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練武知真第41話『動中静を学ぶ為の武術』

『動中静』。

動きの中にある「動かないもの(静かなもの)」或いはその状態を表す言葉。

 

中国武術では幾重もの意味で語られます。

 

例えば、闘いにおいて、激しく動きながらも冷静な判断力を維持して対処する。

闘争心を発揮しているけれど、冷静な思考を持っている。

 

いざという時に的確な対応ができるのはこういう心身の状態です。

心が動き、体が動き、しかしながら頭は冷静。

これはとても分かりやすい意味での『動中静』です。

 

さらに修行が進むと

体にも、頭にも、そして心にも『動中静』が整うようになります。

 

『体の動中静』とは・・・

身体は臨機応変に激しく動きながらも、そのコア(体幹・腰など)はぶれることなく安定性を維持していること。

 

例えば「八卦掌」という武術は、高い全身連動性と円弧を描くフットワーク、変幻自在な身体運用で敵を多角的に攻めます。

当然身体の使い方は複雑になりますが、腰や体軸という【コア】で全てを運用する事によって安定性を確保しています。

 

『頭の動中静』とは・・・

頭が機敏によく回り、状況把握や判断が素早いながらも、冷静な思考を手放さないこと。

 

「八卦掌」では対複数戦を想定していることから、戦場を俯瞰する特殊な思考をベースに置いています。

目の前の敵に対して対応しながらも、周囲の状況を常に全体視する感覚です。

 

『心の動中静』は・・・

感情豊かながらも落ち着きがある状態。

感情が豊かだと感受性も高くなり、楽しみも増え、他者とのコミュニケーションが取りやすくなります。

それでいて他者に振り回されたりしないドッシリとした落ち着きもある。そんな状態です。

 

理想的な武術家は、小さい事にはこだわらず、相手を包むような大きな器を持ち、それでいて「ここは譲れない」という時にはシッカリと主張し行動する者だと私は思っています。

 

また『動中静』の考えは日常生活に置き換える事もできます。

 

バタバタと慌ただしく「動き回る」日常の中に、「静かな時間」を作ることなどがそうです。

 

「動」の一辺倒で、いつも張り詰めていては心がプッツリと切れてしまいます。

頭も体も疲弊して壊れてしまいます。

「動」だけで構成された日常は、機械ならともかく、人間ではやがて限界が来る。

頭にとっても、体にとっても、心にとっても「静かな時間」を取る事で、動と静のバランスを取る必要があるのです。

 

そして、武術を長年修行することによって、さらにその先へと『動中静』を深める事ができます。

それは、あらゆる【動】の中に【静】を含めること。

動と静の共存が可能になります。

心も体も頭も活発に動きながら、

心は穏やかで、頭は冷静で、体は安定している境地。

 

『動と静の調和』した人間。

これは武術家として、そして、人間として、私の目標とする人物像なのです。

 

 

 

2024年11月27日 小幡 良祐

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