ロールズの「階層社会」と人権

ロールズによれば、秩序あるリベラルでない社会は、リベラルな秩序ある社会が受け入れているのと同一の万民の法を受け入れるという。秩序あるリベラルでない社会とは、平和を好み、膨張主義的でない社会であり、その法体系が、社会を構成する人民からみて正当と判断しうる一定の必要条件を満たしているものである。この社会を、ロールズは「秩序ある階層社会」と呼ぶ。

秩序ある階層社会の構成員は、社会の自由かつ平等な一員であるとするリベラルな理念が必ずしも必要とされない。必要なのは、責任能力を持ち、かつ協力的な、社会の構成員であることとされる。そこでは、正義の共通善的構想と、法の正しさについての誠実性が求められる。法体系は、人民の基本的利益を考慮に入れて、道徳上の義務と責務を社会のあらゆる構成員に課すのである。

秩序ある階層社会の法体系を「正当」と判断しうる一定の必要条件が、ロールズにおける「人権」なのであって、「基本的人権は、正義にかなった万民の政治社会の正規の構成員であるすべての人民のための秩序ある政治制度のミニマム・スタンダード」として、政治的に中立とされる。

ロールズによれば、現代の道理ある万民の法において、人権は別格の権利である。第二次世界大戦後、国際法に関する公認の見解が二つの基本的な点で転換しており、それは武力行使禁止原則とその例外としての自衛権の確立、および対内主権に対する制限としての人権の国際化である。人権は、体制の正当性とその法秩序の妥当性との必要条件であり、人民のあいだの多元主義に制限を設けるものである。

<参考文献>ジョン・ロールズ他、中島吉弘・松田まゆみ訳『人権について』

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