国際人権法としての「発展の権利」

「発展の権利」は、これまですでに認められている人権を、発展という目標の下に結集した権利の総合体である。「発展」の意味については、当初主張されていたような経済的な内容をこえて、今日では、人間が人間としてふさわしい生活を十分享受できるような状況、つまり、人間としての基本的ニーズを十分満たすための条件を作るという、ひろい意味で捉えることが一般化しているという。

人権としての「発展の権利」の主体は、田畑茂二郎によれば、あくまで人間としての個人である。しかし、個人がそれを享有する上で、国家は重要な役割を有するのであり、国連総会の「発展の権利に関する宣言」も、第三条一項で、「国は、発展の権利の実現に資する国内的及び国際的諸条件を創り出す主要な責任を負う」としている。「発展の権利」の集団的性格が主張されるのは、このような国家の有する重要な役割に基づいている。

「発展の権利」を主張することの意義は、「発展」、つまり「人間の基本的ニーズを満たす」という共通の目標の下に、それに関連のある人権がクローズ・アップされ、これまで十分に意識されてこなかったそれらの人権の重要な側面が浮かび上がることにある。「発展の権利」は、「発展」を理念としてかかげ、その実現に向けて必要な行為規範を権利として主張したものであって、実践の積み重ねによって、次第に具体的な内容が固められていく性質のものである。

<参考文献>田畑茂二郎『国際化時代の人権問題』

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