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王女殿下のウォーバーズ

 絶え間ないレシプロエンジンの轟音と機関砲の射撃音が大気を震わせる。
 傭兵どもの駆る戦闘機が空中戦を繰り広げる空の下、おれは大破状態で地面に転がる愛機の翼の上で途方に暮れていた。
 プロペラは曲がり、主脚は折れ、尾翼は胴体後部ごと行方不明。修理不可、替えの機体を買うカネもなし。終わりだ。

「もし」

 空戦の轟音に混ざり、かすかに女の声が聞こえる。幻聴まで出てきたか。明日には国へ帰ろう。民間航空の働き口はあるか。いっそパイロットなど諦めて……

「もし!」

 すぐ後ろからの大声に驚き、情けない格好で翼から転げ落ちた。残り僅かなプライドを賭け、翼の上を睨みつける。

「誰だお前、いつの間に……!」

「失礼しました。道に迷ってしまって」

 逆光を受けて、女の金髪が輝いた。およそ戦場に不似合いな真新しいドレスがはためく。
 女のものらしいジープの車体には「ズヴェリエ王立航空機会社」とあった。

 飛行機乗りの直感が、向かい風を感じた。

【続く】

タイトル画像: https://unsplash.com/photos/E9aetBe2w40

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