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短編・「エルシオン」

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国際法などの知識に基づき、そのエッセンスをフィクションの世界で表現しようという試みです。
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記事一覧

010・「パンフレットを読んで」

コウ:「アクアタイムズ新聞に寄稿したんだ。」

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学校給食が変えるものって、何だろう。給食の力を考えてみたい。

国連WFPは、紛争や自然災害の現場における「緊急食料支援」に力を注ぎつつ、途上国や紛争地での「学校給食支援」にも取り組んでいる。給食には、広く人びとや社会を動かし、地域や国の未来を、明るい方向へ変えていく力がある。

まず、空腹な子どもたちが、必ず一食たべられる。紛争によっ

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00X・「じゅういちぶんのいち」

9月29日、日曜日。

前半に0ー3で、3点入れられて後半に挑む。

ぼくの半生はそんなもんだった。

今、後半戦に向けて、気持ちを入れかえてる。

ぼくは、この試合を勝たなきゃいけない。

もし負けても、次に挑む覚悟はある。

未来は蜃気楼のように、遠くにぼんやり浮かぶくらいでいい。

大事なのは、地に足が着くこと。

今ここに集中し、どんなプレーができるか。

最高のじゅういちぶんのいちとして

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00X・屋上花火

ユリ:「今日は、アリスの誕生日なのよ。」

ケイタ:「マジか!!オレ、ちょっとケーキ買ってくる。」

ユリ:「今日は花火大会だから、橋が封鎖されるのよ。」

ケイタ:「飛ばせば大丈夫だよ。」

*****

アリス:「屋上が解放されるなんて知らなかったわ。特等席ねー。」

リト:「お、そろそろだぜ。」

ヒュルルルルー、ドーン、ドーン。

ケイタ:「アリス、お誕生日おめでとう。」

アリス:「キャ

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007・「保護する責任」報告書

オーロラ船団隊員:「アリョーシャさん、国際社会の保護する責任についてのレポートです。」

アリョーシャ:「ありがとう。助かるよ。」

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国内避難民担当事務総長代表であるフランシス・デンは、国家主権を再定義し、「責任ある主権」を提唱した。国家は、対外的には他国の主権を尊重する責任を持ち、対内的には国内にいるすべての人の尊厳と基本的権利を尊重する責任があるとされた。さらに、国家が、国内のあ

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間奏・神機兵グレン団

セツナ:「グレン、形態変化。飛行モード。」

セツナ:「被災地へ急行する。」

アリョーシャ:「了解!サポートする。オーロラ船団、発進準備、急げ。」

アリョーシャ:「ユウ、よろしく!」

ユウ:「ラジャー。グレン団、セツナに続くよ!」

グレン各機AI:「了解、ユウ。」「ラジャー。」

005・補完的安全保障

アリョーシャ:「国家の安全保障というのは、一種の領土内の安全だった。しかし、従来の方法で、たとえば、大きなミサイルを作るといった計画では、国家の安全は守りきれない。」

信:「国際関係に緊張をもたらす現代的要因の一つは、地域の社会的不公正だといえるからね。社会構造の不公正の是正が必要だね。」

アリョーシャ:「人間の安全保障は、国家の安全保障を補完する考え方で、国家の防衛だけではなく、紛争によって

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004・国際円卓会議

ジャンヌ:「勢力均衡か集団安全保障か、という二者択一ではありません。どちらの観点も必要になります。しかし、重点というものも必要になります。それは、後者でしょう。」

セツナ:「勢力均衡は、勢力の測定に伴う不確実さのために、仮想敵国に優越する力を求め、軍拡競争のらせん状の拡大と同盟政策の追求によって、国際関係を緊張させ、平和を危うくするという悪循環を招きます。」

ジャンヌ:「同盟条約が、外向きの競

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003・中長期的な支援計画

ユウ「この大干ばつに対しては、医療支援にできることは限られるよ。もっと中長期的視点に立って、支援計画を立てることが大事だよ。」

コウ:「この国の人びとがまた自給自足ができるようになるには、先ず必要なのは水さ。今後何世代も先を見据えるとなると、国を流れる大河から用水路を建設し、廃村を復活させ、砂漠化が進んだ広大な大地を緑化することが必要だよ。」

ユウ:「計画は現地の人びとの理解と協力が不可決だね

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002・平和維持活動の原則

アリョーシャ:「オーロラ船団は、平和維持活動の同意原則と当事者に対する公平性を条件とし、地域における一種の強制主体として、ホワイト兵団をはじめ、各団体の人道支援を援助し、サポートする。」

信:「同意原則は緩めてはならない。任務の遂行のためにも、隊員の安全のためにも。それから、自己防衛と任務の防衛の場合を除く武力不行使も、基本原則だね。」

アリョーシャ:「うん。ぼくたちは軍事要員を用いるけど、当

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序奏・ホワイト兵団

アリョーシャ:「ホワイト兵団、作戦開始。」

女性隊員:「ラジャー」

女性隊員:「少女発見。救助します。」

女性隊員:「君、助けにきたよ。もう大丈夫。さあ、コクピットに入って。キャンプまで送るから。」

少女:「ミミーが。」

女性隊員:「え?あの猫ね。大丈夫。ちょっと待ってて。はい。」

少女:「ミミー!ありがとー」

女性隊員:「ご家族は?」

少女:「お母さんが、隠れてなさいって。」

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