもあったな」程度に覚えておいてもらえる嬉しいです。

インフルエンサーマーケティングと、ステマに注意

さらにガイドラインの施行によって、インフルエンサーを起用したSNS施策も今後増えてくると考えられます。

その際に、「ステマ(ステルスマーケティング)」とならないようにタイアップ表記や関係性の明示は必須となるのでその辺りをJリーグ含め各クラブで注意したいところです。実際、お金を支払い、または試合へ招待やグッズ提供など対価を払ってSNSへの投稿を依頼しているにも関わらずPR表記や関係性の明示を不要とする代理店も一部あるので注意が必要です。

関係性の明示をした投稿

「横浜FCから招待されて試合を観戦しに来た」という関係性の明示をしたうえでの情報発信。

PR投稿ではない自然投稿

横浜FCスタジアムMCの三田萌日香さんが、プライベートでアウェイの試合まで応援に駆けつけてくれて発信している例。

クラブと関わる中で、次第に愛着を持って応援してくれるようになった理想の形といえます。

横浜FCを応援してくれているマーケターみる兄さんの投稿は2.4万人のフォロワーに届き、その中で横浜FCが好きな人は少数なはずですが、フォロワー内での横浜FCの認知度は増えていそう。まさにクラブがリーチできない層に横浜FCという存在を知らせてくれています。

上記のようにインフルエンサーの方が発信する内容も投稿の仕方も様々です。その中で、クラブからインフルエンサーに対価を払って投稿を依頼しているにも関わらず、宣伝であることを明記せずにプロモーションをする行為は「ステマ(ステルスマーケティング)」と言われ避難される対象になります。

そのため、WOMJのガイドラインではインフルエンサーに対して関係性の明示を義務付ける必要があるとしています。(クラブ名、サービス提供(試合招待)があることの明示)この辺りの最低限の知識はJリーグおよび全クラブ担当者が理解したうえで今後のプロモーションを検討していければと思います。

まとめ

横浜FCでは、2019年はクラブからの発信や働きかけを意図的に注力したこと、更にJ1昇格の機運も高まりSNSでのサポーターの発信は質・量ともに劇的に向上しました。

しかし、ライブ感が強く、勝敗によって人の感情が大きく左右されるコンテンツということもあり、J1に昇格した2019年にはUGCが一気に増え、翌年の2020年はカテゴリーも上がったことによりUGCは増加しましたが、勝てない試合が多かった2022年は発信も減少し、日常的に話題にされることも明らかに減りました。(要因は一概にそれのみとは言えませんが一要素ではあります)

現時点でのJリーグは、スタジアムでのサッカー観戦と発信がセット。この状況では、UGCの増減も勝敗に左右されることになりがちです。

試合の時は自然投稿が発生しやすいので、試合会場にインフルエンサーを呼んで情報発信をすることよりも、クラブや選手を本当に応援してもらえる人をどれだけ多く創れるかということに注力して考える必要があります。

これは数千、数万人のフォロワーがいるようなインフルエンサーでなくとも数百人規模のフォロワーを抱える一般のファン・サポーターの投稿がよりたくさん集まる方が、熱量の伴った強い力でリーチできるので今回のガイドラインの施行によってファン・サポーターの皆さんの発信がクラブやリーグへの認知や関心を高める武器となると言えます。

逆に、スタジアム観戦以外の日常的に発信をしてもらうインフルエンサーの施策を考えることも必要だと思います。

企業のインフルエンサーマーケティングでも主流ですが、理想的なのはインフルエンサーと企業の長期的な関係性を築くことで、心から好きになってもらうこと。例えばジェフユナイテッド市原・千葉がホームタウン活動を強化して、当時高校生だったこじるり(小島瑠璃子さん)や桐谷美玲さん、本田翼さんなどが大人になってもジェフのファンを公言していたり、大分トリニータを地元で応援していたさっしー(指原莉乃さん)がいたりと、単純に瞬間風速的にインフルエンサーを起用するということではなく、ファン創りという視点で長期的な関係を頭に入れなければいけません。そういった意味で子どもや学生年代へのアプローチは大切だし、インフルエンサーを”単発で起用する”というよりも”中長期で関係を深める”マーケティング施策がより大切になると思います。

Jリーグ公式ガイドライン抜粋

以下、Jリーグが策定した今回のガイドラインをまとめると

・本人が撮影したものはOK
・動画は試合中の映像はNG(ハーフタイムはOK)、大型ビジョンに映ったプレーの映像はNG
・迷惑行為はNG
・個人が特定でき社会的評価を損失させる目的の投稿はNG
・なりすまし投稿NG
・ライブ配信はNG
・営利目的はNG
・リーグやクラブに愛のない投稿はNG
Jリーグ公式試合における
写真・動画のインターネット上での使用ガイドライン

これまでもSNSへの投稿はほぼ黙認されていましたが、今回正式に認められガイドライン化されたので、この機会に積極的にどんどん投稿が増えることでクラブにとってもリーグにとってもポジティブな決断だったと言えると思います。

このリーグの決断に対する評価や未来予測など参考になることが以下の徳力さんの記事で取り上げられていました。

大きく変わることは、リーグから正式なガイドラインができたことでより多くのファン・サポーターからの発信が見込め、クラブやJリーグが新規層へアプローチするきっかけができること。

地上波での放送がほぼ無くなってしまったJリーグ、サッカーにとって、情報を露出させることはいま最も必要なこと。

もちろんブランド棄損に繋がることは避けなければいけないため、ガイドラインが策定されたわけですが、今回認められた範囲は広いのでどんどん発信し更にJリーグが盛り上がり、日本サッカーの盛り上がりにも繋がっていくと良いと思います。

よろしくお願いします🙇‍♂️