【映画】“懐かしさ”が恐怖だったあの頃
※この投稿は映画『インサイド・ヘッド2』の若干のネタバレを含みます。映画の本筋には一切関係のないネタバレですが、一応お気をつけください。
幼い頃、異常に怖がっていたものがあった。
それは、“大人が懐かしがる瞬間”である。
正確には、大人同士で話す「あれ、、、なんだっけ?」からの「○○じゃね?」▶︎『あぁー!!!それだそれ!!!』の瞬間である。
12月30日。毎年この日は父の高校の同級生(おじさんたち)が私の家で忘年会をやる。そういう決まりになっている。
高校の同級生(おじさんたち)は毎年同じような酒を飲み、同じような会話をする。その時の私はというと、面白いおじさんたちだなぁとその輪に入りながら小袋のお菓子をポリポリ食べ、アメトーークの年末スペシャルを見ている。私の物心がつく以前からこの会が行われていたため、年末の恒例行事の一環としてこのおじさんたちの飲み会は私の人生に刷り込まれている。
時間が経つに連れ、お酒の入ったおじさんたちの声は段々と大きくなる。
その時に、先述したような内容の会話が行われるのだ。
父「そういえば、俺等の部活でそんな事あったよなぁ、、、あれ誰だっけ、、、」
おじさんA「◯◯じゃね?」
父『そうだ!!!そいつそいつぅ!!!』(くそでか大声)
この会話が起きる度、私は無性に背筋のあたりがムズムズしていた。
それは例えば夜中に一人でトイレに行くときの感覚に近いものであり、知らない人にいきなり声をかけられたときのような感覚に近かった。
私はなぜその会話に恐怖を感じていたのか。ほんの最近まで原因がわからなかった。
それまでは単純にいきなり大声を出す父にびっくりしていたのではないかと思っていた。
確かに、思い出せなかったあの単語、あの瞬間が誰かの一言によって鮮明に取り戻されていく感覚。その気持ちよさに勝るものはそうそうない。お酒が入っている状況ならば俺だって大きな声を出して気持ちよくなる。
しかし最近、その恐怖の根本の輪郭がやっとつかめた気がした。
それがタイトルにもある”懐かしさに対する恐怖”である。
厳密には、まだ自分の知りえない懐かしいという感情に対する恐怖である。
この考えに至った要因として、とある2つの映画が挙げられる。
それが、
『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』と
『インサイド・ヘッド2』
である。
オトナ帝国では、20世紀博と呼ばれるいわゆる懐かし展覧会みたいな場所に大人たちが没頭している様子と、そんな親を冷めた目でみる子どもたちの様子が描写される。
子どもたちの預けられる場所にて、風間くん(たしか)が「懐かしいって、そんなにいいもんなんかね」みたいなことを口にしていた(気がする)。
要するに、子どもたちは”懐かしい”という感情を理解することができないのだ。多分そういうことだ。
なぜなら子どもたちはものを懐かしめられるほど長く生きていないからである。
この映画を見て、たしかに子どもにとって懐かしいってよくわからんだろうなぁという感想を抱いた。
そこに追い打ちをかけたのが、最近上映された『インサイド・ヘッド2』である。
思春期に突入した少女ライリーの頭の中にシンパイ、イイナー、ハズカシ、ダリィという新しい感情たちが登場する、、、というのは全てのCMにて公開されている情報である。
しかしこの映画、どの媒体にも登場していないもう一つの感情が作中ほんの少しだけ登場するのだ!!!
それが、ナツカシというおばあちゃんキャラである。
このおばあちゃんキャラの登場シーンは殆どないと言っても等しい。
しかし私はこのキャラクターの登場で(この映画、すごいかも、、、!!)と思ってしまった。
オトナ帝国を見るに、子どもは懐かしいという感情を理解できない。しかし思春期に突入するにあたり、新しい感情たち(シンパイら)とともにナツカシ(懐かしい)という感情が登場するのだ!!
そこでようやく私は、年末に酔っ払ったおじさんたちの大声に怯えていた理由が何となくわかった気がした。
当時の私は、大人たちの得る”懐かしい”という感情を知らなかった。しかし大人たちはナツカシを引き起こす単語を耳にした途端全員が共感するかのように大声をあげ気持ちよくなっている。
その共感に私だけついていくことができず、疎外感を感じていたのだ。そんなふうに思っている。だから一連のその会話が苦手だったのだ、そう結論付けたい。
人は知らないものを目前にした時、恐怖を感じる。
少なくとも私はそう思っている。だから勉強は大事なんだよと私は塾や小学校の子どもたちに説明している。
当時の私が恐怖を感じていた対象は、紛れもなく当時私がどう足掻いても知ることのできなかった未知なる感情であった。
映画を見ると、そんなことに気付かされる事がよくある。
みなさんは幼かった頃、何に恐怖を抱いていましたか?
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