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浮世絵

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広重の雪の浮世絵、ベスト4を選んでみた

広重の雪の浮世絵、ベスト4を選んでみた

雪景色を描くのがもっとも上手い浮世絵師は誰かかと問われれば、やはり歌川広重が筆頭にあげられるでしょう。しかも、ただ単に雪景色をたくさん描いているだけでなく、その構図は作品によってさまざまに工夫が凝らされています。そこで、広重の雪の浮世絵から、傑作の4点を筆者の個人的な好みで選んでみました。あなたはどの雪景色が一番好きですか?

※記事の最後に人気投票結果があります。かなりの接戦になっていますので、

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雨の浮世絵ベスト4を選んでみた

雨の浮世絵ベスト4を選んでみた

浮世絵には、雨の景色を描いた名作が数多くあります。そこで、雨の浮世絵ベスト4を個人的な好みで選んでみました。今回は、1人の浮世絵師につき、1点の作品に限定しています。

①歌川広重「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」歌川広重には雨を描いた傑作が数多くあります。「東海道五拾三次之内 庄野 白雨」や「近江八景之内 唐崎夜雨」など、一つに絞るのはとても難しいのですが、やはりここは大定番の傑作を選びました

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花魁たちは髪にかんざしをどこまで挿すことができるのか、数えてみた。

花魁たちは髪にかんざしをどこまで挿すことができるのか、数えてみた。

花魁といえば豪華絢爛なファッション。なかでも目を惹くのが、簪(かんざし)・笄(こうがい)・櫛(くし)といった髪飾りです。一般の女性たちであれば、控えめに数本挿す程度ですが、花魁たちはこれでもかというくらいド派手に盛り付けます。

それでは、花魁たちはどれくらいたくさんのヘア・アクセサリーを挿しているのでしょうか?6人の浮世絵師たちが描いた美人画の中から、華やかな花魁たちをピックアップしてみました。

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おいしいの視線の先は?―月岡芳年「風俗三十二相 むまさう 嘉永年間女郎之風俗」

おいしいの視線の先は?―月岡芳年「風俗三十二相 むまさう 嘉永年間女郎之風俗」



満月の輝く夜、建物2階の縁側で女性がにこやかな表情をしている。右手に持つ串の先に刺さっているのは、天ぷらだ。しっぽがあるので魚であろう。メゴチかキスだろうか。

染付の大皿に天ぷらが盛られ、縦じま模様のそばちょこには、天つゆがなみなみと注がれている。

江戸時代の庶民たちに人気のグルメといえば、そば、すし、うなぎ、そして、天ぷらである。江戸の町でいう天ぷらとは、魚介類にうどん粉をまぶして、ごま

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橋に抱く江戸への郷愁ー小林清親「東京新大橋雨中図」

橋に抱く江戸への郷愁ー小林清親「東京新大橋雨中図」

小林清親は、明治時代のはじめに東京の風景を描いた浮世絵師である。西洋の石版画や写真の表現を取り入れ、江戸時代の浮世絵にはない、光と影の移ろいを捉えた「光線画」と称される木版画を生み出した。その最初期に制作された作品が、この「東京新大橋雨中図」である。

隅田川に架かる新大橋に、雨がしとしとと降り注ぐ。空に広がる雨雲は薄くなりつつあるので、雨はもうすぐおさまるだろう。

川の揺らぎや、水面に反射する

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江戸・明治時代の明智光秀はこんな顔をしていました

江戸・明治時代の明智光秀はこんな顔をしていました

NHK大河ドラマ『麒麟がくる』の主人公になった明智光秀。江戸時代から明治時代にかけて刊行された浮世絵の中にも、明智光秀の姿はさまざまに描かれています。今回は、太田記念美術館のコレクションの中から、明智光秀が登場する浮世絵を探してみました。

まずは、歌川芳虎の「名将四天鑑 小多春永公」。元治元年(1864)作。江戸時代は、戦国武将たちの名前をそのまま表記することができませんでしたので、それに近い名

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江戸っ子たちに人気の日本酒を探してみた

江戸っ子たちに人気の日本酒を探してみた

東海道や中山道など、五街道の起点となる日本橋。北側に魚市場があったこともあって、日本橋を描いた浮世絵を見てみると、江戸時代の食文化に関するさまざまな情報を発見できます。

こちらは溪斎英泉の「江戸八景 日本橋の晴嵐」。大勢の人々で密になっている日本橋のにぎわいが描かれています。

マグロやカツオなどの鮮魚を運ぶ人。

大根を運ぶ人もいます。

なにか食べ物らしきものを売っている人も。

そんな中、

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江戸っ子は雨が降ると、みんな裸足になるのか、調べてみた。

