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唐突ですが、このNoteアカウントは以下サイトに移設しました。

    • 『機会の平等』を重んじる現代の欺瞞について

       人権を大事にしてやまない先進国でさかんに叫ばれる言葉、それが『平等』というもので、あらゆる場面において「それは不平等ではないか」と第三者が申し立てた異議をもとに構造全体が見直される、という動きはよくあるものだと思う。僕たちは実際、平等という原理を大切な考え方として遵守しているように思うし、平等が重要か否かという議論を行えば、我が国に住むほとんどの人間は「yes」と首を縦に振ることだろう。  しかし平等をテーマにした諸問題において、「それこそが平等だ」と全員が納得し、滑らか

      • 櫻井翔と真実報道について

         ……というタイトルで書きますが、決して、ジャニーズ性加害の実態というような話をするわけではないことは断っておきます。つい昨日、Zeroで櫻井翔がジャニーズ性加害に関して言明したことについて、その内容及び、報道においての日本人的な姿勢について書くつもりです。  上の動画を一通り見ましたが、申し訳ないものの「何も言っていないのに等しい」という感想を抱きました。しかしそこに失望感というものはあまりなく、むしろ「まあ、そりゃ何も言えないよね」という納得感のほうが強かったように思い

        • 女たちの目論見を破壊せよ――私たちもそこに行く——

           先日、憂鬱なニュースを見かけてしまった。  要約すれば、各理学部の女子学生の数は非常に少なく、大学のジェンダーバランスが保たれている状況とは未だに程遠いという。 確かに自分の体感からしても、理学部の女子率というのは非常に低く、それは理学部だけではなく、工学部などでも同じことが言えるだろう。そしてそれらの環境において「女子の意見も必要だ」「女子の意見を取り入れることで多様なアイデアが発生する」というのは、もちろん一理ある。また、東工大などとのそれとは違い、入試において

          『推しの子』の炎上について

           推しの子がどうやら炎上(?)してるみたいで、その件を見て勝手に手が動いていたのでこうして書いています。  炎上の原因となったのは、六話のアニメでした。  アニメで使用された場面が、木村花さんの自殺までの状況と酷似しており、それについて遺族側が抗議しているという構図になっているようです。実際に作者がこれを認めるといった内容に関しては確認できておらず、そこが作者と見解が一致しているのかどうかについてはまだわかりません。そこは了承の上です。  それに対して木村響子さんのツイ

          『推しの子』の炎上について

          拗ねることなんて、いくらでもできるはずだ

          ふとしたきっかけでひとつの動画に出会った。 チャンネルを登録していたわけでもないのだけれど、動画内での一言が刺さる、といった感じで、少し話題になっていた。 動画の主は、通称「バキ童」という方で、とあるインタビューで性交渉の経験を聞かれた際に「バキバキ童貞です」と颯爽と答えたことからこの呼び名が広まったことは有名だった(?)ので、名前は知っていた(以下、ぐんぴぃ氏と書きます)。 ということで、この動画を見てみたのだけれど、端的に言って、Youtubeでは経験したことのない

          拗ねることなんて、いくらでもできるはずだ

          縮小する出版業界と『一筋コンプレックス』なるものについて

          先日、書店に行って、前からほしいと思っていた『鴨川ランナー』を探していた。しかし、書店には置かれておらず、検索機を使うもののヒットせず。一応と思って、店員さんに聞いて最後の悪あがきを試みたのだけれど、出版状況がなく、取り込みも不可能、とのこと。 で、そこでふと実感した。 ここ、京都じゃなかった、と。まさか、京都から引っ越したことを、こんな形で実感するとは。 『鴨川ランナー』は、グレゴリー・ケズナジャットさんのデビュー作で、京都文学賞を受賞している。 たしかに、ここは京

          縮小する出版業界と『一筋コンプレックス』なるものについて

          誰一人として排除されない世界を……

          目指しましょう……!! すき好みとかで、人の社会的な地位が左右されるべきではない国を、みなさんで作り上げていきたいですよね。あ、あそこのお偉いさんが、どうやらオフレコで同性愛者への嫌悪感を露わにしたいみたいです。差別主義者は置いておけない! 更迭しましょう! ほらこれで、すき好みとかで人の社会的な地位が左右されるべきではない国に、一歩近づきましたね~! ということをやっているの、みんなほんとに、これでいいと思ってるの? というのを、どうしても、思わざるを得ない。 好まし

          誰一人として排除されない世界を……

          同性婚は認めちゃだめだと思っている

          岸田総理のニュースを目にしたので、そのへんについて思ったことを書きたい。 この記事自体は、なんというか、この総理お得意の「何も言ってないのに等しい」感が出ている。そりゃ、同性婚を認めるとしたら従来の家族観が変わるに決まってるでしょっていう。固定観念を重視する層を招きかねないって、そりゃあないよな、と。一生、何も変わりませんやん。 とはいえ、同性婚を反対することにインセンティブはあると思っていて。 結論から話すと、同性婚を届け出た際、それが本当に性的嗜好によるものなのかを

