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逆噴射小説大賞2021自作

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逆噴射小説大賞2021反省会

(参加したもの)

 どうも。今年も逆噴射小説大賞お疲れさまでした!
 毎年振り返りで言い訳ばかり書いている気がしますが、今年に関しては在宅生活などの影響もあって1年通して読書量も創作量も(日記はたくさん書いたが……)近年最悪クラスに積めておらず、結果前年に輪をかけてモチベーションもパフォーマンスも低下気味。
 いかんせん前回結構いい結果を出してしまったというプレッシャーもあり、非常に苦しんだ期間

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サラエボの日

サラエボの日

 1914年6月28日。オーストリア=ハンガリー帝国領、サラエボ。
 僕は小さなカフェから、窓の外で道路にずらりと並ぶ人々の喧騒を眺めていた。彼らの目当ては、オーストリア大公フランツ。皇位継承者の姿を一目見ようと、あちこちから人々が集まっているのだ。

 その群衆から少し離れたところに、挙動不審な男が一人。彼の名はムハメド。大公を暗殺せんと目論み、この場に集った過激派セルビア人グループの一員。この

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我らが風紀委員長

我らが風紀委員長

「先生、現代史資料集のこの部分なんですが……」

 その生徒は授業用端末を差し出しつつ、困惑と諦めが混じった声色でそう言った。こういう相談を受けるのは何度目だろうか。
 受け取った端末の画面を確認すると、それは21世紀初頭の産業について説明するページだった。情報通信技術の進化について説明する文章の後に、検閲済みと表示された空白。

「……確かに資料写真が非表示にされてるね」
「ここって現代産業の話

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ラベージブリンガー

ラベージブリンガー

 気づいた瞬間、私の拳は眼前の男を殴りつけていた。
 顔面に突然の一撃を受けて表情を歪め、鼻血を吹き出して昏倒する男を、その場の誰もが一瞬、他人事のように呆然と眺めていた。

 彼らが状況を理解したのと、気を抜くなとばかりに私の両腕が震えたのは、ほぼ同時。 

「テメェ!」

 手近な男が銃を構えようとした瞬間、左腕が鋭く動き、その銃を叩き落とす。そのまま鋭いチョップが男の首へと突き刺さり、一人が

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