「みんなちがって みんないい」と言うならば

僕は自分を卑下していて
羨望ばかりが目に見えて息苦しいんだ
気を引こうとその羨望に近づくけれど
見向きなんてされもしない

容姿も才能も性格も完璧
そんな奴はどこにいるんだろう
もしもそれが僕ならと想像するけれど
今ものすごく気持ち悪くなった

それなのに今も僕は自分を卑下している
やりたいことにやりたいと言えず
やりたくないことにやりたくないと言えず
大人になってものすごく後悔している

見えている世界が違うだけで
こんなにも世界は変わるものなのか
羨望というものは怖いし残酷だ
僕をいつまでも思考停止に陥らせる

そういえば

「みんなちがって みんないい」んですか
人と違えば 爪弾きにするくせに
何が多様性だ ダイバーシティだ
全体主義にしたい人たちばかりで 飽きてくる

理不尽なことが重なってくると
追い討ちをかけるように 言葉が襲ってくる
心無い言葉に心を尽くして説いても
その耳には筒抜けで 消えていく そして繰り返す

それに

「みんなちがって みんないい」はずなのに
今は違うということを とても恐れる世の中だ
答えの解きかたは人それぞれにあるというけれど
こうでなければならないと押しつけたがる人の多さよ

やられたらやり返せってあなた 簡単に言うけど
今は見えないものも含めて敵は多い あなたもそうかもね
そんなあなたを殴れたらどんなにいいだろう
そして思いっきり涙を流せたらどんなにいいだろう

時は止まらない
僕よ 懐古的な今をその手でぶち壊せ
悲しいけれど時は止まらない
そして「昔は良かった」なんて二度と言わせない

迎合から脱出せよ
比較とは決別せよ
我慢などしなくていい
生易しい優しさなど要らない

だけど

「みんなちがって みんないい」のならば
何故 世界のあちらこちらで差別があるのだろう
冷笑家と差別主義者が権力と肩を組んでいる
これではダメだと声を上げた者が叩かれる現実を目の当たりにする

そう 自分や自分が住む国を
何も無かったかのように良く見せたい奴らはごまんといるけれど
同じくして自らと向き合えない人間以下に成り下がる
奴らのように虎の威を借る狐にはなりたくない 僕はギリギリで踏ん張る

見て見ぬフリをしていた
臭いモノには何度もフタをした
都合の悪いコトはシュレッダーにかけた
嘘を嘘だと言わせないために黒塗りにした

そんな傍観した今を生きてしまった
だから

「みんなちがって みんないい」と心から言えるためには
そして一度失ったものを 改めて築くには
あとどれくらい 時間が必要だろう
あとどれくらい 考えなければならないだろう

強い者を強いまま居させ続けることの怖さを
このまま弱いままでは居られないことの現実を忘れないために
時には言葉を荒げよう
丁寧な言葉遣いで忖度しても何も変わらない

扉に鍵を掛けて閉じ籠もったままの怒りは
どんなにぶつけても壁に跳ね返る
その悔しさを誰もが伝えなければ
「みんなちがって みんないい」にはならない

そうだ

僕の悩みがいつか笑えるくらい小さくなって気にならなくなるまで
この産まれ持った遺伝子を憎んでも仕方ないのだ
そうやって恥を知り 恥を持って生きていく
ありきたりを押しつけてくる古い価値観など崩れていく

確かに今も悩みは多い
人に媚びて羨んだところで僕は負けになるのだ
たとえ努力という言葉が嫌いでも
紡ぎ出した言葉が素通りされても

「何言ってんだお前」って笑われながら
死なない限り続いていくこの毎日を
このかたちあるものを作り続けるために
何が起こるか分からないこの毎日を

自分を卑下などしなくてもいい
こんな僕でもいいのだと肯定がある
それだけでも人はきっと生きていける
それでやっと「みんなちがって みんないい」と心から言える

心から言える

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