          同性婚は認めちゃだめだと思っている

          朝などやってこない家族【『朝が来る』を読んで】

          辻村深月さんの本を読むのは二回目。前作は、『傲慢と善良』だった。 二作目に読んだのがこの作品だったのは偶然で、知り合いに紹介してもらったから。 ※ネタバレします 「朝が来る」というタイトルから感じられる希望は、本作の前半でしか見いだせず、後半、養子となる子どもの産み親となった中学生ひかりの章においては、どこにも”ひかり”がないような絶望感に、読者もともに吸い込まれていく。 最後は、育ての親である佐都子がひかりを助けるシーンで締められる。そこには、ひかりのどうしようもな

          朝などやってこない家族【『朝が来る』を読んで】

          "感性"よりも"正解"がほしい【『三行で撃つ』を読んで】

          賞の関係で知り合った方に、本を勧めていただいた。 ハウツー本(?)と括るのが正解かわからないけれど、書くためのスキルについて書かれたもので、耳が痛い話が多かった。著者は朝日新聞の編集員の方らしく、小説の書き方という面から指南されたものではないが、「文章で惹きつけるための力」という点で、多くが繋がっていた。 感想の結論から言うと、ここに書かれているのは「ただしい」ことだ、と説得力があったからこそ、書かれていることが、自分にはピンとこなかった。 平たく言えば、著者の主張は、

          "感性"よりも"正解"がほしい【『三行で撃つ』を読んで】

          結婚しない人生は不幸、ということでいいんじゃないか

          ……なんてことを書くと多方面から怒られそうだし、そんなタイトルで惹きつけるのも姑息だとは思うのだけれど、正直、半分くらい本当に、そう思っています。とりあえず、今は。 こういう文章を見ると、なんかめちゃくちゃモヤモヤするんですよね。結婚しない権利。多様性の尊重。古い価値観に振り回されるな。あなたらしくいれば、それでいい。 こうした考えのいちばんにマズいところって、自分の考えで傷つける、あるいは損失を与える者の存在を視界から排除した発言なところだよなあ、と思う。2022は出生

          結婚しない人生は不幸、ということでいいんじゃないか

          膜は何を隔ててきたか【『透明な膜を隔てながら』を読んで】

          新年一発目に読んだ本として、これ以上ない満足感だった。 『彼岸花が咲く島』で芥川賞を受賞された李琴峰さんのエッセイである。何度も書いてきたことだけど、僕は本当に純文学には疎い人間なので『彼岸花が咲く島』も読んだことがなかった(しかしこれを契機に読もうと思った)。にもかかわらず本作を手に取ったのは、他の李琴峰さんの著作を読んだことがあり、それが『生を祝う』だった。 amazonのリンクの挿入写真を見てもわかるとおり、朝井リョウさんが帯にコメントしており、これはどちらかという

          膜は何を隔ててきたか【『透明な膜を隔てながら』を読んで】

          読書レビュ―【2022/10~12月】

          今までに比べると少し多く読んだので、年末ということで、三か月ぶんのレビューを今年のうちに書いておくことにしました。ついでに、最後に、今年の振り返りを少ししておこうと思います。 『かんむり』/『あのひとは蜘蛛を潰せない』/『新しい星』彩瀬まる めちゃくちゃ彩瀬まるさんの本を読みました。過去には『不在』だけ読んでいて、他の作品が気になった衝動です。彩瀬さんの特徴は何と言っても、内側から書き上げるような女性像だと思います。『新しい星』は直木賞候補になっていますが、個人的にはこれ

          読書レビュ―【2022/10~12月】

          Youtubeのドッキリ企画と、神がいない問題【『スター』を読んで】

          『正欲』ばかりに気が取られていたので、同じく朝井リョウさんの作家十周年記念の作品である『スター』を手に取った。 ※惜しまずネタバレをします 大学時代に映画製作で賞をとったコンビである尚吾と紘は、大学の卒業後、映画製作会社とYoutubeクリエイターという二手に分かれて活動し、その両者の視点から、作品を作るとは何か、時代のスターは誰か、そうした問いかけを与える作品だった。 結論から言うと、クリエイター心にかなり刺さるものだったと思う。そうそう、と思わず首を振って頷いてしま

          Youtubeのドッキリ企画と、神がいない問題【『スター』を読んで】

          世界は戸締りされるべきなのか【『すずめの戸締り』を見て】

          せっかく見たので、感想を書く。 ネタバレします。注意してください。 映画化された過去の二作(『君の名は』と『天気の子』)に比べると、とにかく、「ああ、そこまで踏み込んじゃったのね」的な感想を抱かせる作品だった。過去の二作は、現実では決して起きない世界系の出来事をモチーフに、人々に忘れてはいけない普遍的な何かを問いかけたものだったと思うのだけれど、今作ではそのテイストが大きく変わった気がする。もちろん、地底のミミズとか、そのへんは壮大なフィクションなのだけれど、やはりそれを

          世界は戸締りされるべきなのか【『すずめの戸締り』を見て】