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ハイレベルのコンテンツ分析の探求

実案件をベースにハイレベルコンテンツデータを分析した内容・結果を雑多に書きたいと思います。
(「ハイレベルコンテンツ」は以下を参考)

ハイレベルコンテンツを扱う上で、以下のような手法は一定の効果(事業推進につながった)が見込めたものです。

情報を具体のまま扱う
抽象指標を活用する
仮説を伴わない分析を活用し、抽象化する

目的は、どのようなコンテンツを制作するべきであるか、コンテンツに関するPDCAを回すこと、としています。
それぞれの解説の前に、前提条件を軽く整理します。
ここでの「ハイレベルコンテンツ」は、いわゆるブランディングのための記事コンテンツであると想定していただけると理解しやすいと思います。
細かな議論は省略しますが、ブランディングのための記事コンテンツといっても、以下のようなコンテンツを指しています。
・数千字程度の画像と文字列から成る記事コンテンツ
・ブランドの世界観・情報を発信しつつ、長期的な関係を結ぶこと = 継続して閲覧されること が目的(コンテンツを顧客との継続的なタッチポイントとする)
・週に1本~数本程度配信される
・記事コンテンツごとに顧客からのアンケートを取得できる

さて、このようなコンテンツは「ハイレベルコンテンツ」であるため、分析が非常に繊細です。
よくある分析目的として、PVやUUなどの集客指標の最大化、があり得ると思います。
しかしそもそも、ローレベルのコンテンツであれば、集客力がある(かつ、EC送客率などが高い)記事が「良いコンテンツ」ですが、上記のようなハイレベルコンテンツにおいて、集客力のある記事が「良いコンテンツ」と言えるのでしょうか。
また、ローレベルコンテンツであれば集客指標は「見たい」と思わせることができれば達成されますし、送客指標は「買いたい」と思わせることができれば達成され得ることがわかります。しかし、継続して閲覧されることを目的とした場合、継続した閲覧につながるコンテンツの読後感はわかりやすいものではありません。
このように、ハイレベルのコンテンツに対して一般的なコンテンツ分析方法を当てはめた場合、その結果はミスリードにつながる可能性が非常に高く、非常に繊細な分析であると言えます。
ここまでを前提として、各方法について述べていきたいと思います。
(再掲ですが、目的は、どのようなコンテンツを制作するべきであるか、コンテンツに関するPDCAを回すこと、としています。)

① 情報を具体のまま扱う

コンテンツごとのUU・PV、閲覧時間、アンケート結果などを全てそのままコンテンツ制作者に共有することでPDCAを回します。
ともすると、そんなものが分析か(手抜き分析ではないか)、と言われそうです。実際、分析者の行う作業は分析というよりは集計作業です。
なぜこの方法が有効であるのか。
一般的には、情報は抽象化されることで再現(再利用)可能な知見へと変換されます。
コンテンツのPDCAの実行を目指すデータ分析においては、この抽象化・再現可能な知見への変換は大きなテーマです。
例えば、過去に成果の良かったコンテンツ群の中から成果につながる再現可能な知見を抽出する作業を考えます。ローレベルコンテンツであれば、UU・PV・送客率などの定量指標が平均より良かったコンテンツ群を「成果の良かったコンテンツ」とし、それらの指標と相関のあり要因として妥当そうな説明変数を探していきます。「リンク数」「記事の文字数」などが説明変数として特定される可能性があるでしょう。「リンク数」との相関が高い場合、「記事のリンク数を増やす」ことが再現可能な知見となるわけです。
ハイレベルコンテンツにおいては再現可能な要素が定量的に示されない可能性があります。
例えば、継続して閲覧されることを目的とした場合、「ユーザーが共感できる身近な内容であること」が重要な要素である可能性があります。しかし、この要素はデータによって示されるものではありません。さらに言えば、このような要素の特定には、そもそもコンテンツ制作者の知識を必要とします。この例で言えば、「身近な記事であればユーザーは共感しやすい」という知識がなければ特定される要素とはなりません。
ハイレベルコンテンツで成果の良いコンテンツに共通する要素としてあり得る知見の中には、言語化可能な形式知から暗黙知まで多様かつ複雑なものが存在する可能性があります。
以上を踏まえ、データの構造化・再現可能な情報化をコンテンツ制作者の頭の中で行なってしまおう、というわけです。
コンテンツ制作者の解釈を経ることは、コンテンツ制作に即応用しやすいという利点もあります。
ちなみに、コンテンツ制作者の頭の中でデータの構造化・再現可能な情報化を行い、PDCAを回しているジャンルでは、雑誌、特に週刊少年ジャンプがわかりやすい例ではないかと思います。

