人権と平和の不可分性

「人権と平和の不可分性」

第二次世界大戦は、全体主義国家による、国内における人権弾圧の下に推し進められた。それは、占領地等の戦場における大規模な人権侵害を伴うものであった。そこで、人権と自由が尊重されなければ平和は存在しないということが、人々の心に刻まれた。戦後、人権保護は国際関心事項として広く認められるようになり、国連憲章と世界人権宣言に基づき、国際人権法が確立されていった。

この「人権と平和の不可分性」は、国内紛争が各地で激化する現代において、再認識される価値を有する。人間の安全保障によって指摘されるように、紛争の原因には、社会的不公正があり、公正の基本には、基本的人権の尊重があるからである。社会の安定、共生の創造、紛争の防止という観点から、基本的人権の尊重は、平和への道であり、国際の平和と安定のいしずえである。

「至高の権利としての生命権」

人は生命を奪われれば全ての人権を失う。それゆえ、自由権規約委員会の言葉を借りれば、生命権は「人間存在の至高の権利」であり、「すべての人権の基礎」である。発展途上国などの、貧困状態が半永久化しているところでは、人権の尊重は、人間が人間として生きていくための基本的なニーズを満たし、それに応える社会環境を抜きには、考えられないだろう。

「自由権と社会権の相互依存性」

冷戦時代、社会主義国は社会権を、資本主義諸国は自由権を強調し、互いに批判し合う傾きがあった。しかし、1993年のウィーン世界人権会議は、「すべての人権は普遍的であり、不可欠かつ相互依存的」であり、「国際社会は、公平かつ平等な方法で、同じ基礎に基づき、同一の強調をもって、人権を全地球的に扱わなければならない」ことを確認した。この公平かつ平等な方法には、先ず国際法が考えられなければならない。このことは、国際人権法という分野が、ただの国際法の一部であるのみならず、全地球的課題を担っていることを意味する。

<参考文献>芹田健太郎・薬師寺公夫・坂元茂樹『ブリッジブック国際人権法第2版』

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