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Illinoise Musical /Sufjan Stevens

8/10までの終演が近付く中、
妻の粋な計らいで Rush Ticket(当日割安券)を手に入れ、仕事終わりに、Sufjan Stevensの名作アルバムをベースにしたミュージカルIllinoiseを観て来た。

Musical "Illinoise"

この作品は、2023年夏のバード大学での約1週間の初演→2024年1-2月(約3週間)のシカゴでの公演→2024/3のoff-Broadwayでのトライアウト(1ヶ月弱)と実施される中、3月の下旬にBroadwayのSt.Jamesでの公演が突如アナウンスされた。
4/24から8/10までの約3ヶ月半という短い公演だった。

急遽このスケジュールとなったのは、今年のトニー賞の受賞資格を睨んでのことだったという。
結果として、最優秀ミュージカル賞を含む4部門でノミネート、うち監督で振付を担当したJustin PeckがBest Choreography(最優秀振付賞)を受賞した。

振付でトニー賞を受賞。
Justin Peckは、映画ウエストサイド・ストーリーの振付でも知られる。

以下は、制作の過程などについて監督のJustin Peckへのインタビューなど。
事情があって、Sufjianの関与が限られたこと、その代わりに脚本家のJackie Sibblies Druryが参画し、台詞が一切無い中で、無声映画のようなアプローチによって、斬新な作品となった事などが語られる。

2005年にリリースされたアルバムが、 監督による約20年の構想を経て、舞台になる。
Sufjian Stevensという1人の巨大な才能が産み出した傑作に、新たに物語と振付が加わり、演奏される。
台詞は一切無いのに、自然と泣けた。
人間の想像力と身体性って本当に凄い。
最後の最後の滑り込みで鑑賞出来て良かった。

ILLINOISEのステージ。
黒板に描かれるCHICAGOの文字。
プレイビルとは別に、リーフレットが配られた。
カバーイラストは、Sufjan Stevensの代名詞でもある蝶々🦋
内側には主人公のHenryの手記。
観客にとっては、セリフがない作品を補完する脚本のようなもの。
とても凝っている。

Album "Illinoise"

アルバム1曲目の"Three Stars〜"のイントロから始まり、3曲目の"Come on! Feel the Illinoise! 〜" までの流れ(と、この曲の途中での転調)は完璧だと思う。博覧会がモチーフであり、多国籍感があってワクワクする。

中盤の"Chicago"は名曲。ドライブで大都市に向かう高揚感と、変わりゆく周りの風景がイメージされる。
終盤の“The Predatory Wasp of the Palisades Is Out to Get Us!“の演奏は感動した。
脚本の中でも重要な部分を占める曲だったと思う。


アルバム自体はイリノイ州の歴史や出来事、場所や実在した人物などがモチーフに歌われている。
けれど、その視点には、彼自身の物語も投影されているのだと思う。

最も個人的なことが、最もクリエイティブ。
これはポン・ジュノが映画パラサイトでオスカーを受賞した時に引用したマーティン・スコセッシの言葉。
この人の音楽を聴いていて、ふと思い出した。

Sufjan Stevens

Sufjan Stevensの他の作品に関しては、個人的には人気ドラマシリーズのThis is UsのSeason 1で何度も流れるこの曲が美しく、とても印象的だった。父親になって間もない頃にこのドラマを観ていた事をよく覚えている。

2015年にリリースされた“Carrie & Lowell”。
アルバム全体を通して、母親を失った悲しみに包まれている。物悲しげな空気が漂う。
家族との関係といった誰しもが抱える個人的な物語もそうだし、人生の有限性において表現する事や創作する事の意味を考えさせられる。
舞台の脚本には、このアルバムも反映されているのかなと思う。

それと、僕の大好きな田我流のアルバムRide on Timeがリリースされた頃、同時期にSufjan StevensのMichiganを聴いてハッとしたことがある。Stevensの曲がサンプリングされていたからだ。
同じく、ヒップホップの重鎮、Kendric LamarもSufjianの曲をサンプリングしている。
彼の影響は各方面に派生している。

Sufjanについては、2023年秋に病気を患っていて、リハビリの過程である事が公表された。
時間がかかってもいいので、回復する事を祈るし、いつか彼の音楽を聴けたらなと思う。

Illinois州への個人的な思い出

大学生の頃、地方で実家暮らしだった自分は、新卒で入る会社の内定式を利用して、妻と2人でシカゴとニューヨークを目指した。
そもそもが貧乏旅行だったから、東京までの往復の旅費を節約できるチャンスだと思った。

内定式が終わるや否や、就活を乗り切った丈の合わないスーツとすり減った革靴から、mont-bellの上着とMERRELLのスニーカーに着替えて空港に向かった。
その日出会った同じ内定者に驚かれた。

以前の記事でも書いたWilcoやOwenもシカゴ発の音楽で、どうしても現地で音楽を聴きたかったのだ。

シカゴを見て回ってから、バスに乗ってミシガン湖を北上し、隣のウィスコンシン州まで行った。

そこで念願のWilcoを観ることが出来た。
立ち寄ったウィスコンシン大学近くのレコード屋では、同州出身のBon Iverの新作アルバムが飾られていた。

シカゴをはじめとする中西部は、古くから自動車産業が発展した経緯もあり、日本の自動車メーカーにとっても重要な拠点だ。

そうした産業の発展の歴史から、シカゴは音楽だけでなく、会計の分野においても重要な都市で、多くの会計事務所の拠点となってきたという。
何の因果か、会計士でも何でも無いのに、社会人になってからは会計の分野に携わる機会が多い。

その後、社会人になってからは、まだ中西部には足を運ぶ機会は無いのだけど、近いうちに訪れたい。今訪れたらどういう見え方になるのかがとても気になる。

それと大好きなNBAを、ジョーダンも在籍したシカゴブルズの本拠地で観てみたいなと思う。

思いが溢れて、脱線してしまった。
音楽やアートはやっぱり面白いな。
妻に感謝。

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