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そうだ、ちん毛を剃ろう。

先日、毛を剃った。髭ではなく、下の毛。

つまりは、ちん毛。

パイパン。いや、男だからパイチン?
とにかく、人生初ちん毛を剃った。


なぜ、このようなことをしたかというと、さかのぼること数週間前。昨今の新型コロナウイルスの影響で自粛ムードが漂っていた4月中旬のこと。

不安定な社会情勢・物理的にも精神的にも広がる閉塞感や、何もできない自分の無力感。

こういった背景から、僕のメンタルは深い海の底に沈んでいた。

何かしなきゃとSNSを開いても、人の汚い部分が顕在化したニュースや投稿ばかり目立ち、見るのが嫌になった。お互いの安全のため、会いたい人と今までのように気軽に会えないと、気持ちのすれ違いも起こりそうになる。おまけに、新型コロナの影響を受け、仕事は忙しくなるし、有志で参加しているイベントの準備は思うように時間が取れず、全く参加出来ない。

いろんな嫌なことが積み重なり、どこかに逃げ出したくなった。そんなある夜、僕は久しぶりに湯船に浸かり、ボーっとしていると突然、あることを思いついた。


そうだ、ちん毛を剃ろう。


何でこんなこと思いついたんだろうか、今思えば、一種の自傷行為なのだと思う。その時は、何となく剃ると気持ち良くなる気がした。

そう思いついたらすぐに浴槽から体を起こし、カミソリを手に持ち風呂場の床に座り込んだ。

ベビーオイルを1,2回プッシュし、左の手のひらに出して、股の中心部分に丁寧に丁寧に塗っていく。塗り終えたら、意を決して右手に持っていたカミソリで剃ることを決めた。ち〇こを頂点として、毛の生えている部分で逆三角形を作るとすると、左側の底辺の角部分から徐々に徐々に、丁寧に丁寧に剃っていった。

ジョリ,ジョリ,ジョリ,ジョリ,ジョリ,ジョリ,

静まり返ったお風呂場に、一定間隔のリズムが響く。

ジョリ,ジョリ,ジョリ,ジョリ,ジョリ,ジョリ

なんだか、どんどんと楽しくなってきた。実際にやったことは無いけれども、草刈りってこんな感じなのかなとイメージしながら、黒いもじゃもじゃ茂っている草をI字の鎌で刈っていった。

あらかた剃り終え、シャワーで流すと黒い塊は排水口へと流れていき、スッキリとした光景が目の前に広がった。

剃り終えたアソコは僕の知っているものではなかった

エロ動画に出てくる欧米人男性のアソコを見ているようで、数分間じっと自分のち〇こを眺めてしまった。すると、なんだか自分のち〇こが大きくなっているような、不思議な違和感を覚えた。

その時ふと、ネットでちん毛を剃るとち〇こがデカく見えるという記事のことを思い出した。考えてみれば当たり前で、毛に覆われている根元の部分が見えるようになるので、大きく感じるわけだ。

しかし、記事を読むだけなのと、実際にやってみるとでは大違い。
記事の言わんとすることを身を持って理解できた。

風呂から上がった僕は、ナルシストのように部屋にある姿見鏡で自分の股間を凝視しまくった。

だって、おっきいんだもん。

完全に深夜のテンション。ギリシャ彫刻のようなポーズをとったりして遊んでいた。もし今、泥棒が窓から押し入ってきたとしたら、逆に通報されるくらいの勢いでアホだった。

そんな撲だが、少しは理性が残っていたようで、ニベアを股間に塗るのは忘れていなかった。そのままにしておくと、痒くなりそうなので入念に塗ってから眠りについた。


・・・・・zzz


翌朝、目を覚ますや否や、パンツの中を弄り確認してみる。
すると、そこには当たり前に毛は無く、竿と玉だけがあった。

ああ、昨日のことは夢じゃなかったんだ

頭の片隅に若干の後悔はあったが、やっちまったもんはしょうがねぇということでベットから降り、出勤のため支度を始めた。

そして、ちん毛を剃ってから初めて外に出た。正直、内心すごくドキドキしていた。駅に向かう途中や、電車に乗っているとき。自分の挙動は変じゃないか、誰かにちん毛が無いことがばれやしないか、心配だった。

だが、一方でそのスリルが、快感でもありゾクゾクしていた。僕の近くを歩く人や、電車で隣に座っている人は、誰も僕のちん毛が無いなんて知りもしない。きっちりかっちりスリーピースのスーツを着ているが、実はパンツの中はツルツル。このギャップがなんだか妙におかしくて、吹き出しそうなくらい面白かった。

真面目な顔で○○をしているが、この男、下半身はパイチンである

心の中でこのようなナレーションを流すと、どんな状況でもシュールになり、笑いが込み上げてきた。そんな感じで、遊びながら1日を過ごした結果、昨日よりも心と体が軽くなった気がした。

ちん毛が無い。ただ、それだけで沈んでいたメンタルは浮力を取り戻し、少しでも前向きになろうという想いが溢れてきた。

すごい。すごいすごいすごい!!!

気分が上がったからといって、嫌なニュースが無くなるわけでも、会いたい人に会えるようにも、仕事ややるべきことがすぐに終わるわけでも無いけれど、”頑張ろう、一歩ずつ進んでいこう”という気分になれた。

深夜のテンションで始めた脱毛に、こんな形で救われるとは思ってもみなかった。

ありがとう、ちん毛。ありがとう、パイチン。ありがとう、ありがとう・・・。



・・・本当にありがとう。




・・・・





・・・・そんなことを思っていたが、数日後には新しく生えてきたちん毛がチクチクしてかゆくてかゆくて仕方なかった。

ちん毛に感謝を捧げたことを深く後悔し、次はもっといい方法で脱毛しようと決意した。

おしまい。


#キナリ杯 #エッセイ



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