Katsuyoshi Kubota

専門:国際法・法哲学。

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マガジン

  • 短編・「エルシオン」

    国際法などの知識に基づき、そのエッセンスをフィクションの世界で表現しようという試みです。

  • 国際人権法学

    国際人権法の基本を、先行研究に依拠しながら、考察・執筆します。

  • 日本国憲法学

    筆者の関心の下、先行研究に依拠しながら、日本国憲法に関する記事を執筆します。

最近の記事

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立憲主義の現代の到達点としての日本国憲法

われわれは、日本国憲法が、人類の長い経験と叡智の蓄積の表象である立憲主義の展開の「現代の到達点」というべきものを具現していることを、明確に認識し理解する必要がある。グローバル化する世界にあって、日本が過度に内向きになることなく、相互的比較を通じて対話し、自らを高めていく確かな基盤・土台を有することの意義は、長期的にみて限りなく大きい。 憲法の制定過程においては、戦前の厳しく徹底した思想・言論などの弾圧体制が基本的に除去され、選挙権が従来の25歳以上から20歳以上に引き下げら

    • 010・「パンフレットを読んで」

      コウ:「アクアタイムズ新聞に寄稿したんだ。」 ***** 学校給食が変えるものって、何だろう。給食の力を考えてみたい。 国連WFPは、紛争や自然災害の現場における「緊急食料支援」に力を注ぎつつ、途上国や紛争地での「学校給食支援」にも取り組んでいる。給食には、広く人びとや社会を動かし、地域や国の未来を、明るい方向へ変えていく力がある。 まず、空腹な子どもたちが、必ず一食たべられる。紛争によって仕事を失った親にとって、子どもを食べさせていくことは容易ではない。学校で食べる

      • 00X・「じゅういちぶんのいち」

        9月29日、日曜日。 前半に0ー3で、3点入れられて後半に挑む。 ぼくの半生はそんなもんだった。 今、後半戦に向けて、気持ちを入れかえてる。 ぼくは、この試合を勝たなきゃいけない。 もし負けても、次に挑む覚悟はある。 未来は蜃気楼のように、遠くにぼんやり浮かぶくらいでいい。 大事なのは、地に足が着くこと。 今ここに集中し、どんなプレーができるか。 最高のじゅういちぶんのいちとして。

        • 00X・屋上花火

          ユリ:「今日は、アリスの誕生日なのよ。」 ケイタ:「マジか!!オレ、ちょっとケーキ買ってくる。」 ユリ:「今日は花火大会だから、橋が封鎖されるのよ。」 ケイタ:「飛ばせば大丈夫だよ。」 ***** アリス:「屋上が解放されるなんて知らなかったわ。特等席ねー。」 リト:「お、そろそろだぜ。」 ヒュルルルルー、ドーン、ドーン。 ケイタ:「アリス、お誕生日おめでとう。」 アリス:「キャー、素敵なロールケーキ!写真撮らせてー。」 ユリ:「橋の封鎖ギリギリだったのよ

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        立憲主義の現代の到達点としての日本国憲法

        マガジン

        • 短編・「エルシオン」
          10本
        • 国際人権法学
          5本
        • 日本国憲法学
          2本

        記事

          優先課題・「水と衛生への権利」

          政府は、健康、教育、暮らしを支えるのは、清潔な水と適切なトイレ、そして、正しい衛生習慣であることを確認し、国家の優先課題として、人間としての基本的権利である水への権利を確保しなければならない。国連総会では、「水と衛生への権利」が、相当な生活水準・健康への権利・生命や尊厳への権利に密接に関連するものであると同時に、独立した対応が必要とされている。すなわち、自由権と社会権の基本的権利に不可欠なものとして、「水と衛生への権利」が尊重されることを要するのである。 とりわけ、公平性の

          優先課題・「水と衛生への権利」

          国際人権法としての「発展の権利」

          「発展の権利」は、これまですでに認められている人権を、発展という目標の下に結集した権利の総合体である。「発展」の意味については、当初主張されていたような経済的な内容をこえて、今日では、人間が人間としてふさわしい生活を十分享受できるような状況、つまり、人間としての基本的ニーズを十分満たすための条件を作るという、ひろい意味で捉えることが一般化しているという。 人権としての「発展の権利」の主体は、田畑茂二郎によれば、あくまで人間としての個人である。しかし、個人がそれを享有する上で

          国際人権法としての「発展の権利」

          国際法上の「自決権」

          人権規約は、A規約、B規約のいずれにおいても、第一条一項において、自決権について規定し、「すべての人民は、自決の権利を有する。この権利に基づき、すべての人民は、その政治的地位を自由に決定し並びにその経済的、社会的及び文化的発展を自由に追求する」としている。 第二次世界大戦後、非植民地化の過程で実定法となっていく自決権は、植民地人民を中心とする、外国支配下におかれた従属人民の独立達成の権利であり、「外的自決権」を意味した。独立国の一部を構成する少数者などに自決権を認めることは

          国際法上の「自決権」

          人権と平和の不可分性

          「人権と平和の不可分性」 第二次世界大戦は、全体主義国家による、国内における人権弾圧の下に推し進められた。それは、占領地等の戦場における大規模な人権侵害を伴うものであった。そこで、人権と自由が尊重されなければ平和は存在しないということが、人々の心に刻まれた。戦後、人権保護は国際関心事項として広く認められるようになり、国連憲章と世界人権宣言に基づき、国際人権法が確立されていった。 この「人権と平和の不可分性」は、国内紛争が各地で激化する現代において、再認識される価値を有する

