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平成最後の強盗バトル

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第2回逆噴射小説大賞を前に懺悔する

 逆噴射小説大賞、始まっていますね。初日から、というより初日以前から精力的に800文字の熱いパルプ作品が発表されており、今年も10月は熱い月になりそうな予感が漂っています。

 で、私も良さそうなものを2、3思いついてはいるんですが、その前に自分の中で懺悔を済ませるべきことがある、ということでタイトル通りの記事です。
 一応自分の中ではこの場に書き出しておくことに意味があると感じていることではあり

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平成最後の強盗バトル #7

平成最後の強盗バトル #7

前 事実は小説よりも奇なり。ドラマにしたら陳腐な出来事も、それが現実にあったことだとなれば、長く人の記憶に残り続ける。昭和の三億円をめぐる事件が、平成も終わろうという今日に至るまで、忘れられることがなかったように。
 しかしそう思い通りに面白い「事実」は起きてくれない。であれば作ってしまえばいい。少なくとも誰かはそう考えてこの企画を作ったようで、私達の元にこの仕事の話が持ち込まれたとき、無茶と分か

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平成最後の強盗バトル #6

平成最後の強盗バトル #6

前 おれたちを乗せたバンは郊外の商業ビルの地下駐車場に入った。この車はもうナンバーも割れているだろうから、このまま乗り回し続けるのは自殺行為に等しいだろう。そこまでは想定済みだ。自分たちの側から警察に喧嘩を売るようなことになるのは想定外だったが。

「よし、乗り換えだ。すぐに金を積み替えられるように準備しておいてくれ」

 事前に停めておいたハッチバックの隣にバンを停め、車から降りる。当初予定して

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平成最後の強盗バトル #5

平成最後の強盗バトル #5

前 「ふざっけんなテメ」反射的に飛びかかった荒木田が殴り飛ばされ、唸り声を上げながらアスファルトに転がった。「単細胞め。二度目はないぞ。お前達も余計なマネはするな」おれは荒木田の頭に向けて突きつけられた拳銃を睨みつつ、おとなしく両手を挙げた。

「なあ、日本の治安はいつの間にここまで悪くなったんだ?」

「私たちの言うことじゃないですけどね……」

 同じく手を挙げた月本が言う。大強盗が四人まとめ

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平成最後の強盗バトル #4

平成最後の強盗バトル #4

前 奴らのバンが大きく蛇行し、パトカーに衝突した。大きくバランスを崩したパトカーが、並走する別のパトカーに突っ込んで、二台は絡み合ったままガードレールに勢いよく追突する。おれたちを載せたバンはその脇ギリギリのところを走り抜け、残った一台のパトカーの背後につけた。

「そんでそんで、ここからどうするよ?」

「ひとまずあのパトカーを潰す。その上で奴らに共感する仲間のフリをして近づく」

「そう上手く

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平成最後の強盗バトル #3

平成最後の強盗バトル #3



「で、結局どうやって連中を捕まえるつもりなんですか?」

「それなんだけど、どうも向こうの方から出てきたみたいだよ」

 大房の声に、おれは内心で喝采を送った。ここで実はまだノープランだと言い出したら(主に月本からの)苛烈な攻撃は免れなかっただろう。
 「どういうことだ?」「これ見ればわかるよ」後席からタブレットが差し出される。またよそ見運転かよ。ちらりと横目で画面を確認し、すぐに釘づけにな

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平成最後の強盗バトル

 2019年4月30日。おれたちは現金を満載したバンに乗り、国道を飛ばしていた。
 後席の仲間たちが大量の万札の中で叫びまくる。
「『平成最後の大強盗』万歳!」

 世の銀行強盗に真っ当な動機なんてものがあるかは不明だが、おれたちの動機は不純を極めていた。どうせ食い詰めた身、死ぬより前にデカいことをしたい。言い合う酒の席で「平成最後の大強盗」が最高の響きだと言い出したのは誰だったか。

 突然、助

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平成最後の強盗バトル #2

平成最後の強盗バトル #2



 路肩に止めたバンの車内で、おれたちは各自の端末を使ってニュースを追いかけていた。

「東京都内の銀行で強盗 犯人は逃走中 白昼堂々の犯行に……」

「犯人は国籍不明、男の四人組で、二台の黒いバンに乗って逃走中。現在警視庁が行方を追っているとのことです。近隣の学校では集団下校が……」

 各社ニュースサイトのトップは強盗一色に変わり始め、TVも続々と特別ニュースに切り替わった。SNSのトレン

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