② 抽象指標を活用する

「ハイレベルコンテンツでは成果指標の定義が難しい」という課題を解決するため、抽象的な指標の導入を行います。
抽象的な指標とは、簡単に言えば、「Like」です。Facebook、Youtubeをはじめとしたソーシャルメディアにおいて馴染みのある指標です。
継続して閲覧されることを目指すようなハイレベルコンテンツは、コンテンツの読後感が抽象的であったり、複合的であることが多いです。
わかりやすく、映画というハイレベルコンテンツに置き換えてみます。
皆さんが最近見た「良い映画」はなんでしょうか?「良い映画」を見たら別の映画も見たくなる、というのは自然だと思います。その映画を「良い映画」と思った理由はなんでしょうか?「泣けたから」「感動したから」「笑いが絶えなかったから」・・人それぞれあるでしょう。
「良い映画だったと思ってくれたか?(→ また映画を見たいと思ってくれたか?)」を映画横断で定量化するために、抽象的な指標である「Like」を用いる、というわけです(映画においては5点満点の星マークで評価することはもはや一般的ですよね)。
Youtubeの分析では、Like数とLike率、コメント数、再訪率・・などは全て相関があることは知られており、いいね数をKPIとすることで付属する様々な目的(抽象的なものも含む)の最大化につながる可能性が高いです。
(詳細はYoutubeのいいね数の予測モデルなどに関する論文に当たってみてください)
実際の分析では、コンテンツのLike数とコンテンツの再訪率は明確に相関があることが示されました。
つまり、「いいね」と思われやすい「良いコンテンツ」を読んだユーザーは「また見たい」と思ってくれる可能性が高い、と言えたのです。こう書くと当たり前のようですが、データで示され、PDCAに組み込めることは非常に重要です。
気づいた方もいらっしゃるかもしれませんが、この抽象化指標は、①と組み合わせることでさらに威力を発揮します。

③ 仮説を伴わない分析を活用し、抽象化する

公開済みのコンテンツを対象とした、ボトムアップ型のアプローチです。
実例による説明がわかりやすいと思うので、実例と合わせて紹介します。
②の考え方をもとに、あるコンテンツに抽象指標を導入し、コンテンツの評価を定量的に行えるようにしました。さらに、この指標を①のように制作者にFBすることで、抽象的な目的を持ったコンテンツのPDCAを回すことを可能としました。
しかし、コンテンツの詳細な評価を制作者の主観に常に委ねすぎることは、再現可能な知見の粒度が荒くなったり、属人化が進みやすいです。
そこで、Likeと同時に顧客のアンケートを取得し、具体的な読後感を特定しようと考えました。詳細な分析過程は省略しましすが、最終的にトピックモデルによる読後感の分類(分解)を行いました。アンケートトピックの分析はLikeと紐づけることで、具体的にどのような読後感がLikeに繋がるのか?を特定しました。実際の分析では、例えば、「身近に感じること」がLikeにつながる、ということが判明しました。
このように、事前に明確な仮説を設定しない分析により、新しい発見の概念化を行うことができます。
仮説を伴わない分析は、解釈幅のある分析を意味します。具体的な手法としては、上記のテキスト分類を含むクラスタリングなんかは相性が良いかと思います。
一歩進め、ボトムアップ的に指標の策定をすることも有効です。

まとめ

まだまだ分析としては探索中で、雑多な書き方になってしまいましたが、実例としては以上のような分析を行うことができました。
いずれにしろ、分析を分析者の中で(機械的に)終わらせない、という視点が重要です。
左脳的な分析と、右脳的な知識をいかに統合するか、がハイレベルコンテンツでは避けて通れない議論点なのです。

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