          人権と平和の不可分性

          ロールズの「階層社会」と人権

          ロールズによれば、秩序あるリベラルでない社会は、リベラルな秩序ある社会が受け入れているのと同一の万民の法を受け入れるという。秩序あるリベラルでない社会とは、平和を好み、膨張主義的でない社会であり、その法体系が、社会を構成する人民からみて正当と判断しうる一定の必要条件を満たしているものである。この社会を、ロールズは「秩序ある階層社会」と呼ぶ。 秩序ある階層社会の構成員は、社会の自由かつ平等な一員であるとするリベラルな理念が必ずしも必要とされない。必要なのは、責任能力を持ち、か

          ロールズの「階層社会」と人権

          「立憲主義」という法思想

          伊藤真によれば、立憲主義とは、すべての人々を個人として尊重するために憲法を定め、それを最高法規として国家権力を制限し、人権保障をはかる思想である。憲法は、国民が国に守らせるためのものである。 民主主義国家では、国民の多数意思に従って、国の政策の基本が決定される。しかし、多数意思は常に正しいとは限らない。国民の多数が戦争を支持した戦前の日本も同様である。 多数決でも変えてはならない価値を前もって憲法の中に書き込み、民主的正当性をもった国家権力をも制限するのが立憲主義という法

          「立憲主義」という法思想

          007・「保護する責任」報告書

          オーロラ船団隊員:「アリョーシャさん、国際社会の保護する責任についてのレポートです。」 アリョーシャ:「ありがとう。助かるよ。」 ***** 国内避難民担当事務総長代表であるフランシス・デンは、国家主権を再定義し、「責任ある主権」を提唱した。国家は、対外的には他国の主権を尊重する責任を持ち、対内的には国内にいるすべての人の尊厳と基本的権利を尊重する責任があるとされた。さらに、国家が、国内のあらゆる人の尊厳と基本的権利を確保する責任を、果たす意思や能力がないか、国家自身が

          007・「保護する責任」報告書

          間奏・神機兵グレン団

          セツナ:「グレン、形態変化。飛行モード。」 セツナ:「被災地へ急行する。」 アリョーシャ:「了解!サポートする。オーロラ船団、発進準備、急げ。」 アリョーシャ:「ユウ、よろしく!」 ユウ:「ラジャー。グレン団、セツナに続くよ!」 グレン各機AI:「了解、ユウ。」「ラジャー。」

          間奏・神機兵グレン団

          005・補完的安全保障

          アリョーシャ:「国家の安全保障というのは、一種の領土内の安全だった。しかし、従来の方法で、たとえば、大きなミサイルを作るといった計画では、国家の安全は守りきれない。」 信:「国際関係に緊張をもたらす現代的要因の一つは、地域の社会的不公正だといえるからね。社会構造の不公正の是正が必要だね。」 アリョーシャ:「人間の安全保障は、国家の安全保障を補完する考え方で、国家の防衛だけではなく、紛争によって被害を受ける人間の保護に視点がある。紛争と貧困からの解放が、人間の安全保障の二大

          005・補完的安全保障

          004・国際円卓会議

          ジャンヌ:「勢力均衡か集団安全保障か、という二者択一ではありません。どちらの観点も必要になります。しかし、重点というものも必要になります。それは、後者でしょう。」 セツナ:「勢力均衡は、勢力の測定に伴う不確実さのために、仮想敵国に優越する力を求め、軍拡競争のらせん状の拡大と同盟政策の追求によって、国際関係を緊張させ、平和を危うくするという悪循環を招きます。」 ジャンヌ:「同盟条約が、外向きの競争的安全保障であるのに対し、集団安全保障では、敵は内部におり、内向きの協力的安全

          004・国際円卓会議

          003・中長期的な支援計画

          ユウ「この大干ばつに対しては、医療支援にできることは限られるよ。もっと中長期的視点に立って、支援計画を立てることが大事だよ。」 コウ:「この国の人びとがまた自給自足ができるようになるには、先ず必要なのは水さ。今後何世代も先を見据えるとなると、国を流れる大河から用水路を建設し、廃村を復活させ、砂漠化が進んだ広大な大地を緑化することが必要だよ。」 ユウ:「計画は現地の人びとの理解と協力が不可決だね。それから、先進国の最新技術ではなく、現地に合った技術を探すことも大切だね。現地

          003・中長期的な支援計画

          002・平和維持活動の原則

          アリョーシャ:「オーロラ船団は、平和維持活動の同意原則と当事者に対する公平性を条件とし、地域における一種の強制主体として、ホワイト兵団をはじめ、各団体の人道支援を援助し、サポートする。」 信:「同意原則は緩めてはならない。任務の遂行のためにも、隊員の安全のためにも。それから、自己防衛と任務の防衛の場合を除く武力不行使も、基本原則だね。」 アリョーシャ:「うん。ぼくたちは軍事要員を用いるけど、当事者に対する公平性を堅持し、中立的立場から地域の平和維持機能となることを目指す。

          002・平和維持活動の原則