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【心霊体験】人生初の反撃

これはある年の夜中の出来事だった。
寝ていた私はふと息苦しさで目が覚めた。
体の感覚がおかしい、しんどい、苦しい・・・。

キーンと耳鳴りがしたと同時に体が動かなくなってしまった。
どうやら金縛りにかかったようだ。

目を開けたくても開けられず、体のどこも動いてくれない。
パニックになった私は何とか体を動かそうとするが、微動だにしなかった。

ニヤリ。

そういう心の余裕のようなものを感じ取った。
誰かが私を嘲笑っている。
一体何者だ?

布団の上から何かしらの感触があった。
どうやら、何者かが私の体をぐいぐいと押しているようだった。
しばらくは「あっちいけ!」とか「消えろ!」みたいに心の中で必死に拒絶していた。

ニヤリ。

更に相手の本音のようなものが私の心の中に入って来る。
相手は私がてんてこ舞いになっているのを見て面白がっているようだった。

もうダメだ!

諦めかけた時に相手は消え失せてしまった・・・。
あれは一体何だったのか。
死霊?それとも生霊?

冷たい感覚はなかった。
ぬる~っとした嫌な感じがした。
例えると梅雨のジメジメしたあの感じか。

生霊ではないかと推測する。
霊感が強いわけではないので確証は得られないが。

後日、この存在の正体が判明する。
コンビニのバイト仲間だった。
自称社員並みに仕事が出来る!と威張り散らしている人物だった。

多数の人々から恨みを買いながらも持ち前のハッタリと強運で乗り切ってきたという化け物じみたスペックの持ち主であったために、向かうところ敵無し状態、その姿はまさに暴れ馬。

近づくものは蹴り倒されて再起不能にさせられてしまうであろう。
そういう威圧感さえ漂っていた。

その性格はかなりえげつなく、経営者ですら手を焼くほどの厄介な存在。
一緒に働いた者はエネルギーをむしり取られて精神的に消耗するか病気になるまで追い詰められてしまっていた。

エネルギーバンパイアという存在なのだと思われる。

私はあまりその人に深入りすることはなかった。
関わったら面倒だから。
それが相手にも伝わったに違いない。

私という存在が面白くない、ちょっと嫌がらせしてやろう・・・というような思いから念を飛ばしてきたのだろう。

ある日の夜中、いつものように寝ていたのだが、急に目が覚めた。
肌が感じ取ったのは不穏な空気だった。
真っ暗な部屋であるのに、何故か異質ななにかを感じ取っていた。

キーンという耳鳴りと共に急に体が動かなくなった。
どうやら、金縛りにかかったようだ。

ニヤリ。

間違いない、この前の生霊だな。
目を開けることも出来ず、声も出せない。
体も動かせない。

布団の上から生霊の手のようなものを感じる。
ぐいぐいと上から押してくる。
奴の余裕そうな感情が私の心に流れてきた。

私のことを馬鹿にしている!?

こんなところで負けてたまるか!
どんな方法を使ってでも反撃してやる!
私の体よ!
幽体離脱して動け!

頭の中でそういう風に念じていた。
意識が一瞬だけ前方に動く!

ガシッ!!

気付いた時には幽体離脱していた。
生霊のお腹にドロップキックを食らわしていた。
目を開けることが出来なかったのに、なぜお腹に攻撃したと分かったのだろうか。

ヒイイッ!?

生霊は何が起きたのか把握できなかったのか、悲鳴のような感情を私の心の中に流し込んできた。

効いてる!
よし、追加攻撃だ!

今度は相手の首根っこにガブッっと噛みついた!
こうなったら容赦はしない!

思いっきり噛みついてとうとう引き千切ってしまった。

!?!?!?!?

生霊は相当ビビっているようだった。
今度は生霊の方がパニックに陥っている。

間髪入れずに威嚇の言葉を投げかける。
私の言葉を聞いた生霊は猛スピードで逃げていった。

とうとうやってしまった。
生霊相手に反撃をしてしまったのだ。
やり切った感と同時に疲れがどっと出てきた。

さて、相手も相当お怒りだと思われる。
次は追い返せるだろうか?

次の日の夜だった。
また、金縛りにかかってしまった。
だが、前回とは様子が違った。

びくびく、がくがく・・・。

最初から怖がっている様子だった。
びびっていたのに何故出てきたのだろうか。
心の中で念じてみる。
幽体離脱して生霊を木っ端みじんにするようなイメージを思い浮かべてみる。

ガリッ、バリッ!

パンッっとあっけなく弾けて消滅してしまった。
生霊は出てきて早々に退散してしまったようだ。
またしても生霊を追い返すことが出来た。
ただ、あれだけびびっていたのだから、もう出てくることはないだろう。

当時の私は今のように霊と戦うほどの力はなかった。
それでも、人生初の生霊に反撃を食らわせるという結果をたたき出せたのもこの相手に対して負けたくないという意気込みと気迫があったからかもしれない。

・・・以上が私の体験した悪い念を返り討ちにした話である。

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