江戸っ子は雨が降ると、みんな裸足になるのか、調べてみた。

先日のTwitterにて、こちらの歌川広景の「江戸名所道外尽 四十六 本郷御守殿前」を紹介したところ、雨の日はみんな裸足なの?というご質問がいくつかありました。

たしかに雨が降るなか、みんな裸足です。実は、筆者はこれまでまったく気にしていなかったのですが、言われてみれば「なるほど」と思い、早速調べてみました。

たとえば、雨の名作、歌川広重の「江戸名所百景 大はしあたけの夕立」。

左端にいる2

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明治の石造アーチ橋に秘められたストーリー

明治の石造アーチ橋に秘められたストーリー

太田記念美術館では2020年10月10日~11月8日に「江戸の土木」展を開催。「土木」というキーワードで、江戸の成り立ちの様子を、浮世絵を通して眺めてみようという展覧会ですが、その見どころをご紹介します。

今回は、明治の石造アーチ橋にまつわるお話。

〈常盤橋〉唯一現存する明治の石造アーチ橋

三代歌川広重「古今東京名所 常盤橋内 印刷局」(個人蔵)

これは三代歌川広重が描いた、明治時代の常盤

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富士山はどれくらい遠くから見えるのか、北斎と広重に聞いてみた。

富士山はどれくらい遠くから見えるのか、北斎と広重に聞いてみた。

歌川広重の「冨士三十六景 下総小金原」。手前に大きく描かれた馬が印象的な作品です。小金原は幕府直轄の馬の放牧地。現在の千葉県北西部、松戸市、鎌ヶ谷市、船橋市付近に広がる原野でした。

広がる草原の先に、富士山の姿が小さく見えています。

この場所は富士山から100キロ以上離れているのですが、そもそも富士山はどれくらい遠くから見ることができるのでしょうか?

現代の科学技術を駆使すれば詳細に分析する

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はみ出す富士山ー広重と北斎

はみ出す富士山ー広重と北斎

東海道に53ある宿場町の中で、富士山の巨大な姿を堪能することができた場所が、原宿です。現在の静岡県沼津市原に位置します。

歌川広重は、「五十三次名所図会 十四 原 あし鷹山不二眺望」を描く際、富士山の巨大さを強調させるテクニックを用いています。

富士山の山頂を、作品の枠線からはみ出させることによって、富士山の高さをより印象強くしているのです。

実は、広重は東海道の原宿を描く際、このテクニック

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江戸時代のお蕎麦屋さんをご紹介します。

江戸時代のお蕎麦屋さんをご紹介します。

江戸っ子たちが大好きだったグルメといえば、蕎麦。今回は、浮世絵の中に描かれたお蕎麦屋さんをご紹介します。

まずは、屋台を担いで蕎麦を売り歩く、夜蕎麦売りの浮世絵から。歌川国貞の「今世斗計十二時 寅ノ刻」です。寅ノ刻とは深夜3時から5時ごろのこと。岡場所の遊女が描かれていますが、左上をご覧下さい。

こんな深夜まで、蕎麦を売り歩いている夜蕎麦売りの様子です。屋台に風鈴が2つぶら下げられているところ

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ハロウィンは妖怪双六で遊ぼう!

ハロウィンは妖怪双六で遊ぼう!

10月31日はハロウィン。そこで、お化けが登場する、歌川芳員の「百種怪談妖物双六(むかしばなしばけものすごろく)」で遊んでみましょう。この作品は子供向けのおもちゃとして作られた浮世絵版画。一コマ一コマに妖怪が描かれている双六です。

※この作品は現在展示していません。

遊び方は、①サイコロを用意します。②スタートは1の【ふり出し】。サイコロを振り、出た目の指示に従い、そのコマまで画面をスクロール

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太田記念美術館がこれまで監修した書籍16冊+αをご紹介します。

太田記念美術館がこれまで監修した書籍16冊+αをご紹介します。

太田記念美術館では、2015年から、日本全国どこにいる方たちへも浮世絵の魅力が届けられるよう、出版社さんと協力して書籍を制作してきました。出版社から刊行することによって、全国の本屋さん、あるいはAmazonなどのネット通販で気軽に購入することができるようになります。

最初の書籍を刊行してから早6年。気が付きましたら、その冊数は16冊になりました。他の美術館さんと比べても、かなり多い冊数ではないか

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