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vol.12 こどもとおとなの「記憶の時間」と「育む空間」を、編む

「編む、ブルースタジオ」とは
「編む、ブルースタジオ」は、毎回一つのテーマに沿って、住まいのタイプやジャンルを超えて事例・サービスを再編集し、お届けします。いつもの分類とは少し異なる目線から、“役に立つ”だけではない、“大切”なモノ・コト・時間を見つけ出すnoteマガジンです。

「はじめに:編む、ブルースタジオ」より

Prologue:まちのみんなで分かち合う「育む空間」


こどもの頃はどんな遊びをしていたでしょうか。
誰と、どこで、何をして、
遊んでいたか思い出してみましょう。

自分自身の記憶と、
自分は覚えていなくとも、家族からの話や、写真や映像の形で記憶に残っているもの。
その二つがあると思います。

そう考えたら、こどもの頃の記憶の時間は、
まわりの大人と分かち合うなかで育まれているようにも考えられませんか?


今回の特集は、ブルースタジオが建築を手がけた「育む空間」です。

園児とそこで働く職員だけではなく、
送り迎えに来る保護者も、近くに住む方々も、
まちぐるみで施設がもつ物語を分かち合い親しむことができる、よりどころ。

そのきっかけとなるような、
将来、こどもたちにとってふるさとと思えるまちの原風景として懐かしく思い出すことができるような、
まちのアイコンとなる特徴をもつ建物をデザインしました。

みんなで集う大屋根に守られた日本家屋や、
地域ゆかりの素材を使ったファサード。

今回は二つの物件の建築を計画するなかで生まれてきた言葉やエピソードを紹介しながら、「育む空間」特集をお届けしたいと思います。

language 1:ふるさと代々木公園のまちの原風景を育む、「大屋根の農家」こども園


東京都・代々木公園。
“まちぐるみの保育”を提唱し地域にひらかれた保育園・こども園を運営する事業主のナチュラルスマイルジャパンとの共同プロジェクトによって、「まちのこども園 よよぎこうえん」はできました。

portfolioページでは、建物内外の写真がご覧いただけます。
2018年には、グッドデザイン賞を受賞しました。

待機児童問題を背景に国家戦略特区を活用し、代々木公園内に0歳児からの受け入れを行うこども園です。
かつて“原宿村”だった農村集落を見渡す丘陵の上に位置し、小高い丘のうえに佇む想像上のおおきな農家、みんなが集う大屋根にまもられた日本家屋をイメージした建物になっています。

「まちのこども園」の特色でもある誰もがアクセス出来る地域社会との接点には、囲炉裏のある土間空間を設けました。

囲炉裏であたたまりながら行われたイベントには、設計を担当したスタッフも参加しました。
「お箸づくり」はこちら

“まちぐるみ”という共通の観点をもった二者によってできた「まちのこども園 よよぎこうえん」。
多様な自然環境・歴史・文化をもつ人々が訪れる代々木公園だからこそ、
こどもと保護者・地域がつながる“間”を大切に。
こどもの学びや育ちのためであり、地域の拠点であり、ふるさと代々木公園のまちの原風景となるような、「こどもも大人も豊かであるためには、どうあるべきか?」を考えられる場所を目指しています。

事業主であるナチュラススマイルジャパン社の代表の松本さんにお話を伺った、
interview「地域社会との接点をデザイン」はこちら

こどもも地域をつくる一人として、
一人ひとりの存在そのものを喜び、互いに育み合うコミュニティを創造する場所として、日々、さまざまな取り組みやイベントが行われています。


language 2:都市型の暮らしの記憶を育む、「大井町のまちのシンボル」保育園


ブルースタジオが手がけたこどものための多世代交流基地「AGITO」
賃貸住宅の住居1室を共用空間として改修・開設したプロジェクトです。
その時に共同でプロジェクトを手がけた、不動産管理業を営む東京ディフェンスと、ふたたび共同で企画した建物があります。

portfolioページでは、建物内外の写真がご覧いただけます。

「地域密着型の不動産会社さんだったからこそ、また一緒に地域に還元できる場所をつくりましょう、ということでプロジェクトがはじまったんです。だから、器としての建物の「Tre-stella square」と中に入る施設の「クオリスキッズ大井町保育園」、二つの名前があるんですよね。」
そう話すのは設計を担当したブルースタジオの河野さん。

いるだけで場の雰囲気が明るくなる、身長は高くともどことなく愛嬌のある河野さんに「Tre-stella square / クオリスキッズ大井町保育園」についてきいてみました。

現在は設計からブランディングプロモーションチームに異動した河野さん。
設計中に考えていたことが垣間見られるブログ「記憶に残る幼少期の遊び」はこちら

「都市部のテナント型の保育園って、面積等の条件がある中でどう作っていくか、ということが課題になってくるんです。
でもそういった条件があっても、のびのび遊べて、建物も面白くって、楽しかったよね、懐かしいね、って思い出して話してもらいたい。そう考えました。」
波型装飾ルーバーの天井や、四季の植物が植えられた屋上の園庭。
遊びの中でのびのびと楽しく学べる場所を、施設のなかに設けました。

屋上庭園の様子。
2021年にはキッズデザイン賞グッドデザイン賞を受賞しました。

“こどものための場所”を思い浮かべると、白やパステルカラーといった明るい印象の装飾が思い浮かびますが、「Tre-stella square / クオリスキッズ大井町保育園」はレンガと版築塗りを用いた外観が特徴的な建物になっています。

「レンガのファサードは、室内のプライバシーと明るさを両立してくれます。
それからもうひとつ、ライティングの役割もあります。
会社や学校から帰ってきたときに、家の明かりが見えたらほっとするじゃないですか。
保護者の方がお迎えに来たり、地域の方や卒園したこども達が通りがかったときにほっとできるような、そういう、親しみをもってくれるような場所になったら良いな、とも思っているんです。」

“良いまち”は様々な観点がありますが、
楽しくこども時代を送り、あたたかな物語として思い出話ができるということも、その一つかもしれません。


The Hundred is there

こどもも大人も、一人の人間として暮らしを育む日々のよりどころ。

こどもと大人、どちらかだけではなく、
その両者が今日も同じまちで暮らしています。

だからこそ、お互いを大切に尊重しあえるそんなきっかけになる場所があることで、そのシンボルとなる建築があることで、
ひとつの物語を、その記憶を共有することができます。

まちで生活するみんなにとって、よりどころとなる「育む空間」。
こどもと大人、両方にとってのまちの「育む空間」の物語をブルースタジオはチームでつくっています。

今回紹介した事例についてもっと詳しく知りたい方に

・まちのこども園 よよぎこうえん
portfolio:https://www.bluestudio.jp/portfolio/po004491.html
施設ホームページ:https://machihoiku.jp/yoyogikoen/
・Tre-stella square  / クオリスキッズ大井町保育園
portfolio:https://www.bluestudio.jp/portfolio/po011412.html
施設ホームページ:https://quolis-kids.com/112_oimachi/

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